【書籍化作品】無名の最強魔法師
姉妹の思い出(16)
 飛来した矢が地面に落ちると同時に周囲が静まりかえる。
「――そ、そんな……。こ、こんな、馬鹿な!?」
貴族の格好をした男は、驚愕の表情で俺を見てくる。
そして、エルスと言えば、信じられないといった表情で「ユウマ、アンタ一体……」と、言葉にならない言葉を紡いで語り掛けてきた。
そういえば、エルスには俺は山で狩猟をしている猟師としか教えていなかったな。
まぁ、概ね間違いではないんだが――。
わざわざ説明をする必要もないだろうな。
「道を開けろ! 兵隊ごっこをしている連中に興味はない!」
「……な、なんだと!?」
目の前の貴族風の男が、プライドを傷つけられたのか戦慄いているのが、さっさと兵を引かせて道を空けてもらいたい。
こちらとしても態々、ゴタゴタしたいわけではないからな。
それに……。
争うなら国王とやらと内部だけでやりあってほしいものだ。
外部の俺を巻き込むのは、いかがなものかと思うしな。
――とういうことで、親切心から道を譲れと言ったわけだが――。
何故か知らないが、周囲を取り囲んでる連中の顔色が変わって腰から武器を抜いて構え始めた。
さらには、天幕を中心に円陣を組んで槍を手に持つ者たちに、一列に並んで矢を射る構えを取るものが出てくる。
「ふむ……」
おかしい……。
先ほどまでは――矢を全部叩き落したときには、戦意が目に見えて衰えていたというのに、今では目を爛々と輝かせて、いつでも俺を攻撃するぞ! という気迫に満ち満ちている。
「仕方ないか……」
俺は、半身のままいつでも戦闘が出来るようにと肉体強化の魔法を発動させつつ、攻撃の構えを取る。
「ユ、ユウマ……、どうして相手を挑発するような言い方を……」
攻撃の構えを取った俺に対してエルスが話しかけてくる。
その会話には、まるで俺が、ユリーシャ率いる軍隊を挑発したかのような意味が含まれているようだ。
「別に挑発はしていないぞ? ただ、錬度が低いのに、これでエルンペイアが率いる軍と戦うのか? と思ってな」
「アンタ、エルンペイア軍の人間だったのかい?」
「いや、どっちかと言うと敵対している感じだな……」
「な、なら――。どうして……」
「言わなくても分かるだろう? と、言うか……言ってなかったか。俺さ、フィンデイカ村の冒険者ギルドに所属しているんだ」
「…………フィンデイカ村……。ま、まさかアンタ……」
俺の言葉を聞いていたエルスは、必死に考えていたのだろう。
途切れ途切れに、言葉を発している。
そんなエルスをよこに「きさま! まさか、Sランク冒険者のユウマか!?」と、貴族風の男が叫んできた。
「――え? ユウマがSランク冒険者? フィンデイカ村の冒険者ギルドマスターが認定した冒険者だけでなく――あ、あの短期間でSランク冒険者になって、数々の残虐非道な行いをしてきたSランク冒険者を殲滅しカレイドスコープを壊滅においこんだ……ユゼウ王国内全域で指名手配扱いされている冒険者だったの?」
エルスが体を震わせながら、俺の経緯を大雑把に話している。
大抵の部分は合っているが、数々の冒険者を殲滅してきたって部分については、些か誇張が入っているな。
ここは訂正をしておいた方が良いかも知れない。
「そんなに冒険者を倒してはいないぞ? 俺は火の粉を払ったにすぎないし、カレイドスコープでは、町の復興に力を貸した! どちらかと言えば正義の味方ってところだな!」
「あー……」
何故か知らないが俺の言葉を聞いたエルスは諦め口調で溜息をつくと。
「――で、でも……、この人数を相手には、さすがに……」
「何とかなるだろう?」
あまり、こんなところで時間を無駄に逃避するわけにもいかないからな。
頭の中で、世界の理に干渉するため、魔法が発生した後に起きる現象・事象を想像する。
「射れ!」
貴族の男が叫ぶと叫ぶと同時に100本を越える矢が山なりに飛んでくる。
恐らくは、直線状で打てば囲んでいる味方に当たると考慮した結果だろうが――。
俺が発動させる魔法の前では無意味!
