【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

海の迷宮リヴァルア攻略(4)

 海の迷宮リヴァルア1階は、半漁人。
 海の迷宮リヴァルア2階は、蟹ぽいの。
 海の迷宮リヴァルア3階は、伊勢海老ぽいの。
 海の迷宮リヴァルア4階は、ホタテ、ウニ、サザエ、アワビぽいの。

「ふむ。考えれば考えるほど2階から4階は漁場としては優良な気がする」
 俺は火炎の魔法を維持し、イセエビを焼きながら考える。
 これで醤油があれば壷焼きとか出来たりするんだが……。

 イセエビを焼き終えると、手刀で切り分けてから齧り付く。
 とてもおいしい。
 もって帰りたいが……。

「俺、アイテムボックス使えないからなあ……」
 空間魔法系統の入門に近いアイテムボックスは、魔法師育成学校に行けば教えてもらえるらしい。
 そんな事をリネラスは言っていたが、俺には空間作用の魔法というのがどういった物なのか理解が出来ないし想像も出来ない。
 よって漢字魔法が発動しないのだ。

「無い物強請りをしても仕方ないか……」
 俺は火をおこした事で近づいてきたウニが放ったトゲを指先で受け止めながら食事を続ける。

「とりあえず何階まであるか分からないからな……」
 食事が終わり立ち上がると、俺は歩きながらウニから射出されるトゲを避けて近づき、交差する瞬間に手刀で真っ二つに割った。
 中にはウニが詰まっており、新鮮なうちに頂く。
 一通り食べ終わったら、魔法で水を生み出し喉を潤す。

「さて、階下にいくとするか」
 5階に続く階段を降りていく。
 100段くらい降りただろうか?
 着いた先は、巨大な空間であった。
 天井は優に10メートルはあるだろう。
 部屋の一辺は憶測に過ぎないがおそらく50メートルはある。

 そして中央部には、『きゅい?』とかわいい声を上げてイルカが出現した。
 一匹だけしか現れないからどうせフロアボスとかそんな感じなのだろう。

「ふむ……」
 そして俺は間髪入れずに”風刃”でイルカをバラバラにバラした。
 それと同時に床下に続く階段と宝箱が現れた。

「なるほど、倒すと宝箱が出るのか」
 俺は宝箱を開けると、そこにはイルカ型の背負い式のバックが入っていた。
 そして俺はそのまま階段を上がっていき、食べきれない分のササエとかアワビが入らないか実験をする。明らかに容量を超える食材が入っていく。
 まるで、四○元ポケットじゃなくて、四次元イルカリュックと名づけよう。

 そして、また5階に下りると『きゅい?』とかわいらしく鳴きながら俺を大きな円らな目で見てくる。 俺はその目を見たと同時にイルカをバラバラした。
 そしてまた宝箱が出現する。

「ふむ、これはもしかして……瞬殺すればアイテムが出まくる無限ループなのでは?」
 ふふふ、また勝ってしまったな。
 敗北を知りたい……。
 宝箱を開けるとそこには『スカ』と書かれた紙が宝箱の中に入っていた。
 ……ふむ、どうやらここの迷宮主は俺を怒らせたいようだな……。

「さて、6階に下りるか」
 俺は階段を降りていく。
 するとそこには、海蛇や見たらトラウマになりそうな物がたくさん生息していた。
 生理的に受け付けない事もあり、”風刃”の魔法を使い殲滅していく。
 そして、サーチアンドデストロイを始めてから1時間ほどで階段を見つけて階段を降りた。

 7階に下りると、そこには無数の白い海蛇が存在していた。
 大きさは全て5メートル近くある、
 高さ10メートル、横幅20メートルはある通路に、ところ狭しと生息している。
 戦わずに抜ける事はかなり難しいだろう。

 俺は、魔法を使いながら処理をしていく。
 さすがにこれを体術メインで戦うのは時間がかかりすぎる。
 白い海蛇を倒しながら通路を進んでいると突然、大きな部屋に出た。

「グルルルルルル、人間か……?このような場所まで来れるとは楽しめそうだな?」
 ふむ、言葉が通じるのか。

「俺の名前はユウマだが、アンタと戦うつもりはない。この迷宮を封印もしくは破壊しにきただけだ。邪魔をしなければ殺さない。だから静かにしていてくれないか?」

「グルルルル、面白いぞ。人間、この我を殺す?よかろう!殺せるものなら殺してみ……るが……いええ」
 話してる途中に、体長30メートル近くある青い龍の首を、”風刃”の魔法で切り落とした。

