【書籍化作品】無名の最強魔法師
過ぎ去りし夏の思い出(前編)イノンside
今日は、いつものように川に足を浸けて私は呆けていた。
同年代の男の子がいないからやる事がない。
それに、夏は暑いしおうちにいても私が手伝えることはなにもないし。
「イノン! また、こんなところまで来ていたの?」
振り向くと、そこにはお姉ちゃんが立っている。
お姉ちゃんと私は一緒に生まれた。
そういうのを双子と言うみたい。
市場でリンゴを売ってるおばさんが言っていた。
「だってー。暑いんだん」
流れている川はひんやりとして冷たい。
「まったくイノンは……」
お姉ちゃんも、私の横に座ると吐いていた靴を脱いで川に足を浸した。
「気持ちいい?」
「ん? そうね。気持ちいいわね」
お姉ちゃんは、同じ10歳なのにそうとは思えないほど綺麗。
長く艶のある金色の髪は腰まで伸びていて太陽の光の反射して光り輝いている。
頭上には天使の輪っかが出来ていて顔だって、鼻筋がとおっていて眉も長くて目も大きい。
将来は絶対に美人になると誰もが言っていた。
その反面、私は髪を伸ばそうとしてもなかなか伸びないし艶も無い。
「はぁ……」
「イノン、どうしたの?」
「世の不条理に絶望していただけなの」
「ふふ、どこでそんな難しい言葉を覚えてくるのかしらね」
お姉ちゃんは笑いながら川の中に足を入れて河原に寝転んでいる私の頭の上に手を乗せるとやさしく撫でてきた。
「ねえ? お姉ちゃん……魔法が使える事は秘密にしないと駄目なの?」
私の言葉にお姉ちゃんは少しだけ真剣な顔になると。
「ええ、だって周りを見ても魔法が使える人なんて限られるでしょう?」
「う、うん……」
「人は特別な存在が怖いから、人は特別な存在を恐れるから、人は特別な存在を疎むから……だから、私達が魔法を使える事は秘密にしないと駄目。イノン、分かった?」
お姉ちゃんは少しだけさびしそうな目をして私に語りかけてきた。
お姉ちゃんはいつも、色々な事を考えて私にお話してくれる。
お姉ちゃんは何だって出来るし、お父さんとお母さんからの信頼もある。
でも……だからこそ……。
「お姉ちゃんはすごいよね……お父さんとお母さんのお手伝い出来るし……計算だって出来るし、お店の手伝いだって出来るし……」
私が、ここにいるのは川まで来て毎日、時間を潰しているのは暑いだけじゃない。
私の両親は、旅人用の宿を経営していて夏場は稼ぎ時。
でも、私は物覚えが悪いからお店の手伝いが出来ないから迷惑がかからないように川まで来てるだけ。
私の愚痴をお姉ちゃんは、川の中に浸した足をゆっくりと動かしながらジッと聞いていた。
「私、きっと才能がないんだよ。お姉ちゃんみたいに何でも出来る才能が私欲しかったなぁ」
「イノン……」
私の言葉を紡いで振り返ってきたお姉ちゃんの表情は、なんだかとても寂しそう一瞬見える。
お姉ちゃんは、小さく息を吐くと。
「イノン……誰しも最初から何でも器用にこなせるなんてそんな事はないわ。私だって……」
「そんな事あるよ! だってお姉ちゃんは何だって出来るもん!」
「イノン……」
お姉ちゃんの話は難しくて良く分かんない。
お父さんやお母さんに教えられた宿のお仕事だってお姉ちゃんはすぐに出来るようになるのに、私はいつまで経ってもできない。
こんなの……一緒に生まれてきたのに不公平だ。
近所の人だって言ってた。
私は出涸らしの残りモノだって。
だから私には才能がないんだ。
出来る人間に私の気持ちが分かるわけがないんだ。
「……お家に帰りましょう。そろそろ夕飯の時間だからね?」
「うん……」
私は、モヤモヤした気持ちのまま立ちあがる。
お姉ちゃんは濡れた足を風の生活魔法を使い乾かしてくれた。
魔法の才能もお姉ちゃんはある。
何でも持ってる。
私は何も持ってない。
使える魔法と言えば……。
一人考えていたところで手を強く握りしめられた。
「ほら! いつまでも思い詰めた顔をしないで帰りましょう!」
「うん……」
同年代の男の子がいないからやる事がない。
