【書籍化作品】無名の最強魔法師
漢字魔法が教えられない!
俺の言葉に親父と母親が『え?少しだけ?』と言っているがそれは今はそれは置いておこう。。
そう問題はここからなのだ。
「それで、俺は思いました。こんな不当な事で怒られるのは幼児虐待ではないかと!」
精神は肉体年齢に引き摺られる。
ただ俺には、いろいろな知識があってそれを元にきちんと自分の行動を抑制出来ていたと思う。
つまり俺は悪くない。
怒るウカル神父が悪いのだ。
「ユウマ、魔法にまったく関係話しのようだが。それはどこまで続くんだ?」
まったくの親父はすぐに答えを聞きたがるな。
たしかに魔法習得にはあまり関係ないけどな……。
そんな俺に親父は――。
「そもそもユウマ。お前は、小さい頃から山や川へ行っては、イノシシや熊。さらにはレッドボアまで村内に連れてきておいて何を言っているんだ?」
――的確に突っ込みを入れてくる。
「まってください!それはそれ、これはこれです。俺は昔の事は振り返らない主義なのです」
「アナタ……この子大丈夫なのかしら?人間として……」
たかが過去を振り返らない程度で、そこまで突っ込まないでほしい
「やっぱり育て方が悪かったのか……」
俺とか、ほとんど放任主義だったのに何を今更、きちんと育てたような言い方をしてくるのか……突っ込みを入れたい。
とりあえず親父も母親に同意しないでほしい。
というか話が進まないから!
静かに俺の話をきけと思う。
突っ込むと入れられると話しが進まないからな。
「――結論から言いましょう。俺はウカル様が所蔵しているという魔法の本を奪って魔法を覚えようとしたのです。そして俺を虐待した事を反省させてやろうと……あれ?」
気がつけば体を縄でグルグル巻きにされていた。
「続きを話せ、話し終わったらウカル様にお前を引き渡す」
「……それで、教会の近くの地面に穴を掘って侵入し床板を外して所蔵していた魔法の本を確保したんです」
「それで魔法が使えるようになったという事か?」
親父の言葉に俺は頭を振る。
「いえ使えませんでした。ウカル様が使う魔法の構成要素は主に四体言に分別されます。
まずは大気に存在している何かしらに意志を伝えるための銀の粉末を撒く動作。
次に指先に体内の何かを集中させた後に大気に魔方陣を描く動作。
そして正しい術式詠唱をすること。
そこで始めて魔法の発動ワードを唱える事で、魔法が使えるようになるのです」
「……あなた。ユウマが言っていた事、わかった?」
「さっぱり分からん」
きちんと説明したはずなのに理解してもらえないと俺のモチベーションが……。
「とにかく、ユウマが使っている魔法はそれとは別という事だな?」
親父が核心をついてきた。
そして俺に続きを話せと催促してくる。
「どうしても魔法が使いたい俺は、ウカル司祭様の後をついていき色々と観察をしました」
「なるほど、7,8年前に誰かにつけられてるとウカル司祭様が村長に相談していたがお前だったんだな」
「……」
なぜか魔法の話をしているのに、俺の余罪がどんどん積み重なっていっているのは気のせいだろうか?
母親とか『どうしてこんな子に育ってしまったのかしら』とか泣いているし。
「それで気がついたんです。ウカル様の組む魔法陣にこそ秘密があるのではないのかと」
そう、たしかに俺は小さい頃には少しは問題児だったかも知れない。
だからこそ俺はそこには目を背けない!
「そうか、さっさと先を話せ」
親父がすげー怒っている。
正直に話しているだけなのに……。
「魔法陣には古代語とかが使われていますよね?そこに秘密があると思って調べていたら漢字こそが魔法の根幹を担っていると気がついたんです」
俺の言葉に親父もお袋も頭を傾げている。
「漢字とはなんだ?まぁいい、つまりそれが魔法の発動になっていていたから魔法が使えるようになったという事だな?」
「親父!待ってくれ。漢字と事象を想像すること、この2つが必要な事なんだ」
「つまりそれが魔法の発動になっていていたから魔法が使えるようになったという事だな?」
「いや、だから……」
「つまりそれが魔法の発動になっていていたから魔法が使えるようになったという事だな?」
おかしい、話がループしている?
そしてようやく俺は気がついた。
先ほどまで聞こえていた虫の羽音や風の音がまったく聞こえない事に。
「無理だよ、ユウマ君。資格がある者以外が真理の技術を理解できる訳がないんだよ。資格がない者が理解しようとしたら……分かるよね?」
突然現れた不定期な姿の者は、形を変えながらそれだけ言うと虚空に姿を消したと同時に虫や風の音が聞こえてきた。
「ユウマの言い分は分かった。つまりウカル様の魔法の本を見た後に、魔法を使っている場面を見た。そしてそれをヒントに独自に魔法を作り出して覚えたという事だな?」
親父の言葉を聞きながらも、先ほどまで何か嫌な者に語りかけられていた気がするが――。
ただ、漢字魔法を親父たちには伝えたらいけない気がした。
だから親父が誤解してるならと……そのまま頷く。
親父も俺が頷いたので納得してくれたようだ。
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