【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

森の迷宮エルフガーデン攻略(5)

「「ええー……」」

 二人? 2匹揃ってハモって抗議の声を上げてくるが、知ったことか!
 とりあえず、俺はさっさと迷宮攻略を終わらせるために【探索】の魔法で調べ終わっている階段の方へと歩みを進め立ち止り後ろを振り返る。

 2匹がピッタリと付かず離れずついてくる。
 しかも擬人化しておらず5メートルを超えるクワガタとカブトムシのままだ。
 おかげで俺の命を狙っているのでは? と思ってしまう。

「お前たちは、どうしてついてくるんだ?」

 溜息混じりに話しかけると、擬人化し「「名前を交換しあうということは昆虫世界では番になったということですので!」」と答えてくる。

「悪いが番になった覚えも、何もないからな!」
「そんなああああ」
「主様のいけずです!」

 こいつら……一体なんなんだ……。
 だが、さすがに言葉が通じて敵対していない相手を攻撃して倒すのはな……。
 仕方なく俺は歩きだす。
 そうすると2匹とも元の大きさ5メートルを超える昆虫になって追いかけてくる。

 ただ、一つだけ気になるのは、無数の灰色の光点――おそらく魔物だと思うが、それらの光点がある一定まで近づいてくると離れていくのだ。
 もしかしたら、後ろの2匹の巨体を見て逃げ出している可能性がある。



 ――20分程経過。

「ようやく辿りついたな……」

 後ろの巨大生物が追いかけてくるのが気になって気になって仕方が無かったが、階段を降りれば魔物は追いかけてこないからな。

 スタスタ――。

 俺は階段を降りる。
 すると後ろからブーンと音を鳴らして何かが飛んでくる音が聞こえてくる。
 まさか? と思い俺は後ろを振り向く。
 すると、小さくなったクワガタとカブトムシの姿が――。
 手のひらサイズになっている事に驚いたが、何より階段を魔物が下りられることにもっとびっくりした。

 まぁ、ついてくるだけなら気にしなくていいだろと俺はもう結論付ける。
 いちいち気にしても仕方ないからな。

「しかし……暗いな――」

 階段を降り切ると、そこは真っ暗な暗闇であった。
 大気の原子構築をマグネシウムに変換し燃焼させるイメージを頭の中で行う。
 そして、【光】を発生させる魔法を発動。

 俺の発動した魔法は【焼夷弾】と同等以上の威力を発揮し真昼のように周囲の光景を映し出す。

「これは……」

 巨大な木々が存在していた。
 迷宮内に巨大な森が有るのにも驚いたが――。
 そこで、さっきまで聞こえていた羽音……カブトムシとクワガタの音が消えていたことに気が付く。

 すぐに【探索】の魔法を発動。

「2匹の緑色の光点はなし……だが、灰色の光点が無数に存在している」

 俺は一人呟きながら灰色の光点の方角へ視線を向け眉をひそめる。
 そこには10メートルを超えるフクロウが木の枝の上に鎮座しており何かを呑み込んでいた。
 間違いない……。
 そしてフクロウは俺へと突っ込んでくる。

「フクロウって肉食だったか?」

 俺は突っ込んでくるフクロウに向けて右手を向け【風刃】の魔法を発動。
 フクロウを真っ二つに斬り倒した。
 そして中からは、人型になったクワガタとカブトムシが出てくる。すると「主様との旅楽しかったです……」とか「ぐっどらっく……」と言い残し光となって消えていってしまった。
 正直、何と答えていいか分からない。
 一体、彼女たちというか2匹は一体なんだったのか? 謎は深まるばかりだ……。
 ただ一つだけ言えることは、この迷宮はエリンフィートの性格を反映してるような酷い仕様の迷宮だと言うことが段々と分かってきた。

「まさか……この迷宮を作ったのってエリンフィートで設定ミスったから俺に何とかしてもらおうとか考えてるとか、そんなんじゃないよな?」

 俺は、ふと脳裏に横切った事を口にしたが……。

「ありえそうで、やだな……」

 まったく、これから先が思いやられるな。
 次の階層は6階層か――。
 階段までの距離は30分ほどだな。


 

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