【書籍化作品】無名の最強魔法師
イルスーカ侯爵令嬢エメラダの恋事情(前編)
私は、部下たちにも武器を鞘に納めるように指示を出す。
私の指示に戸惑っているのか騎士達は、武器を鞘にしまうのに時間がかかっていた。
未知の魔法で空を飛んできた魔法師と戦えば、まず私達に勝ち目はない。
それに何より武器を向けられていたというのに彼からは敵意を感じなかった。
普通ならば、何かしらの不快な感情を抱いてもおかしくないのに、彼から感じた雰囲気は戸惑いであった。
これでも、侯爵令嬢として育てられて魔法師育成学校で多くの腹黒い貴族達を見てきた。
だからこそ、分かる。
この、ユウマと云う男は、あまり駆け引きに向いてないということが……。
「すまなかったな。半信半疑であったが領内で捕らえた不審人物共が村から追い出されたと言い訳をしていたからな、気になって来てみたのだ」
半分は本当であったが、村から追い出されたというのは嘘だ。
そして少しだけ気になった。
空を飛ぶ魔法を使う魔法師は私の容姿を見てどのような反応をするのかを。
老婆のようだというだろうか?それとも何というだろうか。
私は兜を脱ぎながらユウマという男に語りかける。
「私の名前は、エメラダ・フォン・イルスーカだ。この地方を王家より治める事を許されたイルスーカ侯爵の次女だ。よろしく頼む」
さて、どのような反応を示す?侯爵家と名前を聞いてどのように反応する?
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
あっさりとあまりにも普通に私に向けてユウマという男は言葉を返してきた。
媚びへつらうなら分かる。
嫉妬や羨望の眼差しで見てくるなら理解できる。
だが、この男は私のことを路傍の石程度にしか見ていない?
「……ユウマとやら、つかぬ事を質問するが、お主は私の事を見て表情を変えぬのだな?」
私の言葉にユウマは頭を傾げてると訳が分からないと言った言葉を私に投げかけてきた。
この男は感性が鈍いのだろうか?
掴みどころがない男に、私が理解ができない人間がいることに、私は苛立ちを覚えた。
「うむ。普通ならば私のような老婆のような髪は忌み嫌われるがユウマは気にしてはいないようであったからな」
いつも言われる言葉を自分で吐くとやはり心に来るものがある。
覚悟していたとは言え、家族の中で一人だけ、この容姿なのだ。
家族以外に私を愛してくれるものなどいないはずだ。
「とても美しい色の髪だと思いますよ?」
――は?この男は何を今言った?……私のことを、私の髪の色を美しい色と言ったのか?この老婆のようだと蔑まれてきた髪を?
自覚した瞬間、恋愛小説を読んでいた内容が鮮明に頭の中に浮かび上がる。
『君の髪は月の輝きよりも綺麗だ』という一小節を思い出してしまう。
――そこまで考えたところで、心臓が律動を刻み高鳴っていく。
私は何度か深呼吸をしながら、落ち着け。落ち着けと自分に言い聞かせる。
そしてこのユウマという男に尋ねたい事が出来た。
私は、貴族であるが魔法が使えない。
だからこそ、領民を守るために騎士となった。
だが、騎士や兵士というのは女には厳しいところだ。陰口を叩かれた事もあるし、ほかの貴族からは嫁ぎ先がないから騎士となったと揶揄する者もいたくらいだ。
この男から見て、今の私の立場、姿はどう映るのだろうか?
とても気になる。
「……ユウマは、女が騎士をしてることをどう思う?」
さて、ユウマという男は何と返してくる?
だが、またしても私の予想を超える答えをユウマは返してきた。『そうですね。憧れると思います』とユウマが言ってきた時、私にはユウマの言葉を聞くことが出来たが理解が出来ずにいた。それでも時間が経てば実感として湧き上がってくる。
聞き間違いではないのだろうか?
「憧れる?」
私は、確認の意味も込めて改めて尋ねた。
すると彼は、私をまっすぐに見て語りかけてきた。
「はい、自分の好きな職業についてそれを信念として貫き誰かを守る姿は騎士としての鑑ではないでしょうか?俺はそういう人をカッコいいと思いますし素敵だと思います」
顔が真っ赤になっていくのを止められない。
心臓の鼓動が旋律を奏でていく。
私が選んだ道は間違いではないんだよと肯定された事が、とてもうれしい。
いつの間にか、喉が渇いていた。
何度か咳をして誤魔化す。
「それでは、ユウマさ……ユウマとやら一つ聞きたいのだが、この村を本来治める村長一家からの話ではこの村には目の前にあるような防壁があるとは聞いていなかったのだが、これはなんなのだ?」
いけない、いけない。つい、侯爵令嬢の話し方に戻るところであった。
どれだけ私は同様してしまってるのかしら……じゃなくて!動揺してるんだ!
