【書籍化作品】無名の最強魔法師
託された思い(8)
「提案?」
俺の問いかけにリネラスは、頷いてくる。
頷いてくるが、その瞳は俺を見ることはない。
リネラスの視線は、目の前に居る自分の父親と幼いころの自分自身に向けられている。
「そう、私は何も知らなかった。エルフガーデンからお父さんと一緒に、フィンデイカの村に移住してきたときも、何も理解していなかった。ただ、お母さんから引き離された事がとても悲しくて……その原因になったと思っていた妹になった子たちが、私は嫌いだった」
リネラスの語りは、とても静かでいて感情を含んでいないように思えた。
ただ――。
「そうか……」
俺には、リネラスの言葉に。
リネラスの話に答える術がない。
それは、俺が生まれた時からこの世界ではない世界の知識を持っていたからだろう。
だから……。
人の思いを。
人の考えを。
人の気持ちを。
幼いころにどう考えて、どう思って、どう生きてきたのか。
その気持ちを共感することができない。
ただ、漠然とかわいそうだとしか思うことができない。
「エルフガーデンの族長エリンフィート様は、魔力を見る事が出来ない者をエルフの集落に置くことを良しとはしなかったの」
「なら……」
俺は一瞬、魔力を見ることが出来ないエルフが出た場合、自分の子であっても処理するようにエリンフィートが命令を下したのかと思ってしまう。
「大丈夫、ユウマが心配するようなことはないから」
ただ、俺の考えたことが分かったのかリネラスはすぐに語りかけてきたが、俺は今一、理解できずにいた。
それは、子ども一人で暮らしていけるほど、世界は甘くはないということ。
だからこそ、考え答えに至る。
「そうか。エリンフィートの提案というのは、その子どもをリネラスの母親に面倒を見させることだったのか……」
「うん」
頷き答えながらも、それでもリネラスは俺の方を見てくることはない。
ただ、ようやく理解できた。
おそらくリネラスが妹たちを憎んでいる原因は――。
「つまり、母親を取られたことに対して怒っているということか?」
「それは違うの」
俺の質問にリネラスは否定的な意味合いを含んだように頭を振りながら答えてくる。
「ねえ? ユウマ。あなたが自分の存在が否定されたのに、自分と同じ存在である子達が別の親に大事にされているのを見て、自分の親ですら面倒を見てるのを見てどう思う?」
「…………」
どう思う? と聞かれても俺には答えようが無い。
何故なら、前提条件が違うから。
たしかに両親は妹のアリアを大事にしていた。
ただ、俺も妹のアリアを大事にしていたし、両親が俺の事を厄介者のように扱っていたことも薄々と気がついてはいた。
子どもの体に意識と精神年齢を引きずられている事はあったが、それでも生来、俺の頭の中に存在していた知識は、ある一定の大人としての常識を与えていた。
だから、親に相手をされなくても俺は気にしなかった。
でも、それが普通の子どもだったとしたら――。
「答えられないよね? でもね? 自分が親に甘えられないのに他人が! 自分の親に甘えているの見せられて憎まない子どもは絶対いないと思う。だって! そうでしょう? 親に甘えたいのに! 拒絶されて! 拒否されて! 甘えられないなんて!! そんなのおかしいよね!? だから! 私は、憎んだの! 私と同じ魔力を見ることができない子が! お母さんに拒絶されなかったから、だから憎んだの……」
答えることが出来ない俺に業を煮やしたのかリネラスは、震える手を押さえながら言葉を紡ぎ、俺に語り聞かせてくる。
ただ、俺には回答を用意することが出来ない。
それは、異質な知識を持って生まれてきたから。
だから、リネラスの苦悩を俺は理解することが出来ない。
だから、俺は答えを導きだすことは出来ない。
簡単に答えていいことだとは思えないから。
「だから……だから……私は、自分が嫌い。懐いてきた幼い子たちを嫌っていた私が嫌い。お母さんに嫌われたくないからと作り笑いで接していた私が嫌い。笑顔の裏側で、自分より年下の子どもを憎んでいた自分が嫌い。私は私が大嫌い!」
俺の問いかけにリネラスは、頷いてくる。
