【書籍化作品】無名の最強魔法師
記憶の竪琴(1)
「何よ! もしかして忘れていたの!?」
「いや、俺の記憶だと神様ってのは――、もっと神秘的な存在なんだよ。それが人様の村に侵略してくるわ、エルフ達の精霊眼を通してストーキングしてくるわとやりたい放題だろ? そりゃ神様としては俺としても疑いの目を向けざる負えないわけだ」
「――うっ!?」
「ふっ」
「何よ! その勝ち誇った顔は!」
「それより、ユリーシャの中に居る従属神を何とかする方法は無いのか?」
エリンフィートが困った表情で。
「本当は、あまり頼みたくないのだけど……」
「方法はあるのか」
「あるけど――、成功するかどうかは分からないわよ?」
「どういうことだ?」
「ユウマのパーティに居るユリカに観てもらうのよ」
「ユリカってアイテムの鑑定とかは出来るとリネラスが言っていたような……」
「ええ、そうね。でもユリカの使う鑑定魔法は対象物の構成を読み取る力を持っているから対策を取ることが出来る可能性があるのよね」
「可能性か……」
「うん。あくまでも可能性だからね」
「分かった。とりあえず仲間の元に戻るとするか――」
俺はユリーシャを脇に構えたままエリンフィートも空いている手で抱き抱えたあと、仲間が待っている場所へと戻る。
数分で到着したあと、【移動式冒険者ギルド宿屋】の中へと入ったところで、ふと気になった。
「エリンフィート。ユゼウ王国軍の方はどうなっている?」
「えっと……、ユウマの妹の使い魔のスライムが上手い具合に侵攻を食い止めているみたいね」
「なるほど……、それでアリアはどのへんに?」
「今は、こっちに向かってきているわね。ユゼウ王国軍の討伐に向かうようにエルフを経由して言う?」
「いや――、言う必要はない。俺の妹は人を簡単に傷つけるような非常識な人間じゃないからな。妹は心がやさしい子だからな……」
「――と、言う夢を見たんだ?」
後ろからリネラスが突っ込みを入れてきた。
「リネラス、俺の妹が戦闘狂な誤解を招く言い方は止めてくれ。妹のアリアはいつも……、お兄ちゃんお兄ちゃんと抱きついて甘えてくるようなとっても良い子なんだぞ?」
「「……」」
エリンフィートとリネラスが口を大きく開けて俺を見てくる。
俺は何か間違ったことでも言っただろうか?
よく分からないな。
「ずいぶんと強かみたね。これは一緒になったあと苦労するかも……」
「同情しますよ? ユウマと一緒になるなら危険物を飼いならす必要が出てきますし……」
「何の話しだ?」
無言のまま俺から距離を取ったエリンフィートとリネラスは俺と一緒になった後の話をしているがまったく意味が分からん。
同じギルドのメンバーなのだから、一緒も何もないだろうに。
それに危険物を飼いならす必要という話も心当たりがないこともない。
おそらく妹が使役しているドラゴンの事を言っているのだろうが、そのへんはダンジョンに戻せばいいと考えている。
「「こっちの話よ!」」
どうやら俺にはあまり言いたくない内容のようだな。
まぁ、すでに二人が話していた断片的な情報を繋ぎ合わせることで大まかな事情を俺は察している。
こう見えても俺は人の話を途中まで聞いて結論を導くことに関しては天才的な感を持っているからな。
時々、リリナに殴られたりすることも良く稀にあるが、それはリリナが全て悪い。
アイツは気まぐれだからな……。
対して妹とかは、お兄ちゃん! しゅごい! とかやっぱりお兄ちゃんだよね! とか肯定してくれる。
「ユウマ。何を一人で頷いているの?」
「いや、何でもない。少し昔のことを思い出していたんだ。それよりユリカはダンジョンの中にいるのか?」
「そうね。私は精霊眼の制御もあるから空間が隔てられているダンジョン内にずっといる訳にもいかないから」
「なるほど……」
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