引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
トルフィンの部 【いまできることを】
とりあえず、今夜は学校で休むこととなった。
唯一ワープが使えるアルスも、さすがに連戦に次ぐ連戦で疲弊してしまったらしい。刑務所にも天使が押し掛けてきたところを、彼は単身で突破してきたのだ。そりゃあ疲れる。
そして明日、充分に休息を取ったところで、レイア先生たちをアグネ湿地帯に移動させる――という手筈だ。そこならば天使は手が出せない。
もちろん、眠っている間に天使が襲撃してこないとも限らない。それに備えて、交代で見張りをつけることにした。
トルフィン&リュア。
セレスティア&アルス。
この二人で順番に教室を見張るのである。
そして現在は、トルフィンとリュアのコンビが、教室前の廊下で周囲を見張っていた。
「ねみぃ……」
トルフィンはふあああっと欠伸をしながら、背筋を伸ばした。
時刻はだいたい二十二時ほどか。
《引きこもり》たるトルフィンは、こんな時間に寝るほど良い子ではない。
だが今日は色々ありすぎた。早く暖かいベッドに潜り込み、ぬくぬくと夢の世界に逃げ込みたい。
交代時間まであと三、四時間……長すぎる。
「…………」
対するリュアは静かなものだ。背中合わせで座り、互いの死角を補いつつ見張っているのだが、さっきから一言も発しない。
彼女にとっても今日は激動の一日だった。きっと頭のなかで気持ちを整理しているのだろう。
そんな彼女にちょっかいを出すほどトルフィンも野暮ではない。ただただ無言で、見張りに徹することにした。
かすかな月光が、薄暗い廊下のなかに差し込んでくる。
天使が暴れた後とあって、周囲はさまざまな物が乱雑に散らばっている。倒れたロッカー、勉強道具、傘など……。これらを使っていた生徒たちは無事に逃げ切れただろうか、それとも、もう……
つい思考が後ろ向きになったとき、ふいに背後から声をかけられた。
「ねえ……トルフィンくん」
「ん? どうした」
「私、考えたの……私のお父さんは亡くなったけれど……でもね。それは私だけじゃないって」
「…………」
「こんなに大変なことになってるんだもん。私以外にも、お父さんを……ううん、大事な人を亡くした人がいるはずだって……」
「ああ、そうだな……」
そこでリュアは、すがるようにトルフィンの片手を握った。 
「だから私が頑張らなくちゃいけない。天使のステータス……む……えっと……」
「天使のステータス操作無効化」
「そう。私にはそれがある。だから、負けてられないって……」
「…………」
トルフィンは思わず握られた手に力を込めた。
彼女と出会ったばかりの頃を思い出す。
何事にも引っ込み事案で、なにをするにもゴルムの後ろに隠れていた彼女が……変わったものだ。いや、変わらざるをえなかったというべきか。
「リュア。おまえは俺が守る。その約束を、俺は忘れない」
「……うん、ありがとう」
――俺も変わらなくてはなるまい。
いま現在も、世界中の人間、モンスターが、天使に苦しめられているはず。彼らになにかできることはないものか……
「あ!」
トルフィンの頭にある閃きが舞い降りた。
「ど、どうしたの?」
「セレスティアさんとアルスを起こしにいこう。やりたいことができた!」
唯一ワープが使えるアルスも、さすがに連戦に次ぐ連戦で疲弊してしまったらしい。刑務所にも天使が押し掛けてきたところを、彼は単身で突破してきたのだ。そりゃあ疲れる。
そして明日、充分に休息を取ったところで、レイア先生たちをアグネ湿地帯に移動させる――という手筈だ。そこならば天使は手が出せない。
もちろん、眠っている間に天使が襲撃してこないとも限らない。それに備えて、交代で見張りをつけることにした。
トルフィン&リュア。
セレスティア&アルス。
この二人で順番に教室を見張るのである。
そして現在は、トルフィンとリュアのコンビが、教室前の廊下で周囲を見張っていた。
「ねみぃ……」
トルフィンはふあああっと欠伸をしながら、背筋を伸ばした。
時刻はだいたい二十二時ほどか。
《引きこもり》たるトルフィンは、こんな時間に寝るほど良い子ではない。
だが今日は色々ありすぎた。早く暖かいベッドに潜り込み、ぬくぬくと夢の世界に逃げ込みたい。
交代時間まであと三、四時間……長すぎる。
「…………」
対するリュアは静かなものだ。背中合わせで座り、互いの死角を補いつつ見張っているのだが、さっきから一言も発しない。
彼女にとっても今日は激動の一日だった。きっと頭のなかで気持ちを整理しているのだろう。
そんな彼女にちょっかいを出すほどトルフィンも野暮ではない。ただただ無言で、見張りに徹することにした。
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つい思考が後ろ向きになったとき、ふいに背後から声をかけられた。
「ねえ……トルフィンくん」
「ん? どうした」
「私、考えたの……私のお父さんは亡くなったけれど……でもね。それは私だけじゃないって」
「…………」
「こんなに大変なことになってるんだもん。私以外にも、お父さんを……ううん、大事な人を亡くした人がいるはずだって……」
「ああ、そうだな……」
そこでリュアは、すがるようにトルフィンの片手を握った。 
「だから私が頑張らなくちゃいけない。天使のステータス……む……えっと……」
「天使のステータス操作無効化」
「そう。私にはそれがある。だから、負けてられないって……」
「…………」
トルフィンは思わず握られた手に力を込めた。
彼女と出会ったばかりの頃を思い出す。
何事にも引っ込み事案で、なにをするにもゴルムの後ろに隠れていた彼女が……変わったものだ。いや、変わらざるをえなかったというべきか。
「リュア。おまえは俺が守る。その約束を、俺は忘れない」
「……うん、ありがとう」
――俺も変わらなくてはなるまい。
いま現在も、世界中の人間、モンスターが、天使に苦しめられているはず。彼らになにかできることはないものか……
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