【書籍化作品】無名の最強魔法師
花の都ローランへの招待
西北西の方角へ帆馬車を走らせ始めてから数分後に、草原にはポツリポツリと高さ30センチほどの薔薇に似た赤い花が咲くようになった。
厳密に言えば、赤い花ではあるが縁の部分が淡く青い。
「ユリカ、この花が?」
「はい、この花がメモリーズ・ファミリーです」
ユリカが欠伸をしながら答えてきた。
ここ一週間ほど、移動続けとはいえ先ほどまで目が冴えていたユリカとは思えないほど目がトローンと寝むそうにしている。
「これは、は止めに向かった方がいいかもな……」
俺は馬の手綱を強く握ると帆馬車を引いている馬を少しだけ早く走らせるようにした。
周囲の【メモリーズ・ファミリー】が増えていき、草原の草の割合が花の方が増えた頃――ようやく視線の先に城壁が見えてきた。
「ユリカ、城壁が見えてきたぞ」
「……は……い……」
どうやらユリカは、半分寝ている様子。
俺は仕方なく城壁に辿りついた後に、帆馬車を城壁に沿って走らせて入り口を探す。
思ったよりも城壁が長く高い。
10分ほど走らせたところで、ようやく城壁内部に繋がる道が見えてくる。
俺は、少しだけ安堵し帆馬車を城壁内部に繋がる道へと勧めると思ったよりも風化していない門が目の前に現れた。
「ずいぶんと立派な作りだな……」
俺は帆馬車から下りて、城壁内部に繋がる扉を見上げる。
高さは5メートル近いだろうか?
幅も同じくいらいはありそうだ。
扉を何度か叩くと金属音が返ってくる。
「この扉、全部が金属で出来ているのか?」
俺は驚きを禁じ得ない。
この世界の製鉄技術は、そこまで高くはない。
せいぜい中世ヨーロッパに届くか届かないかくらいであり、これほどの巨大な金属製の扉を作るのは無理だと思う。
まぁ……俺の知った事じゃないな。
俺は、右手を扉の方へ向けて魔法を行使するための魔法式を頭の中で組み立てて行く。
「お待ちください!」
魔法を発動させようとしたところで、壁の上の方から声をかけられた。
上を見ると、そこには何人もの人の姿が見て取れる。
「貴殿らは何のために【花の都ローラン】へと来られたのか! 説明を願いたい!」
話しかけてきたのは茶色い髪を三つ編みに結んだ眼鏡をかけた女性。
眼鏡という知識は、俺の持つ知識の中には存在していたが実物を見るのは初めてであった。
「実は……旅の途中だったが、食料が尽きてしまって困っていたんだ。そしたら城壁が見えたので何かあればと思いここにきたんだ」
「……」
俺の言葉を聞いた三つ編み眼鏡はしばらく考え込んでいると。
「分かりました。数日で良ければ逗留を許可しましょう。そこ変わり労働をしてもらうことが条件になりますがいいでしょうか?」
「仲間達は、弱り切ってるから俺一人でいいなら条件を呑もう」
「……分かりました。それは仕方ないですね……」
俺の病人を働かせるつもりか? ああーん! という交渉により上手く話が纏まったようだ。
あれ? でも6人分働かされる事って無いよな? 無いよね?
心の中で一人突っ込んでいいると。
両開きの鉄の扉が少しずつ開いていく。
そして内部が見れるようになると男達が出てきて帆馬車を取り囲んできた。
男達は全員、【海の港町カレイドスコープ】や【フィンデイカ】では見たことがない独特の服を着ている。
人数は17人。
男一人を相手には、多すぎる人数だが――。
「彼らは気が立っているのです。お許しを……」
男達の間から出てきたのは、やはり独特な服を着こなしている先ほどの三つ編み眼鏡であった。
「旅のお方、身分証は御持ちで?」
「ああ、あるぞ」
俺は冒険者ギルドカードを女に渡す。
「名前はユウマさんで年齢は16歳ですね」
「ああ、そうだ」
「家名などは?」
「いや、特にないが? 何が不都合な事でもあるのか?」
「いえ、それよりもフィンデイカという地名はどちらにあるのでしょうか?」
「地名じゃなくて村なんだけどな」
「そうですか……あとは、この冒険者という内容なのですが……」
「ああ、それは……」
俺は何と説明していいか迷ってしまう。
どうやら、この【花の都ローラン】は、あまり外界とは交流がないように思えた。
その事から何と説明していいのやら……。
「冒険者ギルドの方でしたか」
「へ? 知っているのか?」
「はい、もちろんです。このエルアル大陸に来られたユウティーシアさんが作られたギルドですよね?」
「そ、そうだな……」
ユウティーシアという人物を俺は知らないんだがとりあえず適当に話を合わせておく事にしよう。
余計な事を言って疑われても困るからな。
「分かりました。冒険者ギルドのSランク冒険者の方でしたら大歓迎です。どうぞ中へお入りください」
俺は黙って頷く。
すると三つ編み眼鏡は俺を見てきて。
「紹介が遅れました。私の名前はラン・フェイフォンと申します。ランと気軽に呼んでください」
「ああ、俺の名前はユウマと呼んでくれていいぞ!」
ランは俺の言葉に頷いて見せた。
「それじゃ帆馬車を城壁内に入れてもいいか?」
「はい、どうぞ……ご案内いたします」
俺はランの案内に従い帆馬車を操り城壁の門を潜りぬける。
すると目の前には開けた大通りが存在しており大勢の人間が行き通う姿が目に飛び込んできた。
厳密に言えば、赤い花ではあるが縁の部分が淡く青い。
「ユリカ、この花が?」
「はい、この花がメモリーズ・ファミリーです」
ユリカが欠伸をしながら答えてきた。
ここ一週間ほど、移動続けとはいえ先ほどまで目が冴えていたユリカとは思えないほど目がトローンと寝むそうにしている。
「これは、は止めに向かった方がいいかもな……」
俺は馬の手綱を強く握ると帆馬車を引いている馬を少しだけ早く走らせるようにした。
周囲の【メモリーズ・ファミリー】が増えていき、草原の草の割合が花の方が増えた頃――ようやく視線の先に城壁が見えてきた。
「ユリカ、城壁が見えてきたぞ」
「……は……い……」
どうやらユリカは、半分寝ている様子。
俺は仕方なく城壁に辿りついた後に、帆馬車を城壁に沿って走らせて入り口を探す。
思ったよりも城壁が長く高い。
10分ほど走らせたところで、ようやく城壁内部に繋がる道が見えてくる。
俺は、少しだけ安堵し帆馬車を城壁内部に繋がる道へと勧めると思ったよりも風化していない門が目の前に現れた。
「ずいぶんと立派な作りだな……」
俺は帆馬車から下りて、城壁内部に繋がる扉を見上げる。
高さは5メートル近いだろうか?
