【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

秘密は蜜の味(前編)

 なかなか粘るな……。
 仕方ない、ここは心を鬼にしてさっさと部屋に戻る事にしよう。
 俺が歩き出すと同時にリネラスが後ろからタックルに近い抱きつきをしてきた。
 後ろを振り返ると、リネラスが上目づかいで。

「ユウマ! まって! これは絶対に調査しないといけないとおもうから!」

 俺の腰に手を回し掴んできて必死に話してくるリネラスを見下ろす。

「だから言ったろう? 最近の俺の嫌な予感は当たるんだよ。あれほど止めたったのにまったくリネラスは……」
「ユウマだって! 賛成してくれたじゃない!」

 くっ……たしかに……リネラスの言うとおりだが……ここで認めると俺まで罪を背負う形になってしまう。
 なるべくならそれは避けたい。

「リネラス、よく聞けよ? ただちに影響は起きない。つまりだ……放置しておいても問題ないってことだ。つまり調査をすぐ刷る必要はない。つまりそういうことだ」

 よし、寝るか……。
 リネラスが腰に回してるてを振りほどいてと。

「で……でも! 世界が滅びるって書いてあるから! ユウマさん! ユウマさん! たずげでくだざあい」

 こいつは何かあればすぐ泣いて済まそうとする癖が最近ついてるな。

「いいかリネラス、これはお前が目を円マークにして行動した結果だ、責任くらい自分でとれ!」
「うあああああああん、ユウマのばかああああああああ」

 リネラスは泣きながら自分の部屋の方へ走っていってしまった。
 まったく、うちのギルドマスターはどんどん駄目になっていくな。
 最初に出会った頃の、凛々しいあの頃のリネラスが幻だったのではないかと最近思ってしまっているまである。 まぁ、リネラスも自分の部屋に戻ったことだし、俺も今は、休もうとしよう。
 俺は、自分の部屋を扉を開けて中に入るとベットに潜り込んで目を閉じた。

 それから数時間後、精神的な疲れも取れた俺は部屋から出てホールを通り食堂兼酒場に足を踏み入れた。
 そこには冒険者ギルドの青を基調とした制服を身に纏っているセイレスとセレンが、新しい制服を着たユリカと話をしていた。
 もちろんセイレスは黒板を使って意思疎通をはかっていたが。
 話の内容はリネラスに関してのようだ。
 俺が近づくと3人とも俺に気がついたのか。

「ユウマさん、目を覚まされたのですね」
「ああ、もう大丈夫だ。時間は?」
「もうすぐお昼ですね」
「なるほど……」

 ユリカの話を聞きながら、ほぼ半日寝ていた事実にきがつく。
 ここ数日、かなり無理してきたからな。
 思ったより疲れていたということか……。

「そういえば、リネラスの姿を見ないな」

 俺は3人に話しかけながら椅子を引いて座る。

「はい、部屋に閉じこもったきりまだ戻ってきてませんね」

 ユリカの言葉に、セレンとセイレスが頷いている。
 なるほど……。

「ところで先ほどから海の港町カレイドスコープの方角から兵士が来ては通り過ぎてる気がするが……」
「はい、朝から建物の近くを通り過ぎてから宿屋周辺を調べる兵士が増えています」

 それはつまり、こちらの場所がばれてきている?
 だが、認識阻害の魔法が掛かっているとリネラスは言っていたが。

「やれやれ……問題は山積みってことだな」

 俺が一人呟いたところでセイレスが黒板を俺に見せてきた。
 黒板には、「ユウマさん、リネラスについて少しお話がありますので2人きりになれませんか?」と書かれていた。


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