【書籍化作品】無名の最強魔法師
親類の絆(1)
今後の対応についてエリンフィートを交えて話すため、建物の入り口に立っていた妹の横を通ったとき、「お兄ちゃん?」と妹が話しかけてくる。
「どうした?」
「……お兄ちゃん、すごく恐い顔してるの」
「恐い顔?」
「うん……。なんかお兄ちゃんじゃないみたい……」
「俺じゃないみたい?」
「だって! そんな余裕の無い表情をお兄ちゃんはしないもん!」
「……そうか……ごめんな」
妹の頭の上に手を置いて撫でる。
俺に撫でられた妹が笑顔を見せてきて「私も一緒に行っていい?」と聞いてきたが、無関係の話を妹に聞かせるわけにはいかない。
「アリア、悪いが……「――お兄ちゃん!」……どうした?」
話の途中で妹が割り込んでくる。
心なしか妹が怒っているようにも見えるが。
「私、よく分からないけど! それでも、今のお兄ちゃんは、いつものお兄ちゃんじゃないの! だって……村でもそんな表情したことなかったもん」
妹が言っている言葉の意味が分からないが……。
いや、待てよ?
さっき妹は、俺が余裕の無い表情をしていると言っていた。
その表情は、村では見たことがないと。
「アリア、俺は、そんなに切羽詰った顔をしているのか?」
俺の問いかけに妹が肯定するかのように頷いてくる。
たしかに、リネラスの目を覚ますことが出来るかは、俺がリネラスの求める答えを提示できるかどうかであり、そして猶予が日が沈むまでしかないと言うことは、考える時間も限られるということ。
それは俺から余裕を奪い去るには十分なのかもしれないが……。
妹には、そういう心配をかけさせたくないと思っていただけに、看破されるというのは……。
「大丈夫だ」
俺は妹の頭を撫でるが――。
「どうして……泣いているんだ?」
俺を見上げていた妹は、大きな赤い瞳から涙をポロポロと零して……。
「だって、お兄ちゃん。すごく苦しそうだから……」
「そんなことないぞ?」
「ううん。私、分かるもん! お兄ちゃん、とっても苦しそうだもん! お兄ちゃん、大丈夫?」
俺がとっても苦しそう……か……。
自覚は無いんだが……。
「そんなに苦しそうな顔をしているのか?」
「うん……」
「そうか……」
妹は俺の言葉に涙を零しながら答えてくる。
そんな妹を見て、どれだけ自分が妹に迷惑をかけているのか分かってしまう。
「俺は駄目なお兄ちゃんだな」
「そうじゃないの! お兄ちゃんは何でも一人で抱え込むのが悲しいの! 苦しいの! もっと誰かを頼って! それにお兄ちゃんは駄目なお兄ちゃんじゃないの! だって、私が小さい頃に助けてくれたもん!」
「……」
「ユウマさん?」
妹の言葉に答えを返せずにいるとリンスタットが俺に話しかけてきた。
そして妹は、視線を逸らさずまっすぐに俺を見上げている。
周りを見渡すとセイレスもセレンもユリカも俺を心配そうに見てきていて。
「そうだな……リネラスを心配するのは俺だけじゃないよな……」
みんなで旅をしてきたのだ。
俺一人だけが心配しているわけじゃない。
「なんでも一人で出来るなんて……そんなのは傲慢だよな」
自分の額に手を当てながら自問自答する。
俺は一体、何をしているんだろう。
魔法の力に頼りきって一人で何でも出来ると思って……そして――。
リネラスの深層心理の世界で。
見せられた過去に。
見せつけられた過去に。
自分の手が届かない過去に。
手を差し伸べることが出来ず助けることが出来ず確定してしまった過去に。
答えを探しだす術をもたず。
答えを導くこともできず。
大切な誰かを守ることも。
大切な誰かを助けることも出来ない自分自身の感情を持て余して、ただ、誰かに八つ当たりしているだけで……。
そして、それを正当化しようとしている。
それはとても歪で間違っている。
俺は大きく息を吸い吐いたあと「俺は、馬鹿だな……」と自傷気味に呟く。
自分ひとりで何でも出来ると思って行動していた。
たしかに俺の魔法は万能であり、事象を想像し漢字を浮かべるだけで、どんな魔法でも使う事ができる。
でも、それで解決できることなんて知れている。。
そして、人間一人で出来ることなんて、たかが知れている。
特に魔法が使えない世界での俺に出来ることなんて限られている。
「一人で出来ることなんて知れているとアライ村で嫌というほど、知ったのにな……」
そう、ウラヌス十字軍と戦ったときだって俺一人じゃ解決できなかった。
そんな簡単なことすら忘れていた。
「お兄ちゃん?」
「アリア、ありがとうな」
俺は妹の頭を撫でながら言葉を呟く。
「ううん」
「妹に諭されるとは―ー。俺もまだまだだな。すまないが、みんなに手伝ってほしい事がある」
そう、自分ひとりの力で解決できないのなら誰かに力を借りる。
それは当たり前の事じゃないか。
「どうした?」
「……お兄ちゃん、すごく恐い顔してるの」
「恐い顔?」
「うん……。なんかお兄ちゃんじゃないみたい……」
「俺じゃないみたい?」
「だって! そんな余裕の無い表情をお兄ちゃんはしないもん!」
「……そうか……ごめんな」
妹の頭の上に手を置いて撫でる。
俺に撫でられた妹が笑顔を見せてきて「私も一緒に行っていい?」と聞いてきたが、無関係の話を妹に聞かせるわけにはいかない。
「アリア、悪いが……「――お兄ちゃん!」……どうした?」
話の途中で妹が割り込んでくる。
心なしか妹が怒っているようにも見えるが。
「私、よく分からないけど! それでも、今のお兄ちゃんは、いつものお兄ちゃんじゃないの! だって……村でもそんな表情したことなかったもん」
妹が言っている言葉の意味が分からないが……。
いや、待てよ?