「竜巻!」
力ある言葉と同時に、魔法が発動する。
それにより大気の気流が急速に上昇を始め上空に巨大な積乱雲が形成され降り注いでくる矢を吹き飛ばした。
「――な、なんだ!? 何が……一体、何が起きているんだ!?」
俺が作り出した竜巻は周囲の天幕を根こそぎ破壊していく。
さらには、エルブンガストから離れた場所に位置する今居る森の木々すら破壊する。
俺は、竜巻により必死に飛ばされまいと地面にへばり付いて耐えている兵士を無視したまま「エルス!」と振り向きながら声をかけるがエルスも顔を真っ青にして座り込んで震えていた。
「まったく……世話がやける――」
俺は、返事をしないエルスを抱き上げると、兵士達の頭上を飛び越え探索魔法で居場所が判明しているイノンの方へと向かう。
「――そ、そんな……。こ、こんな、馬鹿な!?」
貴族の格好をした男は、驚愕の表情で俺を見てくる。
そして、エルスと言えば、信じられないといった表情で「ユウマ、アンタ一体……」と、言葉にならない言葉を紡いで語り掛けてきた。
そういえば、エルスには俺は山で狩猟をしている猟師としか教えていなかったな。
まぁ、概ね間違いではないんだが――。
わざわざ説明をする必要もないだろうな。
「道を開けろ! 兵隊ごっこをしている連中に興味はない!」
「……な、なんだと!?」
目の前の貴族風の男が、プライドを傷つけられたのか戦慄いているのが、さっさと兵を引かせて道を空けてもらいたい。
こちらとしても態々、ゴタゴタしたいわけではないからな。
それに……。
争うなら国王とやらと内部だけでやりあってほしいものだ。
外部の俺を巻き込むのは、いかがなものかと思うしな。
――とういうことで、親切心から道を譲れと言ったわけだが――。
何故か知らないが、周囲を取り囲んでる連中の顔色が変わって腰から武器を抜いて構え始めた。
さらには、天幕を中心に円陣を組んで槍を手に持つ者たちに、一列に並んで矢を射る構えを取るものが出てくる。
「ふむ……」
おかしい……。
先ほどまでは――矢を全部叩き落したときには、戦意が目に見えて衰えていたというのに、今では目を爛々と輝かせて、いつでも俺を攻撃するぞ! という気迫に満ち満ちている。
「仕方ないか……」
俺は、半身のままいつでも戦闘が出来るようにと肉体強化の魔法を発動させつつ、攻撃の構えを取る。
「ユ、ユウマ……、どうして相手を挑発するような言い方を……」
攻撃の構えを取った俺に対してエルスが話しかけてくる。
その会話には、まるで俺が、ユリーシャ率いる軍隊を挑発したかのような意味が含まれているようだ。
「別に挑発はしていないぞ? ただ、錬度が低いのに、これでエルンペイアが率いる軍と戦うのか? と思ってな」
「アンタ、エルンペイア軍の人間だったのかい?」
「いや、どっちかと言うと敵対している感じだな……」
「な、なら――。どうして……」
「言わなくても分かるだろう? と、言うか……言ってなかったか。俺さ、フィンデイカ村の冒険者ギルドに所属しているんだ」
「…………フィンデイカ村……。ま、まさかアンタ……」
俺の言葉を聞いていたエルスは、必死に考えていたのだろう。
途切れ途切れに、言葉を発している。
そんなエルスをよこに「きさま! まさか、Sランク冒険者のユウマか!?」と、貴族風の男が叫んできた。
「――え? ユウマがSランク冒険者? フィンデイカ村の冒険者ギルドマスターが認定した冒険者だけでなく――あ、あの短期間でSランク冒険者になって、数々の残虐非道な行いをしてきたSランク冒険者を殲滅しカレイドスコープを壊滅においこんだ……ユゼウ王国内全域で指名手配扱いされている冒険者だったの?」
エルスが体を震わせながら、俺の経緯を大雑把に話している。
大抵の部分は合っているが、数々の冒険者を殲滅してきたって部分については、些か誇張が入っているな。
ここは訂正をしておいた方が良いかも知れない。
「そんなに冒険者を倒してはいないぞ? 俺は火の粉を払ったにすぎないし、カレイドスコープでは、町の復興に力を貸した! どちらかと言えば正義の味方ってところだな!」
「あー……」
何故か知らないが俺の言葉を聞いたエルスは諦め口調で溜息をつくと。
「――で、でも……、この人数を相手には、さすがに……」
「何とかなるだろう?」
あまり、こんなところで時間を無駄に逃避するわけにもいかないからな。
頭の中で、世界の理に干渉するため、魔法が発生した後に起きる現象・事象を想像する。
「射れ!」
貴族の男が叫ぶと叫ぶと同時に100本を越える矢が山なりに飛んでくる。
恐らくは、直線状で打てば囲んでいる味方に当たると考慮した結果だろうが――。
俺が発動させる魔法の前では無意味!
「竜巻!」
力ある言葉と同時に、魔法が発動する。
それにより大気の気流が急速に上昇を始め上空に巨大な積乱雲が形成され降り注いでくる矢を吹き飛ばした。
「――な、なんだ!? 何が……一体、何が起きているんだ!?」
俺が作り出した竜巻は周囲の天幕を根こそぎ破壊していく。
さらには、エルブンガストから離れた場所に位置する今居る森の木々すら破壊する。
俺は、竜巻により必死に飛ばされまいと地面にへばり付いて耐えている兵士を無視したまま「エルス!」と振り向きながら声をかけるがエルスも顔を真っ青にして座り込んで震えていた。
「まったく……世話がやける――」
俺は、返事をしないエルスを抱き上げると、兵士達の頭上を飛び越え探索魔法で居場所が判明しているイノンの方へと向かう。
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