【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

避難勧告

「……村長なのに村を捨てやがった……」
 この状況を冷静に考えるとかなりまずいことになっている。

先ほど、ウラヌス十字軍を俺は撤退させた。
 その際に、武器も防具も破壊した。
 村を襲うのに丸腰でくるとは思えない。
 そうすると、ウラヌス十字軍は襲ってこない可能性の方が高いと思う。

 でも襲ってこなければどうなるのか?
 俺の発言でアライ村長が逃亡したという事は、俺が村長に虚言を吐いてその役職を奪った事にならないだろうか?
 遠縁でも、この地方を治めるイルスーカ侯爵の血縁だとすると、自分達に不都合な話など揉み消されてしまい罪を着せられる可能性が高い。

 そうなると家族にも迷惑がかかるし、村を追われる可能性もある。
 最悪、殺される可能性もあるだろう。

 保守的な村長だとは思っていたが、村のためではなく自分のために保守的だったのかよと内心毒づきながらこれからの事も考えていかないといけない。

 頭に手を当てながら考える。

 今の最善のシナリオは、ウラヌス十字軍に村を攻めてきてもらう事だ。
 そして国同士の取り決めがどうなってるか分からない以上、防衛に徹してイルスーカ侯爵軍を待つのがベストだろう。

 問題は、アライ村長がきちんと報告に行ってくれるかどうか。
 自分のための保守的だとすると、村から逃げた時点で貴族に報告にいくとは思えないんだが……実際のところはどうなるか分からないな。
 報告をしてくれる可能性は低いと思うが多少期待しておこう。

だが、さすがに王国に領主として認められた貴族から逃げようなどとは思わないだろう。
 報告はきちんとしてくれると思うと期待しよう。
 まあ攻めてきてくれたという大前提が無いと話は始まらないけど。

 それともしウラヌス十字軍が素手で攻めてきた場合だが、その場合、敵の数は散ったとはいえかなりの襲撃数が予想される。
 まず1000人規模で襲ってくるだろう。
 そうすると分散している村民は危険な状態に置かれることになり犠牲者がかならず出る。

 そうすると、村長代行を任された俺のせいになる可能性が高い。

たしか代官を兼任しているという事は、領主の資産敷いては国王の運営管理している立場になるわけだから、もし村人や村に被害があった場合には、国王や領主の財産を損なったという罪で死刑になる可能性がある。
 そうなると、犠牲を出さずに食い止めるしかないよな……。
 どのくらいの期間食い止めて居れば侯爵の軍が到着するか分からない。
 というか数千の軍勢を相手に一侯爵の軍で対抗できるのだろうか?

 素手でも棒切れを持てばそれなりの数で押しやられてしまうのではないのだろうか?
 それに俺が住んでる村は、アルネ王国の最北に位置していて回りには森ばかりしかない。
防衛する価値があるのか?と言われればどうなのだろう?と考えてしまう。
 下手をすると切り捨てられる可能性も無くは無い。
 その場合には森に火を放たれるか……。

「希望的観測が見えない……」
 ため息をついてしまう。
 俺の使う魔法は、知識の中にある地球の物理学に応用した魔法になっている事から地球の最大の物理破壊兵器。
 核爆発で全てを消すか?と思ってしまうが、そんな魔法を使ったら森が汚染されて住めなくなる。
 そんな魔法を使うのは、最後の最後にしたい。

「とりあえず現状の確認が必要だな……」
 俺は《探索》魔法を発動させる。
魔法が周囲を森の中を調べていく。
 すると赤い光点が50近く、近づいてくるのが分かる。
 赤い光点という事は、十字軍か獣か魔物という事になるが、数十もの光点が森から近づいてくる可能性があるのは、十字軍しか考えられない。 
おそらくあと10分もあれば到達する。

「これは仕方ないな」
 村民に被害を出さず田畑に影響を与えず相手を無力化するか。
 まずは捕縛かな?それが現状における最善の策だろう。

 すぐに俺はアライ村長の家から、《身体強化》の魔法を使い教会へ走る。
 10秒ほどで教会に到着すると扉を開く。
 勢いよく音をたてて扉が開かれた事で子供たちは皆、扉のほうへ俺の方に視線を向けてきた。

