【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

絡み合う思想と想い(27)




「ユウマさんではないですか!」
 
 俺に気がついたサマラが走って近づいてくる。
 どうやら、俺のことは忘れていなかったようだ。

「どうやら自分たちで、ドラゴンを狩れるようになったようだな」 
「はい! 私達も誰かに教えてもらおうと甘えていたことに気がついたので、色々と工夫をしていたのです!」
「そうか――、俺もサマラ達に期待していたが、思ったよりも修行は実を結んだようだな」
「いえいえ、私達などユウマさんに比べたら……」
「そうか?」

 数日前には、ワイバーンすら恐れていたサマラ達が、その上位種であるドラゴンをも倒せるまで成長しているのだ。
 さすがの俺も賞賛を送りたくレベルだが。

「4年経過しても、この様ですからまだまだです。ユウマさんは5歳の時にはワイバーンを素手で倒したとか?」
「まぁ、そうだが……」

 ――と、言うか……、ダンジョンと外の世界の時の流れが異なっていると言っても数日で4年もの月日が流れているとか、とんでもない迷宮だとしか言いようがない。
 俺が作った迷宮だが、この迷宮で修行をすれば外では殆ど時間が流れていないから短期間で強くなったように相手に見せられるのではないだろうか?

「それより、私達を迎えに来たということは何かあったということですか?」

 サマラの言葉に俺は頷く。
 しかし……、なんというかエルフはすごいな。
 4年も経過したというのに、まったく容姿が変わっていない。
 俺がエルフの容姿が変わっていないことに対して、色々と一人で思っていると妹が俺の手を強く握り締めてきた。

「お兄ちゃん」
「どうした?」
 
 アリアが不機嫌そうな表情で、ドラゴンを追い掛け回していたエルフ達に集まるように指示を出しているサマラを指差して「あの女誰なの?」と、聞いてくる。
 なんだか、とても不機嫌そうに感じるんだが、気のせいだろう。

「サマラは、リネラスの親友でエルフだ。エルフの族長から、エルフガーデンを守るためにエルフの戦士育成を俺は頼まれていたんだ。――で、鍛錬の面倒を見るエルフ達の纏め役でもあるのがアイツってわけだな」
「そうじゃなくて! お兄ちゃんとの関係性を聞いているの!」
「関係って……」

 サマラと俺は何の関係もないんだが……。

「どうかしましたか?」

 どうやら、エルフ達を集め終わったようでサマラの後ろには歴戦の戦士を思わせる眼光を持つエルフ達が直立していた。

「いや、妹がちょっとな」

 さすがに、妹がサマラとの関係性を聞いてきたとは言えない。
 ここは適当にお茶を濁しておくのがいいだろう。

「妹さんですか? そちらの子が?」
「ああ、妹のアリアって言うんだが――」
「なるほど、ユウマさんの妹さんですか。私は、サマラと言います。一応、族長代理を務めていますので、これからよろしくお願いしますね」

 サマラの言葉を妹は聞いているだろうに、顔はそっぽを向いてサマラと話す気はないように思える。

「アリア」
「うーっ。お兄ちゃんの妹アリアです」

 俺が自己紹介するようにアリアの名前を呼ぶとしぶしぶだが、サマラに頭を下げて自己紹介をしてくれた。
 それにしても、妹の人見知りは何とかしないとダメだな。
 特に女性に対しての人見知り具合はヤバイ。

「はい、よろしくね。義妹ちゃん」
「よろしくしないの!」

 どうして、相手が好意的に接してきているのにうちの妹は拒絶するような言い方をするのだろうか?
 俺は妹の将来が心配になってくる。 

「とりあえず話を戻すぞ? 実は、エルフガーデンはユゼウ王国からの侵略を受けている状態だ。そこでお前たちの力を貸してもらいたい」
「わかりました! ユウマさんの命なら、この命に代えてもユゼウ王国の軍隊と戦って見せます!」
「いや、そこまで頑張らなくてもいいからな」 




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コメント

  • なつめ猫

    皆様、感想ありがとうございます。

    以前からコメントはチェックはしていたのですが、返信の仕方が分からなかったため、ここで返信が出来なかった非礼をお詫びいたします。

    色々と思うところがあると思いますが、おかしな箇所がありましたら遠慮なくご指摘ください。
    直せる範囲でしたら直します。

    ちなみに漢字ミスが多いこともあると思いますので、やさしく間違ってるよと、何話でどのあたりなのか指摘してくれると、先行投稿している小説家になろうの「無名の最強魔法師」にも修正が入りますのでよろしくお願いいたします。

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