頷いてくるが、その瞳は俺を見ることはない。
リネラスの視線は、目の前に居る自分の父親と幼いころの自分自身に向けられている。
「そう、私は何も知らなかった。エルフガーデンからお父さんと一緒に、フィンデイカの村に移住してきたときも、何も理解していなかった。ただ、お母さんから引き離された事がとても悲しくて……その原因になったと思っていた妹になった子たちが、私は嫌いだった」
リネラスの語りは、とても静かでいて感情を含んでいないように思えた。
ただ――。
「そうか……」
俺には、リネラスの言葉に。
リネラスの話に答える術がない。
それは、俺が生まれた時からこの世界ではない世界の知識を持っていたからだろう。
だから……。
人の思いを。
人の考えを。
人の気持ちを。
幼いころにどう考えて、どう思って、どう生きてきたのか。
その気持ちを共感することができない。
ただ、漠然とかわいそうだとしか思うことができない。
「エルフガーデンの族長エリンフィート様は、魔力を見る事が出来ない者をエルフの集落に置くことを良しとはしなかったの」
「なら……」
俺は一瞬、魔力を見ることが出来ないエルフが出た場合、自分の子であっても処理するようにエリンフィートが命令を下したのかと思ってしまう。
「大丈夫、ユウマが心配するようなことはないから」
ただ、俺の考えたことが分かったのかリネラスはすぐに語りかけてきたが、俺は今一、理解できずにいた。
それは、子ども一人で暮らしていけるほど、世界は甘くはないということ。
だからこそ、考え答えに至る。
「そうか。エリンフィートの提案というのは、その子どもをリネラスの母親に面倒を見させることだったのか……」
「うん」
頷き答えながらも、それでもリネラスは俺の方を見てくることはない。
ただ、ようやく理解できた。
おそらくリネラスが妹たちを憎んでいる原因は――。
「つまり、母親を取られたことに対して怒っているということか?」
「それは違うの」
俺の質問にリネラスは否定的な意味合いを含んだように頭を振りながら答えてくる。
「ねえ? ユウマ。あなたが自分の存在が否定されたのに、自分と同じ存在である子達が別の親に大事にされているのを見て、自分の親ですら面倒を見てるのを見てどう思う?」
「…………」
どう思う? と聞かれても俺には答えようが無い。
何故なら、前提条件が違うから。
たしかに両親は妹のアリアを大事にしていた。
ただ、俺も妹のアリアを大事にしていたし、両親が俺の事を厄介者のように扱っていたことも薄々と気がついてはいた。
子どもの体に意識と精神年齢を引きずられている事はあったが、それでも生来、俺の頭の中に存在していた知識は、ある一定の大人としての常識を与えていた。
だから、親に相手をされなくても俺は気にしなかった。
でも、それが普通の子どもだったとしたら――。
「答えられないよね? でもね? 自分が親に甘えられないのに他人が! 自分の親に甘えているの見せられて憎まない子どもは絶対いないと思う。だって! そうでしょう? 親に甘えたいのに! 拒絶されて! 拒否されて! 甘えられないなんて!! そんなのおかしいよね!? だから! 私は、憎んだの! 私と同じ魔力を見ることができない子が! お母さんに拒絶されなかったから、だから憎んだの……」
答えることが出来ない俺に業を煮やしたのかリネラスは、震える手を押さえながら言葉を紡ぎ、俺に語り聞かせてくる。
ただ、俺には回答を用意することが出来ない。
それは、異質な知識を持って生まれてきたから。
だから、リネラスの苦悩を俺は理解することが出来ない。
だから、俺は答えを導きだすことは出来ない。
簡単に答えていいことだとは思えないから。
「だから……だから……私は、自分が嫌い。懐いてきた幼い子たちを嫌っていた私が嫌い。お母さんに嫌われたくないからと作り笑いで接していた私が嫌い。笑顔の裏側で、自分より年下の子どもを憎んでいた自分が嫌い。私は私が大嫌い!」
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エメラダさん可愛すぎる