【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

エルフガーデン(14)

「気持ちは嬉しいんだが、仲間が待っているからな。それに、お前たちと違って戦闘要員でもないし――」

 俺の言葉にサマラ達が不機嫌そうな表情を見せるが、エルフ達は集落を作って生きてるのに比べて、リネラス達や、リンスタットさんが面倒を見ている子供達は自ら身を守る術を持っていない。

 そんな状態で、あまり長く留守をしていると不測の事態に対応できない。
 それに、俺の魔法も探索範囲がそこまで距離があるわけでもないからな。

「それでしたら、問題はないかと――」
「問題ない?」

 俺の言葉に、エルフ達が一斉に頷いてくる。

「はい、エルフガーデンの魔物は女には危害を加える事はしませんので――」
「どういうことだ?」

 エイフィルの言葉に、俺は疑問を覚える。
 そこで、思い出す。
 たしか。エルフガーデンに続く渓谷であるエルブンガストを取っている際に、木の魔物が種を飛ばしてきたが、その時にリネラスからエルフガーデンの魔物は男性しか狙っていなかったと聞いていたが――。
 それは木の魔物だけじゃない?

「つまり――木の魔物だけではなく、それ以外の魔物たちも男たちにしか攻撃を仕掛けてこないと言うことか?」
「はい!」

 エイフィルが元気よく俺の質問に答えてきた。
 俺は、エイフィルの言葉に溜息しかでない。
 つまり実力が無いとエルフガーデンから出る事すら男は許されないと――。
 そんなの牢獄としか思えない。

 まぁ、それよりも――しばらくはこの集落の近辺で暮らすからな。
 ある程度は交流を持っておいた方がいいだろう。

「わかった。それでは食事だけ頂こうとしようか?」

 俺の言葉に「よかったです! すぐに繁じゃなくて、年若いエルフ達に声をかけてきます!」と、エイフィルは答えてくるとすぐに集落がある樹上に伸びる木の側面に建てつけられた階段を上っていく。
 他の3人のエルフもエイフィルに着いていき――。

「ユウマさん、申し訳ありません。無理やり誘ってしまったようになってしまって……」

 エイフィル達の背中を見送ったあと、サマラが不安な表情で横から話しかけてきた。
 別にサマラが悪いわけでもないからな。

「いや、気にしなくていい。それよりも仲間たちには――」
「あ! そ、そうですね――リネラス達には、仲間を行かせて伝えておきましょう」
「ああ、すまないな」

 俺の言葉を聞いたサマラは「いえ、それでは案内いたします」と、俺の前を歩きだす。
 サマラは大樹の樹上へと延びる大樹側面に差してある板へ足をかけて昇っていく。

「なあ。サマラ――」

 大樹の側面の板に足を載せたままサマラは、俺の方を振り返ってくると「なんでしょうか?」と尋ねてきた。

「いや、なに大樹の側面に差してある木の板だが、これって木に影響はないのか?」
「え? ああ、それですか」

 サマラが俺の前で、大樹に手を当てると【階段よ生えろー】と魔法らしきものを言うと大樹の側面から木の板――階段がせり出してきた。

「このように私達エルフは、精霊眼を持っていますのでエルフガーデン内においては言葉だけで魔法を発動させる事ができます。それに、大樹にお願いして階段を作っているので大樹には影響はないのです」
「そ、そうか……」

 結構、エルフってチートだな。
 ――っていうかエルフガーデン限定か……。

「なあ、エルフガーデン以外では魔法を使ったことはないのか?」
「エルフガーデン内に住まうエルフは基本、エルフガーデンからは出ませんし詳しくは――」
「そうか……」

 つまりエルフ達はエルフガーデンから出て、魔法を使ったことがない?
 それとも……。
 ただ、そう考えると遠距離通信魔法が使えていたセイレスの存在が――。


「ユウマさん、どうかいたしましたか?」

 サマラは、大樹側面から生やしていた木の階段を消しながら俺に話しかけてきた。
 思考したことで突然、無言になってしまった俺を心配してきたかのように、眉元を潜めている。

「いや、なんでもない。それにしても樹上まではかなり距離があるな――」
「はい、ですが……そろそろ到着いたしますので」

 サマラの言葉とおり2分ほど、大樹側面から生えている木の階段を上るとそこには――。
 昼を過ぎてるとは言え、50メートルを超える大樹の上には町が存在していた。
 多くの木々の間を繋げるように、幅3メートルほどの木で造られた道や、2階建ての家々が存在している。
 規模としては、2百棟ほどの建物があることから樹上だけではなく、樹上以外にも家々があることを考えると――。

「ユウマさん、私達は、ここを【樹上の妖精庭園エルフガーデン】と、呼んでいます」

 サマラは、俺の目をまっすぐに見ながら語りかけてきた。




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