【書籍化作品】無名の最強魔法師
従属神襲撃(6)
リネラスの言葉が一瞬、理解できずにいた。
いつも、自分は悪くない! 世界が悪い! と言ってるようなリネラスが神妙そうな表情をして語りかけてくることに……嫌な予感が止まらない。
まるで、自分がこれから死ぬから今まで犯してきた罪を告白しようとしているように感じられて――。
「……いいから、聞いて――」
「いやいや、待てよ。いつものリネラスらしくないぞ? 何か問題が起きても相手のせいにして自分は悪くないと語ってくるのが俺の知ってるリネラスなんだが……」
「そうだよね――」
神妙そうな表情をしたまま、リネラスが薄っすらと微笑みながら笑いかけてくる。
「どこか痛い所とかあるのか? 言ってくれれば治せるし、リネラスらしくないぞ?」
「……ユウマの中の私ってどういう評価なのか――すごく気になるけど……」
「まあいい。自分でもよく分からない怪我とかも在るかも知れないからな……一応、治療を行うぞ?」
頭の中で人体図を思い浮かべ右手を翳し回復魔法を発動させようとしたところで、リネラスに、右手を掴まれた。
「リネラス?」
俺の言葉を聞いたリネラスは、ゆっくりと首を振ると「分かるんです。私の存在が……霧散していくのが……」と、弱々しく笑いかけながら語ってくる。
「何を言っているんだ? 存在が霧散する? 何を言ってるかまったく分からない」
リネラスの言葉が理解できない。
俺の腕の中にあるハーフエルフであるリネラスの体は、……その重さは確かで……抱いているその素肌から感じる暖かさは確かで――。
それなのに存在が霧散するという理由が、意味が俺には分からない。
「いいの……ユウマ。貴方の魔法……その在り方は他の魔法と違うから――。今なら、分かるの――。ユウマの魔法が他の魔法師とまったく違う魔法というのが……」
「今は、そんなこと、どうでもいいだろ? それより――」
「でもね、だからこそ分かるの。貴方が使う魔法――その在り方は……この世界の理と違う事が――だから、ユウマ……貴方の魔法では、私を救う事はできない」
弱々しいが――。
リネラスの言葉は、弱々しく掠れているが――。
俺の魔法では救えないという言質は重くて……。
「そう……ユウマの魔法って――魔力って……こんな……色をしているのね」
「リネラス、それは――」
そこでようやく気が付く。
リネラスの青い瞳が薄らと光りを帯びているのが――。
「うん……きっと、魔力眼だと思う。だってユウマのすごい魔力――ううん、これは一体……だから、みんなユウマに惹かれて…………」
「リネラス?」
「ごめんね。本当は、冒険者になったばかりの人にSランク冒険者が受けるような仕事を振ったらいけなかったの」
俺は否定的な意味合いを込めて首を振る。
「――そうか……」
リネラスの告白に相槌を打ちながら、俺は打開策を測る。
存在や魔力が抜けていくなら、その魔力を補充すればいいのではと考るが――。
「リネラス、俺の魔力を渡せば何とかなるんじゃないのか?」
「無理です。だって……ユウマの魔力は、私には合わないから……だから無理なんです」
「無理でも!」
「そんな顔をしないで……エルフガーデンを壊したのもユウマなんでしょう? 本当は知ってたから……」
「いや――それは……」
「エルフガーデンは、ユゼウ王国に住まう民は攻める事は出来ないんです。そう昔から決まっているんです。だから……王族もエルフガーデンに手出しをしなかったんです。だから……」
「だが他国の人間なら?」
「……それはないです。だって……信仰の対象であるエルフガーデンには、この国の神がいるとされていたんです。なのに、そんな聖地に他国の人間が入る事をユゼウ王国の人間が黙っているとは思えません……」
「そうか――」
迷宮が爆発した理由は分からないが、エリンフィートが俺が迷宮を破壊したと言っていたが、それは事実だったのか……。
「でも……そのエルフガーデンを破壊したことは伏せておいてください」
「どうしてだ?」
「だって……貴方が壊した知ったらエルフガーデンに住んでいたエルフが敵にまわってしまうかも知れないんです。それだったら……族長に罪を着せておきましょう」
「……そうだな――」
「――はい。そうすれば、私が居無くなった後でも、妹たちがエルフガーデンで迫害されるような事にはならなくなるとおも……い…………ま…………」
「リネラス?」
「……」
「おい! 冗談は――」
リネラスの右手が、回復魔法を発動させようとした時に俺の手を掴んでいた手が、力が抜けると同時に地面へと落ちて――。
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