【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

町がピンチ!? 海神ウミゾーの襲撃!(後編)

「とりあえずセイレスという冒険者ギルドの職員を助けにいくとするか」と俺は言いながら椅子から立ち上がる。
 そんな俺の様子に「どうされるんですか?」と、イノンが俺に問いかけてくる。

「いや、正面からクルド公爵邸を襲撃して助け出す方向だな」

 俺の言葉に、2人とも驚いた表情を見せてくる。
 何かおかしな事を言ったか?
 助けるなら早く助けた方が良いだろうに。

 まぁ、貴族と敵対するのもメンドイというのはあるが旅をしている仲間の知り合いなら助けても問題ないだろう。
 最悪、今日でクルド公爵家は終わるかも知れないがな。

「……で、だれかクルド公爵邸の場所は知っているか?」
「ううん、知らないわね」
「知りませんね」

 どうやら相手の本拠地を俺達3人は知らないようだ。

「仕方無いな。とりあえずは情報収集にいくか」

 お茶を飲み干してから椅子から立ち上がると、リネラスが俺を洋服を掴んできた。

「情報収集? さっき、あんなに暴れた町に戻るの?」と俺の窺う目で俺を見ながらリネラスが問いかけてくる。

「誰もクルド公爵邸の場所を知らないんだから、町で聞いてこないとダメだろう?それにな……町で知り合いになったばかりの兵士達がいるからな。簡単に情報はもらえるはずだ」
「ユ、ユウマ……あなた……ま、まさか……」

 リネラスが肩を落としながら震える声で俺に問いかけてくる。

「リネラスは心配しなくていいぞ? さっきだって、じっくり話しをすれば色々と教えてくれるだろう?」
「手加減してあげるのよ?」

 手加減って……俺はいつもギリギリの線を見極めて手加減してるぞ?
 ひどい言い方だな。
 俺は溜息をつきながら宿屋から出る。
 しばらく歩くと、海の港町カレイドスコープが見えてきた所で俺は足を止めた。

 何故かは知らないが町の方から爆発音が何度も響いては悲鳴や怒鳴り声が聞こえてくるのだ。
 町の方をジッと見ていると何やらワサワサと動いている巨大な生き物が町の中で暴れている。
 巨大な生き物の大きさは20メートル近くあるだろう。
 まるでその格好は、モ○ゾーのようだ。
 突然の出来事と言うか突っ込みどころが多い出来事に俺は見入るってしまった。
 じっと町の方を見て立ったままでいると港町カレイドスコープの住人が俺の方へ避難してくる。
 そして立ち尽くしていた俺を見て。

「あんた! 何をしているんだ! こんな所にいたら危険だぞ! あれは海の怒りが生んだ海神様だ!」

 ――海神様? 
 俺は男に話しかけられた事で少しだけ突っ込む余裕が出来た。
 どうして、あんな格好で海神なんだ?
 あれとか、どう見ても○リゾーにしか見えないだろ。

「そ、そんな……海神様が町を襲うなんて初めてだ……どうしてなんだ?」

 避難してきた男達の話が耳に入って来る。
 町を襲うのは初めて?

「いつもは違うのか?」

 興味が沸いた俺は、男達は問いかける。

「海神リヴァイアサンは、強い魔力に引き寄せられる性質があるんだ」
 ふむ……なるほど。

「だから町では魔力を込めた魔宝石を海に沈めているんだ。だから今まで町が襲われる事なんてなかったのに……きっと効かなくなったんだ。もうおしまいだー!」

 強い魔力に引き寄せられるのか……。
 なるほど……。
 右手を海神もといウミゾーに向けて俺は【風刃】を発動させる。
 生み出された真空の刃がウミゾーの体を上下に別つ。
 そして、20メートル近い巨体だったことで、ウミゾーは倒れる際に多くの建物を巻き込んでいった。
 ウミゾーが倒されたことで、避難してきた多くの町の人々が、歓声を上げている。
 その中から一人の男性が進み出てきて俺に頭を下げてきた。

「ありがとうございます。名のある魔法師の方かと思いますがぜひお礼をさせてください」
「気にすることはない」

 おそらくだが、俺が魔法を街中で使ったせいでウミゾーが町にきたのだ。
 お礼なんてもらえない。
 ただ、格好もつけないといけない。
 俺は右手を天に突き出した後、彼らと分かれた。

「あれ?ユウマさん。ずいぶんと早いお帰りですね?」

 イノンが俺に語りかけてくる。

「ああ、少しだけ不備があってな……」

 どうせ、ウミゾーの片づけとかで港町カレイドスコープは忙しいだろう。

 それに明日になれば、ある程度町は復興してると思うし、胸中に町の人々が色々と問題点を解決してくれるはずだ
 。


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