【書籍化作品】無名の最強魔法師
正直に言ったら殴られた
リリナと言う美少女に腹パンを受けた翌日、俺はリリナからの襲撃に備えて川で泳いでいた。
俺の知識の中には、中世の時代は泳げる人間が少ないと言う知識があった。
つまり、川の中で泳いでいる限りあの暴力女が俺に攻撃を仕掛けてくる事は難しいはず。
あまりにも完璧な作戦に、その時の俺は高笑いが止まらなかった。
そして川の中で浮いてから10分ほど経過した頃、俺の体は限界に達した。
ガタガタと震えながら、枯れ木を集めて作った焚き火の前で裸のまま体を温める。
思っていたよりずっと川の水は冷たかった。
そこで誰かに見られている感じがした。
焚き火から視線を逸らし正面を見ると、そこには俺に暴力を振るった女が立っており座り込んでいた俺を見下ろしてきていた。
「何か用か?」
昨日、殴られた事はもう気にして……ないわけあるかーという言葉を飲み込んで勤めて冷静に女に話しかけながら、俺は警戒したまま立ち上がる。
この前のような無防備な状態では殴られたりはしない。
こう見えても俺は、野山を駆けずり回って魔物に追われ、死にそうな目にあって鍛え抜かれた体があるのだ。
防御くらいはしてやる。
「……えっと……昨日は……」
早く言えよ。
こっちは昨日殴られた事で怒っているんだぞ?
名前を覚えて貰ってないってだけで殴るとか頭おかしいだろ。
「……昨日はね……ごめんなさい!」
なるほど、俺を殴った事に対して謝罪しにきたのか。
それなら俺も元大人としての度量を見せなければならない。
相手が謝ってきたのだ、その誠意と覚悟をきちんと受止めないといけないな。
俺は女の言葉を聞きながら頷く。
それを見た女の顔がパーッと明るくなるが。
「ごめんなさいで済んだら村長はいらねーんだよ!」
と俺は言い放った。
そう大人としてきちんとやったらいけない事は教えないといけない。
ちなみに村で揉め事が起きた場合には村長が解決することになっているので俺の言い方は間違っていない。
俺の言葉に女は俯いて体を震わせてしまっていた。
どうやら思ったよりきつく言ってしまって泣かせてしまったようだ。
でも元はと言えば全部、この女が悪いんだし俺は悪くない。
「ほら、もう帰れグフッ」
話の途中で腹に強烈な痛みを感じた。
体がくの字に折れて両足が地面から浮き上がり、鳴っちゃいけないメキメキって音が聞こえた。
そして俺の体は、横になりそのまま地面の上に落下した。
すげー痛いっていうか、苦しくて……息が……息が吸えない……。
殴った張本人を見上げると、腰を落としてコブシをフルスイングした状態のままドヤ顔で俺を見下ろしていた。
その様子は、まるでリバーブローを打ち終わったかのようだ!
「ふんっ!これだから田舎者は嫌なのよ!こっちが下手にでたらすぐに調子に乗るんだから。謝って損したわ!」
それだけ言うと女は去って行った。
なんて女だ…あんな暴力女はアライ村で見た事ないぞ? 
そして……体が動かない俺にまた近づいてくるキツネ野郎。
「やめろ!それしたら今度こそ許さないんだからなああああ」
俺は必死に懇願したが所詮は犬畜生で意味を成さない。
キツネにおしっこをかけられながら、心の中でいつかこの犬畜生どもを駆逐することを固く心に誓った。
そして昨日の焼き直しのように体を川で洗って家に帰って母親に怒られた。
理不尽すぎて何とも言えない。
翌朝、家の周りの草むしりをしていると男性に声をかけられた。
「ユウマ君、少しいいかな?」
男性はヤンクルさんだった。
ヤンクルさんは、元冒険者と言う知識や経験もあるからか以前にこの村にいた猟師の人よりも腕がいい。おかげで最近は肉がたくさん食べられるようになった
ヤンクルさんの家には行った事はないけど、娘があれだけいい服を着ているのだから俺よりもいい生活を送っていると思われる。
「いいですけど、どうかしたんですか?」
「実はね、娘のリリナのことなんだけどね。君と仲直りできなくて落ち込んでるんだよ。仲良くしてあげてくれないかな?」
仲良くって、あいつから俺に殴り掛かってきてるんですけど?
そんな暴力振るう人と仲良くするとか無理です。
俺が黙っているとヤンクルさんは懐に手を入れると白い塊を俺に差し出してきた。
「娘からの話で大体の事情は理解しているよ、だからこれで手を打ってくれないか?」
俺はヤンクルさんから白い塊を受け取る。
そして首を傾げる。
「これは何ですか?」
俺の言葉にヤンクルさんは頷くと、もう一つ懐から白い塊を取り出して近くの木の表面にひらがなを書いた。
書かれたひらがなの文字の色は白い。
まるで、昔みた石灰岩で作られたチョークのようだ。
「これは、どこにでも文字が書ける物だよ」
ヤンクルさんの言葉に、なるほどと俺は頷きながら思い出す。
たしか……コンクリートの素材となる3つの要素、それは砂利とセメントと水だ。
そしてセメントの主成分は石灰……。
石灰が手に入るなら現代風のセメントは無理だがローマ帝国やエジプト王朝時代に使われていた古代コンクリートの素材となった古代セメントなら作ることが可能になるかもしれない。
「ヤンクルさん!これってどこで手に入れたんですか?教えてもらえますか?」
「それじゃさっきの仲直りの話は……」
「はい!俺は約束を違えるような事はしません、仲良くしますよ?」
ヤンクルさんが『ずいぶん難しい言葉を知っているんだな』と言っているが俺には今回のヤンクルさんからの提案は僥倖と言えるものであった。
俺の知識の中には、中世の時代は泳げる人間が少ないと言う知識があった。
つまり、川の中で泳いでいる限りあの暴力女が俺に攻撃を仕掛けてくる事は難しいはず。
あまりにも完璧な作戦に、その時の俺は高笑いが止まらなかった。
そして川の中で浮いてから10分ほど経過した頃、俺の体は限界に達した。
ガタガタと震えながら、枯れ木を集めて作った焚き火の前で裸のまま体を温める。
思っていたよりずっと川の水は冷たかった。
そこで誰かに見られている感じがした。
焚き火から視線を逸らし正面を見ると、そこには俺に暴力を振るった女が立っており座り込んでいた俺を見下ろしてきていた。
「何か用か?」
昨日、殴られた事はもう気にして……ないわけあるかーという言葉を飲み込んで勤めて冷静に女に話しかけながら、俺は警戒したまま立ち上がる。
この前のような無防備な状態では殴られたりはしない。
こう見えても俺は、野山を駆けずり回って魔物に追われ、死にそうな目にあって鍛え抜かれた体があるのだ。
防御くらいはしてやる。
「……えっと……昨日は……」
早く言えよ。
こっちは昨日殴られた事で怒っているんだぞ?