「はい、実は俺が作りました」
ふふふ、ユウマはずいぶんと面白いやつのようだ。。
「なるほど……私はあまり冗談は好きではないと言う事を理解してるな?それとも私を試しているのか?」
村を囲うような巨大な壁を一人で作れる訳がない。
やはり私を女性だと思って、舐めているのかもしれないな。
「エメラダ様、見ててください」
それだけをユウマが言うと、その場にしゃがみ両手で地面を触れた。
それと同時に、50メートルはあると思われる川を越える橋が出来上がっていく。
私の指示に戸惑っているのか騎士達は、武器を鞘にしまうのに時間がかかっていた。
未知の魔法で空を飛んできた魔法師と戦えば、まず私達に勝ち目はない。
それに何より武器を向けられていたというのに彼からは敵意を感じなかった。
普通ならば、何かしらの不快な感情を抱いてもおかしくないのに、彼から感じた雰囲気は戸惑いであった。
これでも、侯爵令嬢として育てられて魔法師育成学校で多くの腹黒い貴族達を見てきた。
だからこそ、分かる。
この、ユウマと云う男は、あまり駆け引きに向いてないということが……。
「すまなかったな。半信半疑であったが領内で捕らえた不審人物共が村から追い出されたと言い訳をしていたからな、気になって来てみたのだ」
半分は本当であったが、村から追い出されたというのは嘘だ。
そして少しだけ気になった。
空を飛ぶ魔法を使う魔法師は私の容姿を見てどのような反応をするのかを。
老婆のようだというだろうか?それとも何というだろうか。
私は兜を脱ぎながらユウマという男に語りかける。
「私の名前は、エメラダ・フォン・イルスーカだ。この地方を王家より治める事を許されたイルスーカ侯爵の次女だ。よろしく頼む」
さて、どのような反応を示す?侯爵家と名前を聞いてどのように反応する?
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
あっさりとあまりにも普通に私に向けてユウマという男は言葉を返してきた。
媚びへつらうなら分かる。
嫉妬や羨望の眼差しで見てくるなら理解できる。
だが、この男は私のことを路傍の石程度にしか見ていない?
「……ユウマとやら、つかぬ事を質問するが、お主は私の事を見て表情を変えぬのだな?」
私の言葉にユウマは頭を傾げてると訳が分からないと言った言葉を私に投げかけてきた。
この男は感性が鈍いのだろうか?
掴みどころがない男に、私が理解ができない人間がいることに、私は苛立ちを覚えた。
「うむ。普通ならば私のような老婆のような髪は忌み嫌われるがユウマは気にしてはいないようであったからな」
いつも言われる言葉を自分で吐くとやはり心に来るものがある。
覚悟していたとは言え、家族の中で一人だけ、この容姿なのだ。
家族以外に私を愛してくれるものなどいないはずだ。
「とても美しい色の髪だと思いますよ?」
――は?この男は何を今言った?……私のことを、私の髪の色を美しい色と言ったのか?この老婆のようだと蔑まれてきた髪を?
自覚した瞬間、恋愛小説を読んでいた内容が鮮明に頭の中に浮かび上がる。
『君の髪は月の輝きよりも綺麗だ』という一小節を思い出してしまう。
――そこまで考えたところで、心臓が律動を刻み高鳴っていく。
私は何度か深呼吸をしながら、落ち着け。落ち着けと自分に言い聞かせる。
そしてこのユウマという男に尋ねたい事が出来た。
私は、貴族であるが魔法が使えない。
だからこそ、領民を守るために騎士となった。
だが、騎士や兵士というのは女には厳しいところだ。陰口を叩かれた事もあるし、ほかの貴族からは嫁ぎ先がないから騎士となったと揶揄する者もいたくらいだ。
この男から見て、今の私の立場、姿はどう映るのだろうか?
とても気になる。
「……ユウマは、女が騎士をしてることをどう思う?」
さて、ユウマという男は何と返してくる?
だが、またしても私の予想を超える答えをユウマは返してきた。『そうですね。憧れると思います』とユウマが言ってきた時、私にはユウマの言葉を聞くことが出来たが理解が出来ずにいた。それでも時間が経てば実感として湧き上がってくる。
聞き間違いではないのだろうか?
「憧れる?」
私は、確認の意味も込めて改めて尋ねた。
すると彼は、私をまっすぐに見て語りかけてきた。
「はい、自分の好きな職業についてそれを信念として貫き誰かを守る姿は騎士としての鑑ではないでしょうか?俺はそういう人をカッコいいと思いますし素敵だと思います」
顔が真っ赤になっていくのを止められない。
心臓の鼓動が旋律を奏でていく。
私が選んだ道は間違いではないんだよと肯定された事が、とてもうれしい。
いつの間にか、喉が渇いていた。
何度か咳をして誤魔化す。
「それでは、ユウマさ……ユウマとやら一つ聞きたいのだが、この村を本来治める村長一家からの話ではこの村には目の前にあるような防壁があるとは聞いていなかったのだが、これはなんなのだ?」
いけない、いけない。つい、侯爵令嬢の話し方に戻るところであった。
どれだけ私は同様してしまってるのかしら……じゃなくて!動揺してるんだ!
「はい、実は俺が作りました」
ふふふ、ユウマはずいぶんと面白いやつのようだ。。
「なるほど……私はあまり冗談は好きではないと言う事を理解してるな?それとも私を試しているのか?」
村を囲うような巨大な壁を一人で作れる訳がない。
やはり私を女性だと思って、舐めているのかもしれないな。
「エメラダ様、見ててください」
それだけをユウマが言うと、その場にしゃがみ両手で地面を触れた。
それと同時に、50メートルはあると思われる川を越える橋が出来上がっていく。
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