【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

従属神襲撃(3)

 やはりと言っていいのか……作った人間の特性に合わせて迷宮が作られているようだ。
 この場合、俺の魔力に合わせて迷宮が作られたと言うことになるのか?

「それにしても――」

 俺はどこまでもまっすぐに続く石のみで作られた通路を見るが【海の迷宮リヴァルア】で超人的な身体能力を身に着けたにも関わらず先を見通す事ができない。

 俺はすかさず、【探索】の魔法を発動。

「くそっ! やっぱり……」

 探索の魔法が何かしらの力により妨害されている。
 そのおかげで、リネラスの反応を確認することができない。
 ただし、通路は一本道。
 本気を出せばすぐにリネラスに追いつく事は可能だろう。

 【身体強化】の魔法を発動。

 超人的な身体能力をさらに底上げして走り始める。
 一歩踏み込んだだけで迷宮内の石畳にヒビが入るが、今は何が出るか分からないダンジョンの中に非力なリネラスがいるという非常事態だ。
 気にしてる余裕はない。

 数歩走った時点で、俺の移動速度は壁を破壊した音を――衝撃波を発した瞬間音速を突破した。
 わずが数秒――迷宮内を走って気が付いた事はある程度、走ると迷宮内の壁の色が変わると言うところだ。

 しかも、どれだけ走っても先に進むことが出来ない。

「空間がループしてるのか……?」

 ダンジョンの特性は、作った人間の影響をもろに受けると――。
 いやいや――俺は、こんなダンジョンみたく性格おかしくないからな!
 さて、どうしたものか……。
 正攻法でダメな場合は、頭を使って解決するしかない。

「うらあ!」

 掛け声と共にダンジョンの壁を力一杯殴りつける。
 俺に殴りつけられた壁は、一瞬の抵抗すら出来ず粉々に砕け散る。
 俺の下した作戦は、正規ルートを通ってループという罠に引っかかるなら壁をぶち壊しながら進めばいいじゃないか! と言う古今東西どこでも使われる迷った時に、とりあえずやってみろという技だ。

 壁を破壊して進む。
 壁を壊して進む。
 壁を壊して――。

 何枚の壁を壊したか分からなくなったところで、最後の壁が外側に吹き飛び大きな広間に到着した。
 そこで【探索】の魔法に反応があった。
 どうやら通路には、【探索】系統の魔法を阻害するような効果がある何かがあったよう。

 リネラスらしき緑色の光点が表示されたことに俺は、苛立ちすぐに走って向かう。
 冒険者ギルドマスターであるリネラスにとってダンジョンというのは、どれだけ危険かくらいは分かっているはずだ。
 そんなところに足を踏み入れるなんて、自殺行為のなんにでもない。
 ましてや、一般人と身体能力が大差がなく魔法も使えないリネラスがダンジョンに踏み入れるなんて何を考えているんだ! と文句を言うところだ。

「まったく! あのバカ! あとで説教だ!」

 俺は、一人呟きながら走っていると目の前に3匹のワイバーンが姿を現した。
 10メートル程の大きさなのワイバーンであるが俺は焦る。
 一般人がワイバーンに襲われたら一たまりもないからだ。

 俺は、魔法式を頭の中でくみ上げ、空間が爆発する事象を想像する。

「俺の邪魔をするな! 【風爆】」

発動させた漢字魔法が、ワイバーンの中心部で発動し空気を強制的に圧縮していく。
もちろん、その圧縮率はとても高く、空を飛んでいたワイバーンで墜落してくる。
そして臨界点を超えた圧縮された大気は一瞬で開放された。

 開放された大気の渦は、【海の迷宮リヴァルア】で強化された超人的な肉体を【身体強化】の魔法でさらに強化したことで俺の肉体の防御力は通常のドラゴンのソレを遥かに凌ぐ。
 そして、密閉され限られた空間内に爆風が舞い起こり3匹のワイバーンは、衝撃波に耐え切れずに肉塊へと姿を変えた。

 そして、通路から広間に出たところで――。

 リネラスを現す緑色の光点が、消滅していることに気が付いた。
「くそがっ!」

 俺はリネラスの反応が途絶えたところへ走る。
 そこにいたのは――。

 30メートルを超す巨大な赤龍であった。




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