【書籍化作品】無名の最強魔法師
託された思い(14)
「お兄ちゃん、この建物は?」
変な匂いがする妹をお風呂に入れるために、冒険者ギルド兼宿屋へ向かっていると後ろをついてきた妹が建物を見上げて話しかけてきた。
「どうかしたのか?」
「ううん。でも……スラちゃん、どう思う?」
妹が何か気になっているのか、座っているスライムに話かけている。
その都度、スライムがぷるぷると体を揺らして、妹が「うん、やっぱりそうだよね」と言っているが俺には、どうしても言葉を交わしてるように見えないため、不思議なものを見るような感じになってしまう。
アライ村に居るときから気にはなっていたが、やっぱりスライムと妹の会話内容が聞こえてこない。
これは、やはり妹が特別な存在だからなのかも知れないな。
妹とスライムが会話しているのを眺めていると、俺を追いかけてきたのかユリカが建物から出てきて俺と妹を見たあと――。
「ユウマさん、こんなところに――って! ええっ!?」
スライムを見て驚きを含んだ声で叫んできた。
「ユウマさん! スライムが! こんなところにスライムが! え? で、でも……スライムって少し前に使用を禁止され――」
ユリカが慌てて色々と話始めて、さらには不審な物言いをしてきた。
「あー……」
これは、なんと説明するべきか……。
もしかしたら、ユゼウ王国ではスライムは禁止されていたかも知れないな。
ただ、ここで妹やスライムが好奇の視線に晒されるのは……。
「こいつは俺が作ったスライムなんだ。悪い奴じゃないぞ?」
「ぷるぷる」
「え?」
俺は逆さず後ろを振り返る。
そこには、ぷるぷる震えてるスライムと上に乗っている妹の姿があるだけ。
「おかしいな……」
俺は思わず口に出して突っ込みを入れる。
どう考えても「ぷるぷる」と言う音は言葉で発した言語のような気がしたんだが……。
「……ユウマさんが作ったスライムですか? それなら納得ですね」
ユリカが一人頷いているが、俺が作った事と納得したことはどういう繋がりがあるのか、話を聞きたいところだ。
ただ、納得してくれたなら話を掘り下げる必要もないだろう。
「それより息を切らせてるようだが、何かあったのか?」
「じつは、エリンフィートさんがユウマさんに至急伝えたいことがあるって」
「エリンフィートが? まだアイツは……隠し事をしていたのか?」
「いえ、じつはユウマさんに話す前に――」
「そうだったな……」
俺は、怒りのあまり部屋から出てしまって湖畔に向かってしまった。
何か言いたいことがあったというしても伝えられなかったという可能性はあるだろう。
ただ……。
「今は、会いたく……「リネラスさんに関することらしいんです」……リネラスに関すること?」
途中まで話しかけた言葉をユリカに遮られた。
「はい、エリンフィートさんが、日が沈むまでにリネラスさんを目覚めさせないと永遠に目を覚ますことがないと言って――」
「――ッ!? そんな話、エリンフィートは何一つ言っていなかったぞ?」
時間制限があるなんて、そんな話を聞いていたら俺は……。
「お兄ちゃん、リネラスって誰?」
妹の方を見ると、頬を膨らませて――。
「リネラスは、俺が冒険者をしている冒険者ギルドマスターで」
「ギルドマスターで? お兄ちゃんとは、どんな関係の人なの?」
「……どんな関係のある人って……一緒に旅をしてきた仲間というか何と言うか……そんな感じだな」
「…………」
怪訝そうな表情をしたまま妹は、今度はユリカのほうを見ると。
「お兄ちゃんとは、どんな関係なんですか?」
「え? お兄ちゃん? ユウマさんの妹さんですか?」
ユリカが困惑した声色で俺に問いかけてくる。
俺は、肯定するかのように頷く。
「――えーっと。ユウマさんとは、浅くも深くもない……そんな仲かな?」
「お兄ちゃんっ!」
妹が俺に抱きついてきて上目遣いに見上げてくる。
「どういうことなの!? 私だけじゃなくてリリナさんや、エメラダ様もいるのに! 外に別の人を作るなんて!」
何やら妹が勘違いしているようだが、俺はリリナやエメラダとはなんともない。
むしろ殴られたり理不尽な要求を突きつけられたり切り付けられたりと、二人との関係性は、むしろ被害者と加害者の関係だ。
「ユウマさん……実の妹にまで手を出していたなんて……」
「変な勘違いするな!」
俺とユリカ、そして妹を交えた3人で話をしていると建物から、セイレスやセレンまでもが姿を現した。
「ユウマお兄ちゃん!」
セレンが無邪気そうな顔で俺に近寄ってくると、妹が抱きついていないもう片方の腕に抱きついてくる。
「大変だよ! リネラスさんが! ギルドマスターが!」
「ちょっと! 私のお兄ちゃんから離れてよ! それにお兄ちゃんって、呼ばないで! お兄ちゃんは私のお兄ちゃんなんだから!」
「あなた誰なの?」
セレンが妹に向けて首を傾げながら問いかけをすると「私は、お兄ちゃんの妹のアリア! 離れなさいよ!」と、妹は怒った口調で返して俺の腕を引っ張ってきた。
どうして、こうなったのか訳がわからない。
二人は、何故か俺を挟んで剣呑とした空気を醸し出して言い合いを始める。
そして唯一静かにしていたセイレスと言えば、「これは二人の幼女が一人の男性を奪い合うドロドロな展開ですね!」と黒板に白いチョークで書いて俺に見せてきたが、そういう冗談はマジでやめてほしい。
