引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

シュンの部 【バランス崩壊】

 周辺に生命体は存在しないらしい。まったく気配を感じないし、物音ひとつ聞こえない。シュンとロニンの足音だけが、コンコンと大きく反響している。

 ――どこだ、ここは……?
 シュンはいぶがしながら光球についていく。

 連れていかれた先は宮殿の内部だった。
 ここも同じく紺碧に染まっている。気品高い絵画や、豪勢なシャンデリア、柔らかな絨毯――まさしく《神殿》を思わせるインテリアだが、すべて同一色になっている。そしてやはり、誰もいない。

「ねえ、お兄ちゃん……」
 シュンの背後で、魔王ロニンが不安そうに服を引っ張ってくる。
 ――ああ、わかってるさ――
 シュンは目線でそう返事すると、改めて光球に話しかけてみた。

「なあ、ひとついいか」
「なんでしょうか。プログラムされた内容ならお答えできます」

 即座に反応してきた光球に少々面食らいつつも、シュンは切り出した。

「ここはどこだ? 見たところ、普通の場所じゃねえな」
「お答えします。……ここは三万二千年前の神殿です。創造神ディストにより、ステータスという概念が創られた日でもあります」
「……ってことは、俺たちは過去に来てるのか」
「お答えします。……正確には、私、アリアンヌが再現した世界です。いつかここに来る者のために、異次元にこの場所を生成しました」

 異次元に生成……なにやら途方もない話だ。悪魔に墜とされる前は、かなり位の高い天使だったのだろう。

 そうこうしているうちに、光球がぴたりと動きを止めた。狭い部屋のなかだ。
 壁面に本棚が設置されており、所狭しと書籍が並んでいる。部屋の中央部には大きなデスクもあり、分厚い書類が山のように積まれていた。

「こちらをごらんなさい」
 光球に言われ、シュンとロニンは同時に顔を上げた。そして思わず、
「なんだ……こりゃ……」
 とかすれた声を発する。

「大型のモニター映像です。あなたたちの世界にはこんな物はないので、驚くのも無理はありません。よく見てください。ここに書かれている文字を」
「あ、ああ……」

 シュンは数歩だけ踏みだし、モニター映像に顔を近づけた。
 たしかに、モニター全体にびっしりと文字が書かれている。そのひとつひとつが、シュンにとって馴染みの深いものだった。ざっと目を通していく。

【剣士。近接武器を用いて80体もの生命体を殺害すれば就職可能。選択後はHPと物理攻撃力が伸びやすくなる。成長遅め。下位職業。

 魔術師。魔術を用いて80体もの生命体を殺害すれば就職可能。選択後はMPと魔法攻撃力が伸びやすくなる。成長遅め。下位職業。

 魔王。モンスター中で最上位のステータスを誇る者が就職可能。すべてのステータスが伸びやすくなる。上位職業。

 国王。一年以上、国の長を勤めることで就職可能。レベルが上がるほどカリスマ性が高まる。ただし、指導者としてふさわしくない言動を繰り返した場合、徐々にカリスマ性は弱まる】

 シュンはぽかんと口を開けたまま呟いた。
「こりゃあ、もしかして……」
「うん。職業の習得条件だね……」

 他にもさまざまな職業が並んでいる。いままで《謎》とされてきた職業の習得条件が、ここには明確にリストアップされている。

 シュンが見る限り、これは本物だ。《国王》の項目など、身に覚えがありすぎるからだ。
 それらいくつもの文字を眺めていくうち、シュンはあっと声をあげた。馴染みの深い職業が表示されていたからだ。

【引きこもり。エラー。バランス崩壊のため要訂正】

 

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