四ツ葉荘の管理人は知らない間にモテモテです

太もやし

フリーマーケットの出店準備

 夕食後にみんなで話していると、秋乃先輩が思い出したと話し出す。

「来月の第一日曜日にフリーマーケットがあるんだって。みんなで行ってみようよ」

「私、出品側になってみたいです。部屋で本が山を作り始めたんですよね」

 冬海が興味津々に言う。それに春花が乗っかった。

「私もリアルで服を売ってみたいなぁ。秋乃先輩のライブを聞いた後から、結構いっぱい作ってるんだ」

 夏樹先生は嬉しそうに話始めた二人を見て、笑顔になる。

「ジャージならたくさんあるぞ、売れなくても並べるだけでも見栄えはするかもな」

 やっぱりたくさんジャージ持っているんだ。突っ込みを入れたくてたまらない。

「みんな乗り気だね。蒼太くんはどうする? 秋乃は出品できるものがありそうにないなぁ」

 秋乃先輩が言ってくれたことを考えるが、出せるものはなさそうだ。

「おれも秋乃先輩と同じですね。でも三人の売り子みたいな形で参加してみたいな」

 秋乃先輩は目をキラキラと輝かせた。

「秋乃も売り子してみたい! 冬海ちゃんたち、秋乃と蒼太くんがやってもいい?」

 三人は笑顔で頷いた。

「もちろん、お願いします。四ツ葉荘の全員での参加だなんて、楽しそうです」

 冬海はとても楽しそうだ。おれもわくわくしてきた。

「車は私が出そう。私の華麗なテクニックを、蒼太に見せつける時が来たようだ」

 華麗なテクニックとは……夏樹先生は運転が好きみたいだ。

「夏樹先生って、運転する時はサングラスしてかっこいいんだよ。車の外見はごついんだけど、乗り心地はすごいいいんだ」

 おれ以外のみんなは乗ったことがあるようで、口々に夏樹先生と車、技術を褒める。夏樹先生は誇らしげだった。

 そして春花が思い出したと、フリーマーケットの話に戻す。

「冬海、ちょっといい? フリーマーケットの日までに、もっと服を作りたいから、手伝ってくれない?」

 春花のお願いに、冬海はいいよと頷く。春花は周りに花を散らせて喜ぶ。

「いつも本当に助かってるよっ。冬海がいてくれれば百人力だから!」

 こんな風に、いつもみたいな楽しい会話が続いた。



 最近、晩御飯を食べると春花と冬海は、すぐに春花の部屋に向かう。フリーマーケットの準備が大変のようだ。秋乃先輩と夏樹先生が片付けを手伝ってくれるが、二人のことが心配だった。

「おれたちも春花たちのことを手伝えませんかね? 最近、二人共忙しそうだ」

 おれの提案に秋乃先輩は楽しそうに頷いてくれる。

「それいいね! お茶と手が汚れないお菓子を持っていくだけでも、手伝いになるかな?」

 夏樹先生はそれを聞いて、出来の良い生徒を見るような笑顔になった。

「きっとなるだろうな。あと、値段のポップ作りとかも手伝えるかもしれないぞ」

 片付けが終わり、ティーセットを準備し春花の部屋を訪ねる。チャイムを押すと、すぐに春花が出てきた。前髪をピンでとめ、おでこを丸出しにした姿は、とても新鮮で可愛かった。

「休憩にお菓子とお茶を、と思って……あの、おでこ、かわいいな」

 春花は顔を真っ赤にして、おでこを隠す。

「褒めてくれて、ありがとう……みんなも部屋にどうぞ」

 春花の部屋に入れてもらうと、パートナーシリーズが出迎えてくれた。そして冬海の腕の中にも一匹いる。

「冬海、蒼太たちが休憩に、ってお茶を持ってきてくれたよ」

「姉ちゃんが買い置きしていた茶葉なんだけどな。紅茶ならカモミールとレモンバーム、コーヒーどれがいい?」

「ありがとう、みんな。春花も私も丁度休憩したいと思ってた」

 春花はレモンバーム、冬海はコーヒーを選んだ。

 そして二人がお茶を飲んでいる時に、おれたち三人はポップを作ったり、出来上がっている服を袋に入れたりした。服はとても出来がよく、既製品のようで、二人の技術力に驚いた。

 休憩が終わると、二人はまた作業に戻った。的確に縫う様は熟練の職人のように見える。邪魔をしては悪いと思ったおれたちは部屋を後にした。

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