 そして講義をしていたリリナに近づく。

「どうしたの?」
 リリナは戸惑いの表情で、話しかけてきた。
 アライ村長の態度を見る限り、ウラヌス十字軍が攻めてきた事をそのまま伝えると、パニックになる可能性があるため。

「リリナ、皆には内緒にしてくれ。他国の軍が攻めてきようとしている。村長に伝えたら村から逃げ出した。ただ、村の皆は魔物には慣れている。、対人は慣れてないと思うから、村の皆には、タルスノートつまり巨大熊が冬前に食料を確保するために集団で村に向かってきていると伝えて、村長の家にを囲っている塀の内側に入って立て篭もってくれ」
 俺の言葉にリリナが目をパチクリとさせた。

「――え?他国が攻めてきた?何かの冗談なの?」
 リリナは首を傾げてきた。
 やはり言葉だけではすぐに納得してくれないよな。
 懐から村長から渡された村長兼代官譲渡書を取りだす。

「これを見てくれ、村長から渡された。」
 リリナは俺が差し出した書類を受け取り読んでいく。

「ユウマ君、これって……」
「ああ、村長は俺にこれを託して村から出た、一応、イルスーカ侯爵家へ報告と言っていたがどこまで本当かは分からない。だからなるべく早く避難してくれ」

「わ、わかったわ。で、でも……ユウマ君はどうするの?」
 リリナの顔色が蒼白になっている。
 きっと、どこかの国の軍隊が攻めてきた事に対しての感情をうまく整理できていないのだろう。

「俺は全員が村長の家に集まれるまでの時間稼ぎをする。だから任せたぞ」
 俺はすぐに教会から出る。
 すでに俺の《探索》魔法3キロメートル範囲には50人近い赤い光点つまり敵勢マーク反応が存在している。

村の北側から近づいてくる赤い光点を見ながら、安堵する。
幸い、村の北側には緑色の光点が存在してない事からすぐには村人とウラヌス十字軍が接する事はすくないと思う。
 いないと言っても時間的余裕はそんなにない。すぐに行動に移した方がいいだろう。
《身体強化》魔法を発動させる。
 身体強化魔法は肉体の細胞を活性化させることで、無理矢理力を引き出す魔法。

いつも利用している《身体強化》魔法よりも消費魔力を10倍まで引き上げる。
おかげでウラヌス十字軍が出てくる森の前に到着する事が出来た。
 俺が森の前に到着し数秒後に男たちは森から出てくる。

「お前達、何しにきたんだ?」
 俺の言葉に男達は何も言わずに近づいてくる。
 答えるつもりがないなら仕方ないな。

「悪いが、寝ていてもらうぞ!」
 俺はそのまま男たちに近づくと鳩尾を殴り、足の骨を砕き無力化していく。
 死人を出したら国同士で、国際情勢上どうなっているか分からない。
だから全力で力を出せない。
 次々に山から出てくるウラヌス十字軍の人間を叩きのめしていくが、やはり多勢に無勢ということもあり数人抜けられてしまう。

「くそ!死ぬなよ!」
 俺は地面に手をつけて村に向かう男達の足元を《地面爆発》の魔法で、地雷のように男達の足元を爆発させる。
 発動した魔法により男達は空中に舞い上がり地面に叩きつけられた。
それを見ていたウラヌス十字軍の兵士達は森の中へ逃げ帰っていった。
 《探索》魔法で確認すると、逃げていった兵士は森の中で他の兵士と合流した後、森の奥へ消えていくのが確認できた。
 俺は自分が倒した兵士達を見てため息をついた。
 数千人の内の数十人の損失。
 たしか戦闘継続が厳しくなるのは3分の1が、戦闘継続不可能になった場合に撤退だったか?
 となると大した被害も被ってないウラヌス十字軍の連中は、まだ襲ってくる可能性があるな。



コメント

  • ノベルバユーザー366463

    そんな文句言うんだったら見るなよ

    1
  • 柴衛門

    ウラヌス兵士「俺らは戦うぜ!もちろん拳で。」

    2
  • ノベルバユーザー299285

    素人に何求めてんの?

    2
  • ノベルバユーザー266465

    なろう系作品の優秀な主人公にしようとして失敗してる感じってどうにかなんないんだろうか。
    あと誤字脱字誤用が多い。

    0
  • ノベルバユーザー256924

    希望的観測の使い方ちがくない?

    1
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