【書籍化作品】無名の最強魔法師
防衛陣地
さてどうしたものか……。
一応、魔物が攻めて来ていると言う事にしているが、こちらから打てる手立てがほぼ無いのが困る。
この世界の国同士の国交状況が、新聞やネットなどが無いために分からないのだ。
そのため、どうやって立ち回って良いのかが分からない。
下手してこちらから手を出して、向こうから戦争の口実を作られたら困る。
それに今から防衛しようとしているアライ村の領主であるイルスーカ侯爵軍かイルスーカ公爵領が存在しているアルネ王国が守ってくれるのかすら分からない。
最悪、戦争の口実を作ったからと切り捨てられる可能性もある。
そうなると、村ごと独立するか?という話になるが、この世界の国や組織の背景が分からない事からそれも難しい。
そうすると、俺の有用性をイルスーカ侯爵へ見せつけた上で手を出させない方向で話を持っていくしか無い。
でもそうすると、今までみたいに隠れて魔法を使っている訳にもいかない。
逃げるという選択肢もあるが、ずっと守れるかと言えば守れないと思う。
中世世界だと仮定すると、村民は財産と思われている可能性がある。
そうするとその財産を取り戻すよりも貴族や王族は、プライドを優先にして追いかけてくる可能性が高い。
それもなりふり構わずだ。
「どうしたものか」
俺は溜息をつく。
どちらにしても、防衛するにしても相手が何を目的に動いているのか調べる必要がある。
俺が立ちあがると――。
「ユウマ君」
――ヤンクルさんに話しかけられた。
振り返ってヤンクルさんを見ると話しを続けてきた。
「一応、村の皆には君の父親から話しをしてもらっているよ」
俺はヤンクルさんの言葉に頷く。
まあ、ヤンクルさんが親父といるよりも、親父だけの方が村の皆に受け入れやすいだろう。
ヤンクルさんもアライ村に来てからそんなに時間は立ってないからな。
とりあえず情報収集だけ先にするか。
「ヤンクルさん、とりあえず捕縛したウラヌス十字軍の連中から、この村を攻めてきた理由を聞きだしましょう」
俺の言葉にヤンクルさんは頷いてきた。
「そうだね。でもどうやって口を割らせるつもりなんだい?」
ヤンクルさんの言葉に俺は足元に転がっている拳と同じくらいの石を拾い上げる。
それを見たヤンクルさんは首を傾げていた。
俺は、束縛状態で地面に転がされているウラヌス十字軍の兵士に近づく。
彼らの身柄は、砂鉄を集めて作った鎖で封じている。
年配の兵士の元へ歩いていき……。
「ちょっといいですか?この中で一番偉い人を教えてもらえますか?」
俺の言葉に周囲の視線が一人の男に一瞬だけ集まる。
「――知らん!」
俺の質問に男は知らないと答えてくる。
だが一瞬、全員の視線が一人の男に向いたのを見逃さなかった。
視線が向いた先にいる男の元へ歩いていき座る。
「ここに侵攻してきた理由を聞いてもいいですか?」
「何の事だ?」
どうやら男は答える気はないようだ。
「これを見てください」
俺は先ほど、拾ってきた石を男の目線に持っていくと素手で握りつぶして破壊した。
様子を見ていた兵士達がざわめく。
俺は微笑みながら――。
「話してくれないと男として大切な機能がこんな風に握りつぶされてしまい大変な事になってしまうかもしれないですよ?」
すると、『わ、わかった!言う、言うから!』と男から声が答えてきた。。
俺は、男に尋ねる内容を精査していく。
そして……・
「どうして何千人もの部隊を侵攻させてきたんですか?こんな辺鄙な村に……答えて頂けますか?」
俺の問いかけに男は、一瞬考えたあと
「ウラヌス教会の聖女様は、11年前に魔王が生まれたと予言したのだ」
11年前?と思いつく。
近隣の村は、どうか知らないが11年前と言えばアリアが生まれた年では?
でも同年代の子供が数人はいる。
もう少し事情を聞かないと判断がつかない。
「他に魔王についての特徴はないんですか?」
俺はさらに情報を引き出すために話しをする。
「わからない。だが従軍した司教様の話だと……人には無い特殊な特技を持って生まれてくると言っていた。過去存在した魔王は、魔物を呼び寄せ使役する力をもっていたらしい」
――魔物を呼び寄せる力……。
それって……。
妹が傍にいると、よく動物ではなく魔物が近寄ってくる事を思い出した。
おい……冗談だろう?