名前を覚えて貰ってないってだけで殴るとか頭おかしいだろ。
「……昨日はね……ごめんなさい!」
なるほど、俺を殴った事に対して謝罪しにきたのか。
それなら俺も元大人としての度量を見せなければならない。
相手が謝ってきたのだ、その誠意と覚悟をきちんと受止めないといけないな。
俺は女の言葉を聞きながら頷く。
それを見た女の顔がパーッと明るくなるが。
「ごめんなさいで済んだら村長はいらねーんだよ!」
と俺は言い放った。
そう大人としてきちんとやったらいけない事は教えないといけない。
ちなみに村で揉め事が起きた場合には村長が解決することになっているので俺の言い方は間違っていない。
俺の言葉に女は俯いて体を震わせてしまっていた。
どうやら思ったよりきつく言ってしまって泣かせてしまったようだ。
でも元はと言えば全部、この女が悪いんだし俺は悪くない。
「ほら、もう帰れグフッ」
話の途中で腹に強烈な痛みを感じた。
体がくの字に折れて両足が地面から浮き上がり、鳴っちゃいけないメキメキって音が聞こえた。
そして俺の体は、横になりそのまま地面の上に落下した。
すげー痛いっていうか、苦しくて……息が……息が吸えない……。
殴った張本人を見上げると、腰を落としてコブシをフルスイングした状態のままドヤ顔で俺を見下ろしていた。
その様子は、まるでリバーブローを打ち終わったかのようだ!
「ふんっ!これだから田舎者は嫌なのよ!こっちが下手にでたらすぐに調子に乗るんだから。謝って損したわ!」
それだけ言うと女は去って行った。
なんて女だ…あんな暴力女はアライ村で見た事ないぞ? 
そして……体が動かない俺にまた近づいてくるキツネ野郎。
「やめろ!それしたら今度こそ許さないんだからなああああ」
俺は必死に懇願したが所詮は犬畜生で意味を成さない。
キツネにおしっこをかけられながら、心の中でいつかこの犬畜生どもを駆逐することを固く心に誓った。
そして昨日の焼き直しのように体を川で洗って家に帰って母親に怒られた。
理不尽すぎて何とも言えない。
翌朝、家の周りの草むしりをしていると男性に声をかけられた。
「ユウマ君、少しいいかな?」
男性はヤンクルさんだった。
ヤンクルさんは、元冒険者と言う知識や経験もあるからか以前にこの村にいた猟師の人よりも腕がいい。おかげで最近は肉がたくさん食べられるようになった
ヤンクルさんの家には行った事はないけど、娘があれだけいい服を着ているのだから俺よりもいい生活を送っていると思われる。
「いいですけど、どうかしたんですか?」
「実はね、娘のリリナのことなんだけどね。君と仲直りできなくて落ち込んでるんだよ。仲良くしてあげてくれないかな?」
仲良くって、あいつから俺に殴り掛かってきてるんですけど?
そんな暴力振るう人と仲良くするとか無理です。
俺が黙っているとヤンクルさんは懐に手を入れると白い塊を俺に差し出してきた。
「娘からの話で大体の事情は理解しているよ、だからこれで手を打ってくれないか?」
俺はヤンクルさんから白い塊を受け取る。
そして首を傾げる。
「これは何ですか?」
俺の言葉にヤンクルさんは頷くと、もう一つ懐から白い塊を取り出して近くの木の表面にひらがなを書いた。
書かれたひらがなの文字の色は白い。
まるで、昔みた石灰岩で作られたチョークのようだ。
「これは、どこにでも文字が書ける物だよ」
ヤンクルさんの言葉に、なるほどと俺は頷きながら思い出す。
たしか……コンクリートの素材となる3つの要素、それは砂利とセメントと水だ。
そしてセメントの主成分は石灰……。
石灰が手に入るなら現代風のセメントは無理だがローマ帝国やエジプト王朝時代に使われていた古代コンクリートの素材となった古代セメントなら作ることが可能になるかもしれない。
「ヤンクルさん!これってどこで手に入れたんですか?教えてもらえますか?」
「それじゃさっきの仲直りの話は……」
「はい!俺は約束を違えるような事はしません、仲良くしますよ?」
ヤンクルさんが『ずいぶん難しい言葉を知っているんだな』と言っているが俺には今回のヤンクルさんからの提案は僥倖と言えるものであった。
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