【書籍化作品】無名の最強魔法師
託された思い(1)
「たしか、こっちの方向だったはず――」
自分の中の記憶――。
エルフガーデンの集落に、向かったときの記憶を――。
記憶の糸を手繰り寄せながら、必死に回りを注視しながら木々を横目で確認しながら走る。
焦りが心の中で生まれる。
昨日のサマラとリネラスのやり取りから見て、仲が良いというのは端から見ていて分かった。
それが、どうしてエルフガーデンに……最初に俺がエルフガーデンに来た時にサマラがリネラスに辛辣な言葉をかけたのか……。
その答えが――。
その問いかけが――。
妖精の儀にあるような気がしてならない。
それに、だ……リンスタットさんは言っていた。
エルフが妖精の眼を持たない事はないと――。
それがもし、本当なら……。
「くそっ!」
四肢の筋肉が軋む。
心臓の鼓動が、律動が聞こえてくるくらい早鐘を打っている。
「ハァハァハァ――」
たった10分――たった10分、走っただけで足が棒のようになっていた。
「なんで……」
俺は、呼吸を整えて森の中を走る。
そして気がつく。
「そういえば……」
現実世界では、冒険者ギルドであるエルフガーデン支部には、リネラスよりも小さな子どもたちがたくさんいた。
でも、この世界ではリネラスしか見ていない。
そして、リネラスは妹や弟とは血がつながっていないとも言っていた。
それはつまり――。
考えて走っていると、景色が切り替わったかのように、ざわめきが聞こえてきた。
必死に走っていたこともあり、顔を上げると。
「なんということ? エルフなのに……魔力を見る事ができないなんて――」
声が聞こえてきた方へ視線を向けると、そこにはリンスタットさんが立っていて。
リンスタットさんの声を聴いたリネラスはというと、リンスタットさんの方を見て「ママ?」と、言いながら近づいたが、リンスタットさんは、数歩下がっていた。
それはまるで、リネラスを――自分の娘を拒絶にしてるようにしか俺には思えない。
「できそこないのエルフよ!」
ざわめきの中から、中傷とも言える声が聞こえてきた。
その声が聞こえてきた方へ視線を向けると無数の人影を見ることが出来たが――。
人影には、顔がついていなかった。
人の形をした影のようなモノが見えるだけで――輪郭が存在しているだけで……。
「だから! 冒険者ギルドなんて!」
「そうよ! 冒険者ギルドなんて、そんなモノは必要なかったのよ!」
「コレは、神罰なのよ!」
「だから冒険者なんて入れなければ! 奴隷だけで良かったのに……」
次から次へと、囁きとは思えないほど大きな声が周囲に満ちていた。
そのどれもが、人間を――冒険者ギルドを……リネラスを中傷し否定し攻撃するような言葉であった。
「サマラちゃん?」
「リネラスちゃん……」
俺が見ている光景――。
それは……そのやりとりは――。
「えっと、私……」
5歳の子供が、今起きている事を理解できるわけがない。
だからこそ、リネラスとサマラは何が起きているのか理解できていない。
でも、リネラスは自分が、リンスタットさんに……母親に拒絶されたというのは、その幼い心でも敏感に察したのだろう。
だからこそ、リンスタットさんに近寄ろうとせずに、サマラに縋ろうとするように、近づいて――。
「――なっ!?」
思わず俺は叫んでしまう。
サマラを庇うように大人の女性がリネラスとサマラの間に割って入ると「この、化け物が!」と叫んで突き飛ばしたのだ。
突き飛ばされたリネラスは、頭を打ったのか額から血を流していたが――。
5歳の子供に手を指し延ばすようなエルフはいなかった。
すると、リネラスの足元に拳ほどの石が投げられていた。
次々と石が投げられて、最初は当たらない位置であったのに、肩に当たると体に当たるように石が投げられるようになった。
「お前たち! 自分が何をしているのか分かっているのか!?」
気が付けば叫んでリネラスの近くに走っていた。
そして飛んでくる石から庇おうとしたが、誰も俺に気が付くことも石に触れることもできずに守ることすらできない。
飛んでくる石は、俺をすり抜けてリネラスに当たる。
少しずつ傷が増えていく光景に苛立ちが募っていく。
そして――。
「何をしているのだ!」
リネラスを庇うように、エルフガーデンの集落の広場に現れたのはリネラスの祖父であった。
リネラスの祖父は周囲を見渡すと、「お前たちは、5歳の子供になんという仕打ちを――。愚かにもほどがある! このような事をして……お前たちは恥ずかしくないのか?」と叫ぶ。
その言葉を止めたのは、大き目の石であり――。
「おじいちゃん……?」
ゆっくりと倒れていくリネラスの祖父の姿をあざ笑うエルフ達――。
そして泣きじゃくるリネラスの姿――。
「そう、全ては私が悪かったの……」
感情を、まったく映さない虚ろな瞳で俺を見てきた幼女の姿をしたリネラスは贖罪の言葉を語ってきた。