戸惑う気持ちを外に出さないように内に止める。
「そうですか……」
相槌だけ打っておく。
つまり最初から妹がこいつらのターゲットだったわけだ。
「それで、もし魔王の力を持った子供が居たとしたらどうしたのですか?」
俺の言葉に男は考えるそぶりを見せた。
「教会に奉仕するように教育すると司教様は言っていた」
教育?洗脳だろ?
お前ら、ふざけているのか?
一瞬で怒りが頂点に達したが、となりにヤンクルさんが居たこともあり怒りを納める。
「魔王は、ここではどう言った扱いをされるんですか?」
俺の質問に男は言い淀む。
そして話し始める。
それは……もはや洗脳というか暴力を背景にした従順。
そして、魔王は覚醒後に巨大な魔力を行使するらしい。
アリアには、ほぼ魔力は無い。だが、もしそれが覚醒前なら……。
「後は、魔王はどこの国でも畏怖の対象であり殺害の対象になっている」
俺はふらつくのを我慢する。
俺がいきついた情報を彼らにヤンクルさんにも渡す訳にはいかない。
「魔王か……。そんなものがまた復活するとは思わなかったけど以前に出現したときには、戦争の引き金になったって冒険者ギルドでは聞いた事があるよ」
ヤンクルさんの言葉に俺は言葉を詰まらせる。
さらにヤンクルさんは言ってくる。
「つまりウラヌス十字軍は、戦争で使うための武器が欲しかった。ウラヌス教が欲しがっているのは、力。だからウラヌス教国とって戦争が起きるかどうかはあまり関係なかった。戦争のための戦力を補充するための侵攻だった。そういう事だね?」
ヤンクルさんの言葉に男は頷いた。
そして俺もそれを聞いて心の中で溜息をついていた。
「ユウマ君、私は村の皆の様子を見てくるから、しばらく一人で尋問しておいてくれないかな?」
ヤンクルさんの言葉に俺は頷く。
だが俺にとって、妹が狙われている事以上、重要な話しはなかった。
しばらくしてヤンクルさんが戻ってくると。『何か分かったのかい?』とヤンクルさんが話しかけてきた。
俺は冷静さを装いながら言葉を紡ぐ。
「はい。彼らは、ウラヌス十字軍第三騎士団と言っていますが、ウラヌス十字軍の構成としては神殿騎士団30人、司教クラスが数人にあとは冒険者と傭兵に8割は農民らしいです」
軍人でない人間が8割も侵攻に参加している。
それは、兵士として訓練を受けてない事を意味する。
となると、相手からの出方が軍人とはまったく異なるアプローチになる可能性が高い。
「それは……」
軍人相手なら相手の出方もある程度予想できるが、それが出来ないのがきつい。
ヤンクルさんもその辺を理解しているからこそ、言い淀んだのだろうか?