幅も同じくいらいはありそうだ。
扉を何度か叩くと金属音が返ってくる。
「この扉、全部が金属で出来ているのか?」
俺は驚きを禁じ得ない。
この世界の製鉄技術は、そこまで高くはない。
せいぜい中世ヨーロッパに届くか届かないかくらいであり、これほどの巨大な金属製の扉を作るのは無理だと思う。
まぁ……俺の知った事じゃないな。
俺は、右手を扉の方へ向けて魔法を行使するための魔法式を頭の中で組み立てて行く。
「お待ちください!」
魔法を発動させようとしたところで、壁の上の方から声をかけられた。
上を見ると、そこには何人もの人の姿が見て取れる。
「貴殿らは何のために【花の都ローラン】へと来られたのか! 説明を願いたい!」
話しかけてきたのは茶色い髪を三つ編みに結んだ眼鏡をかけた女性。
眼鏡という知識は、俺の持つ知識の中には存在していたが実物を見るのは初めてであった。
「実は……旅の途中だったが、食料が尽きてしまって困っていたんだ。そしたら城壁が見えたので何かあればと思いここにきたんだ」
「……」
俺の言葉を聞いた三つ編み眼鏡はしばらく考え込んでいると。
「分かりました。数日で良ければ逗留を許可しましょう。そこ変わり労働をしてもらうことが条件になりますがいいでしょうか?」
「仲間達は、弱り切ってるから俺一人でいいなら条件を呑もう」
「……分かりました。それは仕方ないですね……」
俺の病人を働かせるつもりか? ああーん! という交渉により上手く話が纏まったようだ。
あれ? でも6人分働かされる事って無いよな? 無いよね?
心の中で一人突っ込んでいいると。
両開きの鉄の扉が少しずつ開いていく。
そして内部が見れるようになると男達が出てきて帆馬車を取り囲んできた。
男達は全員、【海の港町カレイドスコープ】や【フィンデイカ】では見たことがない独特の服を着ている。
人数は17人。
男一人を相手には、多すぎる人数だが――。
「彼らは気が立っているのです。お許しを……」
男達の間から出てきたのは、やはり独特な服を着こなしている先ほどの三つ編み眼鏡であった。
「旅のお方、身分証は御持ちで?」
「ああ、あるぞ」
俺は冒険者ギルドカードを女に渡す。
「名前はユウマさんで年齢は16歳ですね」
「ああ、そうだ」
「家名などは?」
「いや、特にないが? 何が不都合な事でもあるのか?」
「いえ、それよりもフィンデイカという地名はどちらにあるのでしょうか?」
「地名じゃなくて村なんだけどな」
「そうですか……あとは、この冒険者という内容なのですが……」
「ああ、それは……」
俺は何と説明していいか迷ってしまう。
どうやら、この【花の都ローラン】は、あまり外界とは交流がないように思えた。
その事から何と説明していいのやら……。
「冒険者ギルドの方でしたか」
「へ? 知っているのか?」
「はい、もちろんです。このエルアル大陸に来られたユウティーシアさんが作られたギルドですよね?」
「そ、そうだな……」
ユウティーシアという人物を俺は知らないんだがとりあえず適当に話を合わせておく事にしよう。
余計な事を言って疑われても困るからな。
「分かりました。冒険者ギルドのSランク冒険者の方でしたら大歓迎です。どうぞ中へお入りください」
俺は黙って頷く。
すると三つ編み眼鏡は俺を見てきて。
「紹介が遅れました。私の名前はラン・フェイフォンと申します。ランと気軽に呼んでください」
「ああ、俺の名前はユウマと呼んでくれていいぞ!」
ランは俺の言葉に頷いて見せた。
「それじゃ帆馬車を城壁内に入れてもいいか?」
「はい、どうぞ……ご案内いたします」
俺はランの案内に従い帆馬車を操り城壁の門を潜りぬける。
すると目の前には開けた大通りが存在しており大勢の人間が行き通う姿が目に飛び込んできた。
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