さっき妹は、俺が余裕の無い表情をしていると言っていた。
その表情は、村では見たことがないと。
「アリア、俺は、そんなに切羽詰った顔をしているのか?」
俺の問いかけに妹が肯定するかのように頷いてくる。
たしかに、リネラスの目を覚ますことが出来るかは、俺がリネラスの求める答えを提示できるかどうかであり、そして猶予が日が沈むまでしかないと言うことは、考える時間も限られるということ。
それは俺から余裕を奪い去るには十分なのかもしれないが……。
妹には、そういう心配をかけさせたくないと思っていただけに、看破されるというのは……。
「大丈夫だ」
俺は妹の頭を撫でるが――。
「どうして……泣いているんだ?」
俺を見上げていた妹は、大きな赤い瞳から涙をポロポロと零して……。
「だって、お兄ちゃん。すごく苦しそうだから……」
「そんなことないぞ?」
「ううん。私、分かるもん! お兄ちゃん、とっても苦しそうだもん! お兄ちゃん、大丈夫?」
俺がとっても苦しそう……か……。
自覚は無いんだが……。
「そんなに苦しそうな顔をしているのか?」
「うん……」
「そうか……」
妹は俺の言葉に涙を零しながら答えてくる。
そんな妹を見て、どれだけ自分が妹に迷惑をかけているのか分かってしまう。
「俺は駄目なお兄ちゃんだな」
「そうじゃないの! お兄ちゃんは何でも一人で抱え込むのが悲しいの! 苦しいの! もっと誰かを頼って! それにお兄ちゃんは駄目なお兄ちゃんじゃないの! だって、私が小さい頃に助けてくれたもん!」
「……」
「ユウマさん?」
妹の言葉に答えを返せずにいるとリンスタットが俺に話しかけてきた。
そして妹は、視線を逸らさずまっすぐに俺を見上げている。
周りを見渡すとセイレスもセレンもユリカも俺を心配そうに見てきていて。
「そうだな……リネラスを心配するのは俺だけじゃないよな……」
みんなで旅をしてきたのだ。
俺一人だけが心配しているわけじゃない。
「なんでも一人で出来るなんて……そんなのは傲慢だよな」
自分の額に手を当てながら自問自答する。
俺は一体、何をしているんだろう。
魔法の力に頼りきって一人で何でも出来ると思って……そして――。
リネラスの深層心理の世界で。
見せられた過去に。
見せつけられた過去に。
自分の手が届かない過去に。
手を差し伸べることが出来ず助けることが出来ず確定してしまった過去に。
答えを探しだす術をもたず。
答えを導くこともできず。
大切な誰かを守ることも。
大切な誰かを助けることも出来ない自分自身の感情を持て余して、ただ、誰かに八つ当たりしているだけで……。
そして、それを正当化しようとしている。
それはとても歪で間違っている。
俺は大きく息を吸い吐いたあと「俺は、馬鹿だな……」と自傷気味に呟く。
自分ひとりで何でも出来ると思って行動していた。
たしかに俺の魔法は万能であり、事象を想像し漢字を浮かべるだけで、どんな魔法でも使う事ができる。
でも、それで解決できることなんて知れている。。
そして、人間一人で出来ることなんて、たかが知れている。
特に魔法が使えない世界での俺に出来ることなんて限られている。
「一人で出来ることなんて知れているとアライ村で嫌というほど、知ったのにな……」
そう、ウラヌス十字軍と戦ったときだって俺一人じゃ解決できなかった。
そんな簡単なことすら忘れていた。
「お兄ちゃん?」
「アリア、ありがとうな」
俺は妹の頭を撫でながら言葉を呟く。
「ううん」
「妹に諭されるとは―ー。俺もまだまだだな。すまないが、みんなに手伝ってほしい事がある」
そう、自分ひとりの力で解決できないのなら誰かに力を借りる。
それは当たり前の事じゃないか。
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