「対処はかなり楽になるかもしれないね」
「え?」
だが、ヤンクルさんの考え方は俺とはまったく別であった。
「ユウマ君、よく考えてみて。農民が騎士や傭兵みたく絡め手を使ってきたり頭を使って攻めてくると思うかい?彼らはそのまま直情的に攻めてくるだけだよ。問題は数だね、8割と言う事は数千の部隊と言う事は、農民の数は4ケタに達するんだろうね。さすがに数で攻められたらきびしい。だからなんとかしないと……だめだね」
ヤンクルさんの言葉を聞きながら、どうしたらいいか考えていると、《探索》の魔法範囲に無数の赤い光点が表示されていく。。
それらがあっという間に数を増やしていく。
「ヤンクルさん。ウラヌス教十字軍が侵攻を開始したようです。今は村の子ども達と数人の大人しか集まっていないとおもうので……村の皆に、村の中心である村長の家に集合してもらえるように伝えて頂けますか?」
俺の言葉にヤンクルさんは頷くが――。
「ユウマ君はどうするんだい?」
――心配そうな顔をして俺をみてくる。
「俺は、防壁を作ってウラヌス十字軍から村から守るために闘います」
「そうか。魔法が使えると言っても無理しないようにね」
ヤンクルさんは、気遣いの言葉を俺にかけると走っていく。
俺は村長の家に向かっていくヤンクルさんの後ろ姿を見ながら、頭の中で使用する魔法を組み込む。
まずは、最初に決めたとおり防衛に徹する形にする。
そのために必要な防衛陣地は頭の中で完成している。
あとはそれを形にするだけ。
両手を地面につけて、思い浮かべる。
村の周囲を取り囲む壁を、そして壁の外には水が湛えられた堀を思い浮かべる。
それは皇居の堀。
あとは力ある思いを形にするだけ。
そこで俺は動きを止める。
ここまで大規模な魔法は行使したことがない。
出来るかどうかは分からない。
だけど、防衛陣地を作らないと村の皆が逃げる余裕もなく蹂躙される。
それにこれだけ村を取り囲むだけの壁や堀を作り出せば、ウラヌス教国の目を妹から俺に向ける事だって出来るかもしれない。
だから思いを形にする。
そして思いを作り出すための魔法を編みあげる。
完成させた魔法を起動。
《陣地生成》の魔法を発動させた。
魔法発動と同時に、人工的な地震発生する。それに伴い、村の周辺の土壌が一気に陥没していき掘りが形成されていく。
そして大気の原子配列が組み替わり水素分子となり結合し水となって堀の中に降り注ぐ。
一つ目の堀が出来上がると二つ目の堀も作られていき完成する。
さらに城壁が競りあがっていき強固な壁が作られていく。
それに伴い体中から力が抜けていくのを感じる。
<a href="//655400.mitemin.net/i238871/" target="_blank"><img src="//655400.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i238871/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a> 
思ったよりかなりの魔力を消費してしまった。
ただ、村を取り囲む堀や壁を作る上で、人口的な地震が発生するとは予想できなかった。
それでも城壁と堀は完成される事が出来た。
頭が割れるほど痛いが……魔力枯渇には至っていない。
なんとなくだが感覚的に魔法がまだ使える気がする。
俺は《肉体強化》の魔法を使い身体能力を高めると跳躍で堀を超えて城壁の上に立つ。
すると丁度、ウラヌス十字軍第三騎士団が森から抜けてきた
一応、魔物が攻めて来ていると言う事にしているが、こちらから打てる手立てがほぼ無いのが困る。
この世界の国同士の国交状況が、新聞やネットなどが無いために分からないのだ。
そのため、どうやって立ち回って良いのかが分からない。
下手してこちらから手を出して、向こうから戦争の口実を作られたら困る。
それに今から防衛しようとしているアライ村の領主であるイルスーカ侯爵軍かイルスーカ公爵領が存在しているアルネ王国が守ってくれるのかすら分からない。
最悪、戦争の口実を作ったからと切り捨てられる可能性もある。
そうなると、村ごと独立するか?という話になるが、この世界の国や組織の背景が分からない事からそれも難しい。
そうすると、俺の有用性をイルスーカ侯爵へ見せつけた上で手を出させない方向で話を持っていくしか無い。
でもそうすると、今までみたいに隠れて魔法を使っている訳にもいかない。
逃げるという選択肢もあるが、ずっと守れるかと言えば守れないと思う。
中世世界だと仮定すると、村民は財産と思われている可能性がある。
そうするとその財産を取り戻すよりも貴族や王族は、プライドを優先にして追いかけてくる可能性が高い。
それもなりふり構わずだ。
「どうしたものか」
俺は溜息をつく。
どちらにしても、防衛するにしても相手が何を目的に動いているのか調べる必要がある。
俺が立ちあがると――。
「ユウマ君」
――ヤンクルさんに話しかけられた。
振り返ってヤンクルさんを見ると話しを続けてきた。
「一応、村の皆には君の父親から話しをしてもらっているよ」
俺はヤンクルさんの言葉に頷く。