「ばかな……貴様、相手の口上を聞かずに攻撃をするなど……」

「殺せるものなら殺してみるがいいって言われたから、つい……」

「……こんな、こんばばかなあああああああ」
 最後の口上を述べると同時に青い龍は消滅し、その場には1メートルの青い玉が床の上に転がっていた。それに伴い迷宮が振動を始める。
 次々と壁や天井が崩れ始めた。
 俺は、天井に手を向ける。
 そして、考えていた物理系である”荷電粒子砲”の魔法を放つ。
 放った閃光は、天井を貫通し全てを消し飛ばしていく。
 俺は魔法を維持したまま飛翔の魔法を発動し迷宮内を上昇する。
 そして1分ほどで海の迷宮リヴァルアを脱出する。
 空から見ると、俺が凍結させていた海は殆ど溶けており迷宮が崩壊すると同時に、迷宮が存在していた場所に大量の海水が流れ込みすべては海の藻屑となって消えた。

「ふむ、これで海の迷宮リヴァルアの破壊は完了なのか?ダンジョンコアが無かったが……まあ、いいか」
 俺は、飛翔の魔法を維持したまま『海の港町カレイドスコープ』に近い海岸に降り立つ。

 海岸から『海の港町カレイドスコープ』内を通っていくとあちらこちらに兵士の姿が見える。
 海の迷宮リヴァルアの迷宮に潜っていたのはかなり時間のはずだったんだが、こいつらはいつまでこの町にいるのだろうか?と疑問に思ってしまう。
 さっさと他の公爵を倒すなり王様をぬっ殺すなりすればいいのに……。

 まあ俺の知ったことではないが……。

 俺はリネラスやイノンが待っている『移動式冒険者ギルド宿屋』に向かう。
 そして宿屋に入ろうとした所で、バッタリとイノンと出会った。

「あれ?ユウマさん。ずいぶん早いお帰りなんですね?」
 イノンが頭を傾げてくる。

「ん?ずいぶん早い?」
 イノンが不思議なことを呟いてくる。
 俺も頭を傾げた。

「はい、だって今朝出て行ったばかりですよね?」
 今朝、出ていったばかり?
 俺が何週間も居たと思っていた迷宮はどうやら時間の流れが違う?
 だから『海の港町カレイドスコープ』には人が兵士がまだ居たのか?
 だが、その割には俺が凍結させた氷が溶けていた意味が分からないんだが……。
 どちらにせよ今、この場で判明することではないか。

「そうだな、それでイノンに聞きたいことがあるんだが、この『移動式冒険者ギルド宿屋』の花壇は、移動する時も一緒に収納されるのか?」

「はい、そうですけど?お花とか移動の度に植えなおしてたら大変ですよね?」

「なるほど、たしかに……イノン、使ってない花壇とかないか?俺も何か栽培したいと思うんだが?」
 青い龍が落とした1メートル程の宝石を花壇に埋めておくとしよう。
 リネラスに渡したら現金化されそうだしな。
 いつか高く売れそうになったら掘り起こして売ろうとしよう。

「はい!中庭の花壇でしたら植えられますよ。でも、ユウマさんが何かを栽培したいなんて珍しいですね?」

「ああ、たまには気分転換という奴だ」
 俺はイノンにお礼を言うと分かれた。
 中庭の花壇は、奥行き2メートル幅2メートルほどだ。
 青い龍から出た1メートルの球体の宝石を埋めるには丁度いい広さだ。
 宝石を埋めた後に周りに花でも植えればカモフラージュになるだろう。
 魔法で畑を耕した後、穴を掘りその中に宝石を設置して上から土をかぶせる。

「よし、これで完璧だな。あとは後日に花でも買ってきて植えれば分からないだろう。さて、リネラスに俺が迷宮を討伐してきたことを報告しないとな」




コメント

  • ノベルバユーザー322977

    動物保護とか言ってるがただの人間の自己満足だろ

    1
  • なつめ猫

    そんなのシルカ(゜Д゜*)!

    2
  • ノベルバユーザー236996

    イルカは動物保護の観点から倒したらイメージ悪いよ。

    0
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