自分の中の記憶――。
エルフガーデンの集落に、向かったときの記憶を――。
記憶の糸を手繰り寄せながら、必死に回りを注視しながら木々を横目で確認しながら走る。
焦りが心の中で生まれる。
昨日のサマラとリネラスのやり取りから見て、仲が良いというのは端から見ていて分かった。
それが、どうしてエルフガーデンに……最初に俺がエルフガーデンに来た時にサマラがリネラスに辛辣な言葉をかけたのか……。
その答えが――。
その問いかけが――。
妖精の儀にあるような気がしてならない。
それに、だ……リンスタットさんは言っていた。
エルフが妖精の眼を持たない事はないと――。
それがもし、本当なら……。
「くそっ!」
四肢の筋肉が軋む。
心臓の鼓動が、律動が聞こえてくるくらい早鐘を打っている。
「ハァハァハァ――」
たった10分――たった10分、走っただけで足が棒のようになっていた。
「なんで……」
俺は、呼吸を整えて森の中を走る。
そして気がつく。
「そういえば……」
現実世界では、冒険者ギルドであるエルフガーデン支部には、リネラスよりも小さな子どもたちがたくさんいた。
でも、この世界ではリネラスしか見ていない。
そして、リネラスは妹や弟とは血がつながっていないとも言っていた。
それはつまり――。
考えて走っていると、景色が切り替わったかのように、ざわめきが聞こえてきた。
必死に走っていたこともあり、顔を上げると。
「なんということ? エルフなのに……魔力を見る事ができないなんて――」
声が聞こえてきた方へ視線を向けると、そこにはリンスタットさんが立っていて。
リンスタットさんの声を聴いたリネラスはというと、リンスタットさんの方を見て「ママ?」と、言いながら近づいたが、リンスタットさんは、数歩下がっていた。
それはまるで、リネラスを――自分の娘を拒絶にしてるようにしか俺には思えない。
「できそこないのエルフよ!」
ざわめきの中から、中傷とも言える声が聞こえてきた。
その声が聞こえてきた方へ視線を向けると無数の人影を見ることが出来たが――。
人影には、顔がついていなかった。
人の形をした影のようなモノが見えるだけで――輪郭が存在しているだけで……。
「だから! 冒険者ギルドなんて!」
「そうよ! 冒険者ギルドなんて、そんなモノは必要なかったのよ!」
「コレは、神罰なのよ!」
「だから冒険者なんて入れなければ! 奴隷だけで良かったのに……」
次から次へと、囁きとは思えないほど大きな声が周囲に満ちていた。
そのどれもが、人間を――冒険者ギルドを……リネラスを中傷し否定し攻撃するような言葉であった。
「サマラちゃん?」
「リネラスちゃん……」
俺が見ている光景――。
それは……そのやりとりは――。
「えっと、私……」
5歳の子供が、今起きている事を理解できるわけがない。
だからこそ、リネラスとサマラは何が起きているのか理解できていない。
でも、リネラスは自分が、リンスタットさんに……母親に拒絶されたというのは、その幼い心でも敏感に察したのだろう。
だからこそ、リンスタットさんに近寄ろうとせずに、サマラに縋ろうとするように、近づいて――。
「――なっ!?」
思わず俺は叫んでしまう。
サマラを庇うように大人の女性がリネラスとサマラの間に割って入ると「この、化け物が!」と叫んで突き飛ばしたのだ。
突き飛ばされたリネラスは、頭を打ったのか額から血を流していたが――。
5歳の子供に手を指し延ばすようなエルフはいなかった。
すると、リネラスの足元に拳ほどの石が投げられていた。
次々と石が投げられて、最初は当たらない位置であったのに、肩に当たると体に当たるように石が投げられるようになった。
「お前たち! 自分が何をしているのか分かっているのか!?」
気が付けば叫んでリネラスの近くに走っていた。
そして飛んでくる石から庇おうとしたが、誰も俺に気が付くことも石に触れることもできずに守ることすらできない。
飛んでくる石は、俺をすり抜けてリネラスに当たる。
少しずつ傷が増えていく光景に苛立ちが募っていく。
そして――。
「何をしているのだ!」
リネラスを庇うように、エルフガーデンの集落の広場に現れたのはリネラスの祖父であった。
リネラスの祖父は周囲を見渡すと、「お前たちは、5歳の子供になんという仕打ちを――。愚かにもほどがある! このような事をして……お前たちは恥ずかしくないのか?」と叫ぶ。
その言葉を止めたのは、大き目の石であり――。
「おじいちゃん……?」
ゆっくりと倒れていくリネラスの祖父の姿をあざ笑うエルフ達――。
そして泣きじゃくるリネラスの姿――。
「そう、全ては私が悪かったの……」
感情を、まったく映さない虚ろな瞳で俺を見てきた幼女の姿をしたリネラスは贖罪の言葉を語ってきた。
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