【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

家族と記憶の絆(後編)

 死の都と化したローランの中を俺は走る。

 すると両脇の朽ちた家々から人の屍に寄生した魔物が行く手を阻んできた。
 俺は、頭の中で公式を組み魔法を発動させようしたが魔法が一切発動しない事にきがつく。

 【探索】の魔法は発動するのに普通の攻撃魔法が発動しない。
 俺はその場で足を止める。

 すると魔物が俺に襲いかかってくる。
 体を反転させながら攻撃を避けつつ、【身体強化】の魔法を発動。
 それにより、海の迷宮リヴァルアで強化された細胞で構築されている俺の肉体はさらに強化され裏拳の一撃で魔物の体を粉砕する。

「肉体強化と探索の魔法は発動可能なのか? ということは――」

 俺は地面に手を当てて練成魔法を発動させようとするが魔法が発動することはない。

「なるほど……つまり大気を含んだ魔力に干渉する魔法系は一切使えず自身の肉体を利用とした電波として発することで利用可能な【探索】、そして自らの肉体つまり内面で強化する【身体強化】の魔法は使う事が可能と……」

 だいたい、この世界の在り方が理解出来てきた。
 つまり、この世界は俺が住んでいる世界アガルタ、エルアル大陸とは違った構成をしているのだろう。
 目の前の数百にも及ぶ魔物は俺の様子を見て体を揺らしながら近づいてくる。

「攻撃魔法を封じたくらいで……俺に勝ったつもりか?」

 俺は近くの建物の柱を力任せに折り手に持つ。

「柱ミサイル!」

 俺は叫びながら近くの建物の軒先の柱や荷車を持ちあげては力任せに投げて道を切り開く。
 投げる材料は至るところにあるのだ。
 どうせ、廃屋だから手加減は必要ないだろう。
 俺は町の中央部に向かって走りながら、建物の建築素材や荷車を投げて魔物をなぎ倒しながら進んだ。

 そして、1分ほどで巨大な建築物である霊廟の前に辿りつく事ができた。
 そこには巨大な木が生えており、セイレスとセレンが捕まっていた。

 二人とも気を失っているように思えたが、セイレスはゆっくりと瞼を開けると俺が助けにきたことに気がついたのか体を動かしている。
 それに対してセレンはまったく体を動かそうせず、深い睡眠状態にあるようだ。 
 まるでリネラスやイノンの時と同じようだ。

「マ……マサカ……ボウケンシャギルドがワレのフッカツにキガツクトハ……ソレにコレホド……ヒジョウシキなボウケンシャを……ツカワストハ……ナ」
「何を言ってるのか分からないが、二人は返してもらったぞ?」
「ナニ?」

 俺は、すでにセイレスとセレンを二人とも助けだしていた。
 どうやら【身体強化】を極限まで引き上げた俺の動きは、目の前の魔物は見る事ができなかったようだな。

「バ……バカナ……」

 巨大な樹木の化け物は、体を揺らすと光を放ち小さくなっていく。
 そして光が消えると、そこにはラン・フェイフォンが立っていた。

「この私が見きれない動きなんて信じられません」

 俺はラン・フェイフォンを【探索】の魔法を発動させ敵性認識である赤へと切り替えた。
 すると無数の赤い光点が俺に向かってくるのを理解し、その場から跳躍する。
 セイレスとセレンを抱えている状態での戦闘は、かなりの不利。

 俺はすぐに、ユリカが待っている帆馬車の方へ向かって走る。

「え? 戦うんじゃない……「戦うか! こんな状態で戦うなんてバカのすることだ!」……」

 俺はラン・フェイフォンに、言いきるとその場から離脱する。
 必死に俺を追って来てるようだが、速度を抑えてるとは言っても俺の動きを見きれない程度の奴に追いつかれるはずもなく。

「ユ。ユウマさん?」

 ユリカが戻ってきた俺に驚いている。

「すぐに出立!」
「は、はい!」

 帆馬車の中に寝かせたセレン。
 セイレスは黒板に文字を書いて俺に見せてくる。
 そこには――。









 

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