まあ、ヤンクルさんが親父といるよりも、親父だけの方が村の皆に受け入れやすいだろう。
ヤンクルさんもアライ村に来てからそんなに時間は立ってないからな。
とりあえず情報収集だけ先にするか。
「ヤンクルさん、とりあえず捕縛したウラヌス十字軍の連中から、この村を攻めてきた理由を聞きだしましょう」
俺の言葉にヤンクルさんは頷いてきた。
「そうだね。でもどうやって口を割らせるつもりなんだい?」
ヤンクルさんの言葉に俺は足元に転がっている拳と同じくらいの石を拾い上げる。
それを見たヤンクルさんは首を傾げていた。
俺は、束縛状態で地面に転がされているウラヌス十字軍の兵士に近づく。
彼らの身柄は、砂鉄を集めて作った鎖で封じている。
年配の兵士の元へ歩いていき……。
「ちょっといいですか?この中で一番偉い人を教えてもらえますか?」
俺の言葉に周囲の視線が一人の男に一瞬だけ集まる。
「――知らん!」
俺の質問に男は知らないと答えてくる。
だが一瞬、全員の視線が一人の男に向いたのを見逃さなかった。
視線が向いた先にいる男の元へ歩いていき座る。
「ここに侵攻してきた理由を聞いてもいいですか?」
「何の事だ?」
どうやら男は答える気はないようだ。
「これを見てください」
俺は先ほど、拾ってきた石を男の目線に持っていくと素手で握りつぶして破壊した。
様子を見ていた兵士達がざわめく。
俺は微笑みながら――。
「話してくれないと男として大切な機能がこんな風に握りつぶされてしまい大変な事になってしまうかもしれないですよ?」
すると、『わ、わかった!言う、言うから!』と男から声が答えてきた。。
俺は、男に尋ねる内容を精査していく。
そして……・
「どうして何千人もの部隊を侵攻させてきたんですか?こんな辺鄙な村に……答えて頂けますか?」
俺の問いかけに男は、一瞬考えたあと
「ウラヌス教会の聖女様は、11年前に魔王が生まれたと予言したのだ」
11年前?と思いつく。
近隣の村は、どうか知らないが11年前と言えばアリアが生まれた年では?
でも同年代の子供が数人はいる。
もう少し事情を聞かないと判断がつかない。
「他に魔王についての特徴はないんですか?」
俺はさらに情報を引き出すために話しをする。
「わからない。だが従軍した司教様の話だと……人には無い特殊な特技を持って生まれてくると言っていた。過去存在した魔王は、魔物を呼び寄せ使役する力をもっていたらしい」
――魔物を呼び寄せる力……。
それって……。
妹が傍にいると、よく動物ではなく魔物が近寄ってくる事を思い出した。
おい……冗談だろう?
戸惑う気持ちを外に出さないように内に止める。
「そうですか……」
相槌だけ打っておく。
つまり最初から妹がこいつらのターゲットだったわけだ。
「それで、もし魔王の力を持った子供が居たとしたらどうしたのですか?」
俺の言葉に男は考えるそぶりを見せた。
「教会に奉仕するように教育すると司教様は言っていた」
教育?洗脳だろ?
お前ら、ふざけているのか?
一瞬で怒りが頂点に達したが、となりにヤンクルさんが居たこともあり怒りを納める。
「魔王は、ここではどう言った扱いをされるんですか?」
俺の質問に男は言い淀む。
そして話し始める。
それは……もはや洗脳というか暴力を背景にした従順。
そして、魔王は覚醒後に巨大な魔力を行使するらしい。
アリアには、ほぼ魔力は無い。だが、もしそれが覚醒前なら……。
「後は、魔王はどこの国でも畏怖の対象であり殺害の対象になっている」
俺はふらつくのを我慢する。
俺がいきついた情報を彼らにヤンクルさんにも渡す訳にはいかない。
「魔王か……。そんなものがまた復活するとは思わなかったけど以前に出現したときには、戦争の引き金になったって冒険者ギルドでは聞いた事があるよ」
ヤンクルさんの言葉に俺は言葉を詰まらせる。
さらにヤンクルさんは言ってくる。
「つまりウラヌス十字軍は、戦争で使うための武器が欲しかった。ウラヌス教が欲しがっているのは、力。だからウラヌス教国とって戦争が起きるかどうかはあまり関係なかった。戦争のための戦力を補充するための侵攻だった。そういう事だね?」
ヤンクルさんの言葉に男は頷いた。
そして俺もそれを聞いて心の中で溜息をついていた。
「ユウマ君、私は村の皆の様子を見てくるから、しばらく一人で尋問しておいてくれないかな?」
ヤンクルさんの言葉に俺は頷く。
だが俺にとって、妹が狙われている事以上、重要な話しはなかった。
しばらくしてヤンクルさんが戻ってくると。『何か分かったのかい?』とヤンクルさんが話しかけてきた。
俺は冷静さを装いながら言葉を紡ぐ。
「はい。彼らは、ウラヌス十字軍第三騎士団と言っていますが、ウラヌス十字軍の構成としては神殿騎士団30人、司教クラスが数人にあとは冒険者と傭兵に8割は農民らしいです」
軍人でない人間が8割も侵攻に参加している。
それは、兵士として訓練を受けてない事を意味する。
となると、相手からの出方が軍人とはまったく異なるアプローチになる可能性が高い。
「それは……」
軍人相手なら相手の出方もある程度予想できるが、それが出来ないのがきつい。
ヤンクルさんもその辺を理解しているからこそ、言い淀んだのだろうか?
