妖刀使いがチートスキルをもって異世界放浪 ~生まれ持ったチートは最強!!~

創伽夢勾

21:黒竜の咆哮

《ますたー、ゴブリンキングとは違う個体を確認。竜種と確認。こちらに向かってきます》

 咆哮が聞こえてすぐ。エルの声が頭に響く。ってちょっと待て竜種? やっぱりいるのか。

「グガァァァァ」

 さっきの咆哮とは違い、今度ははっきり聞こえる。狂ったような咆哮が聞こえる。
 俺は空を飛んでいるそれ・・を指さし尋ねる。勿論エルにだ。

(エル確認だ。あいつまさか、)
《はい、狂乱状態です》

 となるとめんどくさいな。なんでこうも狂乱している奴が多いんだ。エルが言うにはそこら辺のゴブリンは違うが、上位種のジェネラルやら、メイジやらそれらは過半数が狂乱化していたらしい。そっちはキングの影響かもしれないが、キング自体、狂乱している意味がわからん。おまけにこの竜種も狂乱状態と来た。絶対に原因がある。

(エル。このままあの竜の解析を頼む。何かわかり次第報告)
《了解しました》

 俺は離れた位置にいるティナに、連絡を取るためにスキルを起動する。

(ティナ聞こえるか?、聞こえたら俺をイメージして頭の中で答えてくれ)
(え?ユ、ユウ様ですか?)

 もちろん起動したのは、エルやムラクモが使う。意思疎通のスキルだ。

(そうだ、これは俺のスキルだ。そこら辺はまた後で話す、俺はあの竜をどうにかする。ここの周りにいるやつを避難させてくれ、一応元炎帝さんへの連絡もできれば頼む)

 【意思疎通】のスキルをティナへと使用し、ティナに指示を伝える。え? いつ入手をしたかって? そりゃ、エルさんが意思疎通のスキル持ってるからね、解析しましたよ。勿論条件を満たしていたから取得できたのだ。
 ちなみに、エルの持っている、演算や、解析などは、条件を満たしていないせいかコピーはできなかった。
 そんなこんなしているうちに、俺の目の前に、空から黒竜が降りてくる。

(エル、俺があれに勝てる見込みは?)
《通常状態の成体個体では100%無理です。ですがあの竜は幼体のようです》
(ちょっと待て、あれで幼体? あの大きさでですか。)
《あれは本当の姿ではないです。何らかのスキルだと思われます。
 解析が完了報告します。あの竜種は、ゴブリンキングとは違い完全な狂気状態ではありません。何らかの影響で一時的に、狂気状態になっている模様です。原因を解析します。それから、あの竜種は自我があり、狂気状態で今は内側に眠っていると思われます》

 さすがエルだ。短時間でここまで調べるか。状況をまとめると、どうにかして狂乱状態を解けば、我に返ってどっかに言ってくれるかもしれないと。

(エル、それらを含めて考えて俺の勝率は?)
《7.8割といったところでしょうか》

 ムラクモを抜刀し、竜と向き合う。

 自我が眠ってるか。俺はたぶん、このまま戦えば負ける。それはなんとなくわかる、だからこそ打てる手は全て試そう。今考えていることは二つ。まぁ、やってみなきゃ、わかんないよな。

 黒竜は大きく口を開けると、炎を吐き出した。俺は横へと飛ぶ。俺の後ろにはさっきまで歓喜をあげていた奴らが……いなかった。
 ティナが俺の言うとおりに避難を誘導してくれたのだろう。
 黒竜がしっぽを振り回す。それだけで簡単に木々は倒れていく。

ポキッ

 横から枝が踏まれる音が聞こえた。
 そこに立っていたのは、元炎帝こと、ヘイル・バーナーだった。

「おっ炎帝さんちょうどいいところに、これで俺の一つ目の案が試せる」
「だから、元だって、しかも現役を過ぎて結構すぎたんだけど、僕に何させるきだい?その案を聞こうか」

 そんな元炎帝さんに向かって黒竜の爪が振り下ろされる。
 雑な攻撃、それにワンパターン。ゴブリンキングと同じだ。これで知能があったらと考えると怖いな。

「あんまり時間ないから手短に話すぞ。その竜は狂乱状態。知能は低いが、このまま二人で戦っても、どうにもならない。消耗戦に持ち込まれて、俺らの負けだ。そこで俺にはちょっとした策がある。スキルの関係上あんまり詳しくは話せないがっ!」

 俺は振り下ろされたしっぽを躱す。ヘイルも俺の話に耳を傾けながら、回避を続ける。話が途中で途切れたが、俺の意図をくみ取ったのか、ヘイルの方から俺の話に乗ってくる。

「それで?僕は何をすればいいんだい?」
「俺は準備を始める。5分でいい。その竜を引き付けてくれ」
「5分? しかも僕に攻撃を引き付けてかい? 君、ほかの人にSって言われないかい? 僕これでも引退したんだけどっ!」

 竜は俺とヘイルの近いほうに攻撃を続ける。躱すだけながら余裕だが、竜のうろこはそう簡単に傷つけらない。今はヘイルの方が近いから、そっちに攻撃が集中している。

「そんなこと初めていわれたよ、じゃあ頼むぞ!」

 俺は宣言してから竜との距離を広げる。
 そんな俺に向かってヘイルはこんな声をかけてくる。

「しょうがないな、貸し一つだよ」

 ヘイルの周りに炎が集まる。だが、ヘイルはそれをもろともしない。さすが炎帝と呼ばれていたことのある奴だ。まぁあれなら大丈夫だろう。

(エル、俺はちょっと野暮用でな、あいつのところへ行ってくる。少し体を開ける。この体任せるから、回避に専念しながら、あの竜が狂っている原因の解析を頼む)
《御心のままに、まいますたー。黙示録を解析、スキルを確認、取得します。スキル:憑依を獲得しました。》
(ムラクモもよろしく頼む)
〝ん、わかった。行ってらっしゃい〟
《お気をつけて行ってらっしゃいませ》

 二人に送られ、俺はあいつに会いに行くために自ら意識を暗いそこへと落とした。

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