変な匂いがする妹をお風呂に入れるために、冒険者ギルド兼宿屋へ向かっていると後ろをついてきた妹が建物を見上げて話しかけてきた。
「どうかしたのか?」
「ううん。でも……スラちゃん、どう思う?」
妹が何か気になっているのか、座っているスライムに話かけている。
その都度、スライムがぷるぷると体を揺らして、妹が「うん、やっぱりそうだよね」と言っているが俺には、どうしても言葉を交わしてるように見えないため、不思議なものを見るような感じになってしまう。
アライ村に居るときから気にはなっていたが、やっぱりスライムと妹の会話内容が聞こえてこない。
これは、やはり妹が特別な存在だからなのかも知れないな。
妹とスライムが会話しているのを眺めていると、俺を追いかけてきたのかユリカが建物から出てきて俺と妹を見たあと――。
「ユウマさん、こんなところに――って! ええっ!?」
スライムを見て驚きを含んだ声で叫んできた。
「ユウマさん! スライムが! こんなところにスライムが! え? で、でも……スライムって少し前に使用を禁止され――」
ユリカが慌てて色々と話始めて、さらには不審な物言いをしてきた。
「あー……」
これは、なんと説明するべきか……。
もしかしたら、ユゼウ王国ではスライムは禁止されていたかも知れないな。
ただ、ここで妹やスライムが好奇の視線に晒されるのは……。
「こいつは俺が作ったスライムなんだ。悪い奴じゃないぞ?」
「ぷるぷる」
「え?」
俺は逆さず後ろを振り返る。
そこには、ぷるぷる震えてるスライムと上に乗っている妹の姿があるだけ。
「おかしいな……」
俺は思わず口に出して突っ込みを入れる。
どう考えても「ぷるぷる」と言う音は言葉で発した言語のような気がしたんだが……。
「……ユウマさんが作ったスライムですか? それなら納得ですね」
ユリカが一人頷いているが、俺が作った事と納得したことはどういう繋がりがあるのか、話を聞きたいところだ。
ただ、納得してくれたなら話を掘り下げる必要もないだろう。
「それより息を切らせてるようだが、何かあったのか?」
「じつは、エリンフィートさんがユウマさんに至急伝えたいことがあるって」
「エリンフィートが? まだアイツは……隠し事をしていたのか?」
「いえ、じつはユウマさんに話す前に――」
「そうだったな……」
俺は、怒りのあまり部屋から出てしまって湖畔に向かってしまった。
何か言いたいことがあったというしても伝えられなかったという可能性はあるだろう。
ただ……。
「今は、会いたく……「リネラスさんに関することらしいんです」……リネラスに関すること?」
途中まで話しかけた言葉をユリカに遮られた。
「はい、エリンフィートさんが、日が沈むまでにリネラスさんを目覚めさせないと永遠に目を覚ますことがないと言って――」
「――ッ!? そんな話、エリンフィートは何一つ言っていなかったぞ?」
時間制限があるなんて、そんな話を聞いていたら俺は……。
「お兄ちゃん、リネラスって誰?」
妹の方を見ると、頬を膨らませて――。
「リネラスは、俺が冒険者をしている冒険者ギルドマスターで」
「ギルドマスターで? お兄ちゃんとは、どんな関係の人なの?」
「……どんな関係のある人って……一緒に旅をしてきた仲間というか何と言うか……そんな感じだな」
「…………」
怪訝そうな表情をしたまま妹は、今度はユリカのほうを見ると。
「お兄ちゃんとは、どんな関係なんですか?」
「え? お兄ちゃん? ユウマさんの妹さんですか?」
ユリカが困惑した声色で俺に問いかけてくる。
俺は、肯定するかのように頷く。
「――えーっと。ユウマさんとは、浅くも深くもない……そんな仲かな?」
「お兄ちゃんっ!」
妹が俺に抱きついてきて上目遣いに見上げてくる。
「どういうことなの!? 私だけじゃなくてリリナさんや、エメラダ様もいるのに! 外に別の人を作るなんて!」
何やら妹が勘違いしているようだが、俺はリリナやエメラダとはなんともない。
むしろ殴られたり理不尽な要求を突きつけられたり切り付けられたりと、二人との関係性は、むしろ被害者と加害者の関係だ。
「ユウマさん……実の妹にまで手を出していたなんて……」
「変な勘違いするな!」
俺とユリカ、そして妹を交えた3人で話をしていると建物から、セイレスやセレンまでもが姿を現した。
「ユウマお兄ちゃん!」
セレンが無邪気そうな顔で俺に近寄ってくると、妹が抱きついていないもう片方の腕に抱きついてくる。
「大変だよ! リネラスさんが! ギルドマスターが!」
「ちょっと! 私のお兄ちゃんから離れてよ! それにお兄ちゃんって、呼ばないで! お兄ちゃんは私のお兄ちゃんなんだから!」
「あなた誰なの?」
セレンが妹に向けて首を傾げながら問いかけをすると「私は、お兄ちゃんの妹のアリア! 離れなさいよ!」と、妹は怒った口調で返して俺の腕を引っ張ってきた。
どうして、こうなったのか訳がわからない。
二人は、何故か俺を挟んで剣呑とした空気を醸し出して言い合いを始める。
そして唯一静かにしていたセイレスと言えば、「これは二人の幼女が一人の男性を奪い合うドロドロな展開ですね!」と黒板に白いチョークで書いて俺に見せてきたが、そういう冗談はマジでやめてほしい。
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