引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
シュンの部 【引きこもりLv.999】
「これは……」
シュンは食い入るように文字列を凝視した。
――引きこもり。バランス崩壊のため要訂正――
これはいったいなにを意味するのか。  
たしかに《引きこもり》はステータスアップこそ鈍いものの、圧倒的な成長速度により、まさに最強職業といっても過言ではない。その恩恵があったからこそ、いまのシュンがある。
「お気づきになりましたか」
いつの間にかシュンの隣に回り込んでいた光球が、機械的な声音で告げてくる。
シュンがこくりと頷くと、光球はそのまま話を続けた。
「《引きこもり》というのは、そもそもが創造神ディストが誤って作成してしまったシステムなのです。あなたもわかっているでしょう? 《引きこもり》の強さはあまりに理不尽、まったく理にかなっておりません」
「……ああ、そうだな……」
たしかトルフィンも言っていた。
剣士や魔術師のように努力する必要もなく、ただ寝ているだけで強くなってしまう《引きこもり》は、いわゆるチート的存在だと。この世界のシステムは理不尽だらけであると。
と言われても、当時のシュンにはピンと来なかった。生まれてこの方、ずっとこの世界に住んできたのだ。職業システムの欠陥など考えたこともなかったし、そもそもトルフィンから聞かなければ、チートという言葉さえ知らなかった。
「創造神ディストは遊んでいたのです。転生者たるトルフィンさんを貴方たちに授けることで、いったいどんな反応を示してくれるかと」
「へっ、なるほどな」
シュンはひょいと肩を竦めると、次なる疑問を光球に投げかけた。
「これを見る限り、ディストは気づいていたんだな。《引きこもり》がいかにチートなのか」
「その通りです」
「……なら、なんで訂正しなかったんだ。これも遊びだったってのか」
「それもあるでしょう。ただ一番の理由としては、ディスト自身の油断といえます」
油断。
珍しい。
あの抜け目のなさそうな男が、果たして油断なぞするものだろうか。
そんなシュンの心境を見越したかのように、光球は続けて言葉を発した。
「あなたならわかるでしょう。引きこもりとは、とにもかくにも内向的なのです。仮に凄まじいステータスを手に入れたところで、たいした問題にはならないと創造神は踏んだのです」
「……そうか。なるほどな」
身に沁みる言葉であった。
実際にもそうだ。魔王ロニン、勇者アルス、王女セレスティア……様々な人との出会いがなければ、シュンはいまでも親の臑をかじっていたに違いあるまい。
シュンは思い出した。泣きながら部屋の扉を叩いてきた母親を。懸命に社会復帰させようとしてきた父親を。
そして訳もわからないまま、創造神ディストに世界ごと消されていただろう。
と、そこでふいに、いままで事務的だった光球の声がやや感傷を帯びた。
「面白いではありませんか。引きこもりと蔑まれてきた者が、いまや世界最後の希望なのです。……シュンよ。あなたも過去にコンプレックスをお持ちでしょう。ですが、気にすることはありません。いくらでも人は変われます。どうか……世界を守ってください」
シュンは食い入るように文字列を凝視した。
――引きこもり。バランス崩壊のため要訂正――
これはいったいなにを意味するのか。  
たしかに《引きこもり》はステータスアップこそ鈍いものの、圧倒的な成長速度により、まさに最強職業といっても過言ではない。その恩恵があったからこそ、いまのシュンがある。
「お気づきになりましたか」
いつの間にかシュンの隣に回り込んでいた光球が、機械的な声音で告げてくる。
シュンがこくりと頷くと、光球はそのまま話を続けた。
「《引きこもり》というのは、そもそもが創造神ディストが誤って作成してしまったシステムなのです。あなたもわかっているでしょう? 《引きこもり》の強さはあまりに理不尽、まったく理にかなっておりません」
「……ああ、そうだな……」
たしかトルフィンも言っていた。
剣士や魔術師のように努力する必要もなく、ただ寝ているだけで強くなってしまう《引きこもり》は、いわゆるチート的存在だと。この世界のシステムは理不尽だらけであると。
と言われても、当時のシュンにはピンと来なかった。生まれてこの方、ずっとこの世界に住んできたのだ。職業システムの欠陥など考えたこともなかったし、そもそもトルフィンから聞かなければ、チートという言葉さえ知らなかった。
「創造神ディストは遊んでいたのです。転生者たるトルフィンさんを貴方たちに授けることで、いったいどんな反応を示してくれるかと」
「へっ、なるほどな」
シュンはひょいと肩を竦めると、次なる疑問を光球に投げかけた。
「これを見る限り、ディストは気づいていたんだな。《引きこもり》がいかにチートなのか」
「その通りです」
「……なら、なんで訂正しなかったんだ。これも遊びだったってのか」
「それもあるでしょう。ただ一番の理由としては、ディスト自身の油断といえます」
油断。
珍しい。
あの抜け目のなさそうな男が、果たして油断なぞするものだろうか。
そんなシュンの心境を見越したかのように、光球は続けて言葉を発した。
「あなたならわかるでしょう。引きこもりとは、とにもかくにも内向的なのです。仮に凄まじいステータスを手に入れたところで、たいした問題にはならないと創造神は踏んだのです」
「……そうか。なるほどな」
身に沁みる言葉であった。
実際にもそうだ。魔王ロニン、勇者アルス、王女セレスティア……様々な人との出会いがなければ、シュンはいまでも親の臑をかじっていたに違いあるまい。
シュンは思い出した。泣きながら部屋の扉を叩いてきた母親を。懸命に社会復帰させようとしてきた父親を。
そして訳もわからないまま、創造神ディストに世界ごと消されていただろう。
と、そこでふいに、いままで事務的だった光球の声がやや感傷を帯びた。
「面白いではありませんか。引きこもりと蔑まれてきた者が、いまや世界最後の希望なのです。……シュンよ。あなたも過去にコンプレックスをお持ちでしょう。ですが、気にすることはありません。いくらでも人は変われます。どうか……世界を守ってください」
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コメント
ノベルバユーザー41887
話しがうまく計算されていてすごいです!