「対処はかなり楽になるかもしれないね」
「え?」
だが、ヤンクルさんの考え方は俺とはまったく別であった。
「ユウマ君、よく考えてみて。農民が騎士や傭兵みたく絡め手を使ってきたり頭を使って攻めてくると思うかい?彼らはそのまま直情的に攻めてくるだけだよ。問題は数だね、8割と言う事は数千の部隊と言う事は、農民の数は4ケタに達するんだろうね。さすがに数で攻められたらきびしい。だからなんとかしないと……だめだね」
ヤンクルさんの言葉を聞きながら、どうしたらいいか考えていると、《探索》の魔法範囲に無数の赤い光点が表示されていく。。
それらがあっという間に数を増やしていく。
「ヤンクルさん。ウラヌス教十字軍が侵攻を開始したようです。今は村の子ども達と数人の大人しか集まっていないとおもうので……村の皆に、村の中心である村長の家に集合してもらえるように伝えて頂けますか?」
俺の言葉にヤンクルさんは頷くが――。
「ユウマ君はどうするんだい?」
――心配そうな顔をして俺をみてくる。
「俺は、防壁を作ってウラヌス十字軍から村から守るために闘います」
「そうか。魔法が使えると言っても無理しないようにね」
ヤンクルさんは、気遣いの言葉を俺にかけると走っていく。
俺は村長の家に向かっていくヤンクルさんの後ろ姿を見ながら、頭の中で使用する魔法を組み込む。
まずは、最初に決めたとおり防衛に徹する形にする。
そのために必要な防衛陣地は頭の中で完成している。
あとはそれを形にするだけ。
両手を地面につけて、思い浮かべる。
村の周囲を取り囲む壁を、そして壁の外には水が湛えられた堀を思い浮かべる。
それは皇居の堀。
あとは力ある思いを形にするだけ。
そこで俺は動きを止める。
ここまで大規模な魔法は行使したことがない。
出来るかどうかは分からない。
だけど、防衛陣地を作らないと村の皆が逃げる余裕もなく蹂躙される。
それにこれだけ村を取り囲むだけの壁や堀を作り出せば、ウラヌス教国の目を妹から俺に向ける事だって出来るかもしれない。
だから思いを形にする。
そして思いを作り出すための魔法を編みあげる。
完成させた魔法を起動。
《陣地生成》の魔法を発動させた。
魔法発動と同時に、人工的な地震発生する。それに伴い、村の周辺の土壌が一気に陥没していき掘りが形成されていく。
そして大気の原子配列が組み替わり水素分子となり結合し水となって堀の中に降り注ぐ。
一つ目の堀が出来上がると二つ目の堀も作られていき完成する。
さらに城壁が競りあがっていき強固な壁が作られていく。
それに伴い体中から力が抜けていくのを感じる。
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思ったよりかなりの魔力を消費してしまった。
ただ、村を取り囲む堀や壁を作る上で、人口的な地震が発生するとは予想できなかった。
それでも城壁と堀は完成される事が出来た。
頭が割れるほど痛いが……魔力枯渇には至っていない。
なんとなくだが感覚的に魔法がまだ使える気がする。
俺は《肉体強化》の魔法を使い身体能力を高めると跳躍で堀を超えて城壁の上に立つ。
すると丁度、ウラヌス十字軍第三騎士団が森から抜けてきた
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