それに、夏は暑いしおうちにいても私が手伝えることはなにもないし。
「イノン! また、こんなところまで来ていたの?」
振り向くと、そこにはお姉ちゃんが立っている。
お姉ちゃんと私は一緒に生まれた。
そういうのを双子と言うみたい。
市場でリンゴを売ってるおばさんが言っていた。
「だってー。暑いんだん」
流れている川はひんやりとして冷たい。
「まったくイノンは……」
お姉ちゃんも、私の横に座ると吐いていた靴を脱いで川に足を浸した。
「気持ちいい?」
「ん? そうね。気持ちいいわね」
お姉ちゃんは、同じ10歳なのにそうとは思えないほど綺麗。
長く艶のある金色の髪は腰まで伸びていて太陽の光の反射して光り輝いている。
頭上には天使の輪っかが出来ていて顔だって、鼻筋がとおっていて眉も長くて目も大きい。
将来は絶対に美人になると誰もが言っていた。
その反面、私は髪を伸ばそうとしてもなかなか伸びないし艶も無い。
「はぁ……」
「イノン、どうしたの?」
「世の不条理に絶望していただけなの」
「ふふ、どこでそんな難しい言葉を覚えてくるのかしらね」
お姉ちゃんは笑いながら川の中に足を入れて河原に寝転んでいる私の頭の上に手を乗せるとやさしく撫でてきた。
「ねえ? お姉ちゃん……魔法が使える事は秘密にしないと駄目なの?」
私の言葉にお姉ちゃんは少しだけ真剣な顔になると。
「ええ、だって周りを見ても魔法が使える人なんて限られるでしょう?」
「う、うん……」
「人は特別な存在が怖いから、人は特別な存在を恐れるから、人は特別な存在を疎むから……だから、私達が魔法を使える事は秘密にしないと駄目。イノン、分かった?」
お姉ちゃんは少しだけさびしそうな目をして私に語りかけてきた。
お姉ちゃんはいつも、色々な事を考えて私にお話してくれる。
お姉ちゃんは何だって出来るし、お父さんとお母さんからの信頼もある。
でも……だからこそ……。
「お姉ちゃんはすごいよね……お父さんとお母さんのお手伝い出来るし……計算だって出来るし、お店の手伝いだって出来るし……」
私が、ここにいるのは川まで来て毎日、時間を潰しているのは暑いだけじゃない。
私の両親は、旅人用の宿を経営していて夏場は稼ぎ時。
でも、私は物覚えが悪いからお店の手伝いが出来ないから迷惑がかからないように川まで来てるだけ。
私の愚痴をお姉ちゃんは、川の中に浸した足をゆっくりと動かしながらジッと聞いていた。
「私、きっと才能がないんだよ。お姉ちゃんみたいに何でも出来る才能が私欲しかったなぁ」
「イノン……」
私の言葉を紡いで振り返ってきたお姉ちゃんの表情は、なんだかとても寂しそう一瞬見える。
お姉ちゃんは、小さく息を吐くと。
「イノン……誰しも最初から何でも器用にこなせるなんてそんな事はないわ。私だって……」
「そんな事あるよ! だってお姉ちゃんは何だって出来るもん!」
「イノン……」
お姉ちゃんの話は難しくて良く分かんない。
お父さんやお母さんに教えられた宿のお仕事だってお姉ちゃんはすぐに出来るようになるのに、私はいつまで経ってもできない。
こんなの……一緒に生まれてきたのに不公平だ。
近所の人だって言ってた。
私は出涸らしの残りモノだって。
だから私には才能がないんだ。
出来る人間に私の気持ちが分かるわけがないんだ。
「……お家に帰りましょう。そろそろ夕飯の時間だからね?」
「うん……」
私は、モヤモヤした気持ちのまま立ちあがる。
お姉ちゃんは濡れた足を風の生活魔法を使い乾かしてくれた。
魔法の才能もお姉ちゃんはある。
何でも持ってる。
私は何も持ってない。
使える魔法と言えば……。
一人考えていたところで手を強く握りしめられた。
「ほら! いつまでも思い詰めた顔をしないで帰りましょう!」
「うん……」
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コメント
ノベルバユーザー322977
気にしたら負けだぞ?
望月冬夜
吐いていた靴のはいていたと言う漢字が間違ってませんか?