【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

記憶の竪琴(11)




「つまり、現実のイノンが生きているということは特殊な呪法の方を使ったということになるのか」
「うん。間違いないわね」
「だが――」

 問題は、今回のイノンとユリーシャの間に……、しかもルーグレンスの問題にどう絡んでいるのかが分からない。
 
「ユウマ?」
「いや、今までは精神世界に入った時に必ず精神世界を形成していた人間の内面が見えてきた物なんだが……、これって本当にイノンやユリーシャの世界なのか? ちょっと、おかしくないか?」
「――え? おかしいって?」
「精神世界で組まれている世界の情報ってのは俺の経験上、本人が知らない情報では組まれないはずだ。周囲を見渡してもイノンやユリーシャの姿が見当たらない。つまり――」
「ユウマは、二人の内どっちかが怪しいと思っているの?」
「そうだな……」

 周辺を【探索(サーチ)】の魔法で調べるが、フィンデイカ村の冒険者ギルド内には3つの反応しかない。
 セレンやセイレスの母親であるユーフィアさん。
 そしてイノンやユリーシャの父親。
 あとは、2階に上がる階段のところに反応が一つある。

「ふむ……」
「ユ、ユウマ? どこにいくのよ?」
「いや、ちょっとな」

 冒険者ギルドの建物を半周したところで指先を身体強化魔法で強化する。
 そして壁に向かって突き立てた。
 ボコッという音と共に建物に穴が開く。

「やっぱりな……」

 指先を引き抜く。
 すると、幼少期のリネラスが茫然と突然開いた穴と俺を交互に見て目を大きく見開いくと同時に一瞬立ち眩みを覚える。
 
「もう! 一体、何が起きたの?」
「どうやら、最初からスタートのようだな」

 辺りを見渡すが、立っていた場所はリネラスと共に最初に降り立った場所で小麦の稲穂などが辺りに見て取れた。

「――え? 最初からスタートってどういうことなの?」
「お前の時もそうだったんだが、俺なりの解釈をするなら精神世界の主が納得しないルートを選んだ場合、最初からスタートになる事が稀に良くある」
「それって良くあったら困るんだけど……。現実世界でも時間は経過しているのでしょう?」
「まあな――、前回もそうだったが……、今回もアレをするしかないか」
「あれって?」
「働いてお金を稼いで時間をかけて攻略するしか方法がないだろ?」
「ユウマの魔法でパパッ! と解決できないの?」
「それが出来ていたら、お前の精神世界に入った時もパパッと解決していたんだが……、とにかく力業で何とか出来る世界じゃないからな」
「そうなの……、ユウマも私を助けるときには色々としてくれたのね」

 リネラスが口元を手で隠しながら潤んだ瞳でリネラスは俺を見上げながら話しかけてきた。
 心なしか嬉しそうにも見えるんだが……。

「とにかくだ。今はゼノンを見つけることを最優先にしよう。ゼノンとルーグレンスは敵対しているようだからな。以前は、ゼノンも気を利かせて来てくれたが、あれは神気を持つエリンフィートが居たから特例みたいな物だからな」
「そうすると、前回みたく町でそのゼノンって人を見つけてってことになるの?」
「そうだな。その為には、働いて町の住人として溶け込む必要があるが……、取り込まれないようにしろよ? 以前も色々と大変だったんだからな」
「……う、うん……」

 どうして、そこで嬉しそうな表情をするのか――。





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コメント

  • 96usa

    作品自体はかなり完成度が高く面白いのですが、相当数の誤字脱字、文章のねじれがあるので読みづらいなと感じました。修正版お待ちしております!

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