暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが
第140話 〜性格が悪い〜 アメリア・ローズクォーツ目線
アキラが決闘で勝った瞬間、イグサム王はかなり動揺をしていた。
「馬鹿な……人族が獣人族に勝っただと?そんな事あり得ん!!」
リアはアキラの強さをブルート迷宮で見ていたからか、表情を崩すことがなかったがそのぶん、イグサム王の動揺が目立った。
「なぜそんなに動揺しているの?アキラは私の妹にも勝っている。あの程度、余裕をもって勝てなければ。それに、あなたは私たちの動向を知っていた。なら、キリカとのことも知らないとおかしい」
黙るイグサム王に私は考えていた仮説が正しいと確信した。
「あなたの言っていた私たちの情報、全部獣人族絡みだった。……説明、してくれる?」
アキラが話していたのをこっそり聞いたけど、エルフ族で襲ってきた賊たちはウルクの紋をつけていたとか。
首謀者はグラムらしいけど、剣に紋が入っていたのならここの兵士ということもあり得る。
イグサム王が同胞たちを攫うように指示していたなんて考えたくないが、アキラに危害が加わるなら話が変わる。
王であろうと、たとえ神であろうとアキラの邪魔をするものは排除しておかないと。
イグサム王はバルコニーから部屋の中に入って、そこにあるソファに深く腰掛けた。
「分かった。そこにかけるといい。リア、悪いが人数分の飲み物を頼んできてくれないか」
「はい、お義父様」
リアが部屋から出て行ったあと、私はイグサム王の向かいにある椅子に腰かけた。
「まず、グラムのことをどこまで知っている?」
「あなたのお姉さんの子供で、王族に子供が生まれにくいから可愛がられた。でも調子に乗りすぎて王族という権限を使い好き勝手にするようになってしまった。ギルドマスターにされた後もそれは止められることなく、ついには薬まで手を出して、王でも止められなくなってしまった」
船の上でリアに聞いたことを要約して言うと、イグサム王は顔をしかめて頷いた。
「そうだ。今の兵力をもってしてもグラムの薬で強化した傭兵には勝てん。それに、エルフ族領で襲った賊はうちの兵だが、あいつらも薬によって狂わされてしまっとる。今、薬で操られている兵士とそうでない兵士を分けようかと思っておるが、見分けがつかないんでな。お手上げだ。あの子は昔から頭のよく回る子だった」
「ならなぜアキラに暗殺を依頼したの。実力を信用していないアキラに」
確実に殺したいのなら王家お抱えの暗殺者にでも任せればいい。
どこの国家も汚れ仕事なしには成立しないのだから、暗殺者の一つや二つ抱え込んでいるだろうに。
「失敗すればそのことをネタにして乗り込んでくるだろうな。それは避けねばならん。それに比べ、あの男はどこの馬の骨かも分からんし、この世界の住人ではないのだろう?失敗して死んでしまっても大陸間の問題にならん。一番いい使い方じゃないかね?」
私に賛同を求めてもらっても困るが、王は時としてそういう選択が必要であるというのは分かる。
でも、理解しているのと納得するのは違う。
「アキラは絶対にあなたの道具にはならない。けどもし、元の世界へアキラが帰ったらどうするの。聞けば、アキラのいた国はこの世界よりもかなり文明が発達している。そこと対立することになったら、私たちは滅ぶかもしれない」
「ふ、ふふ、あははははは!!」
私がそういうと、イグサム王は大きく口を開けて笑った。
「彼の仕草を見ていれば彼がいたところがどんなところか想像に難くないが、それは絶対にありえんよ。そんな未来は絶対に来ない」
確か、イグサム王の職業は筆写師。
未来を見ることなんてできないはずだがそう断言された。
首を傾げると、イグサム王は口を歪めて嗤う。
「不可能なものは不可能なんだよ。彼らはこの世界で生き、この世界で死ぬ。もう元の世界に戻ることはない。……まあ、一つの夢を追い求める姿は美しいがね。それが手の届かないものなら尚更に」
この王とはお父様についてきたときに合ったっきりだから、大した知り合いではなかったが、やっとわかった気がする。
グラムという悪党が親戚というのも納得だ。
一言でいえば、性格が悪い。
「彼がエルフ族領から君を連れ出したんだろうが、早々と身の振り方を決めるといい。今はお遊びで一緒にいるのかもしれないが、君はエルフ族の次期女王なのだからな」
お遊びという言葉に、ガツンと殴られたような衝撃が襲ってきた。
なる気は全くないけど、次期女王というのは今までさんざん言われてきた。
けど、アキラといるのは別に遊びなんかじゃない。
そう声に出したいのに声が出ない。
私は自分の意志でアキラについてきたはずだ。
アキラが私を連れ出したんじゃない。
けど、エルフの王女と勇者召喚者の人族が一緒にいればそう認識されてしまうのだろうか。
アキラに迷惑が掛かっているのだろうか。
「……失礼いたします。遅くなって申し訳ありません。茶葉を切らしていまして、レモン水をお持ちいたしました」
それにしても随分と遅かったリアが入ってきた。
「おお、そうだったのか。ではまた買いに行かせねばな」
「はい。アメリア様、そろそろお時間ですのでお送りしますね」
顔色が悪いリアがそういうので、私も頷いて席を立った。
「では、失礼します」
「うむ」
結局、一言も言い返せなかった。
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コメント
ノベルバユーザー361170
もう設定も糞もないな、ストーリー自体ぶれぶれ