俺が転生した世界はどうやら男女比がおかしいらしい

めんたま

莉央ちゃん宅へGO 前編

「...う...うん?」

窓から差し込む心地よい朝日を顔に浴びた事で睡眠から意識が半浮上する。

「...ふぁあ」

欠伸をしながら時計を確認すると、まだ起きるには少しだけ早い時間だ。
このまま二度寝と洒落込みたい所だが、今日は用事がある。寝過ごしては少々まずいのでここは心を鬼にして体を起こそう。

未だ微睡みの中にいるような感覚のぼんやりとした頭でそう思考した俺はむくりと起き上がる。

おはようございます。
本日は3連休の2日目の土曜日だ。ちなみに昨日の金曜日は祝日で、春蘭高校にて学校説明会があった。一般生徒の俺は本来なら昨日も休みのはずだったのだが、桐生先輩直々のお願いで生徒会に混ざって色々と仕事を務めさせて貰った。
休みが潰れた形にはなったが、結果的には俺は満足している。たくさんのファンの人達の顔や反応を見れたし、みんな可愛かったしね。特にあの2人、蜜柑ちゃんと凪ちゃんがとても良い子だった。蜜柑ちゃんなんて別れ際に急にプロポーズしてくるものだからちょっと驚いた。でも『お嫁さんにして下さい』なんて可愛らしいお願いされたら断れないよね。来年あの子達が入学してくるのが楽しみだ。

さてさて昨日の思い返しはこの辺りにしてそろそろ出掛ける準備をしますか。
眠気を覚ます意味も込めて久しぶりに朝風呂でも入ろう。


「....ふぅ」

少し急ぎ目で風呂を済ませた俺はタオルで湿った髪の毛を拭きながらスマホを確認する。
すると一件の通知が来ている事がわかった。

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莉央:いつでも大丈夫です。

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ふむふむ。どうやら莉央ちゃんからの連絡だったようだ。

そう、俺が先程言った今日ある用事とは彼女の家へ遊びに行く事である。

以前美沙と莉央ちゃんと3人で下校している時、つい美沙とイチャイチャしてしまった事がある。その時に莉央ちゃんが拗ねてしまい、なんとか機嫌を直そうと提案したのが今回のお家デート?である。

向こうは俺の家に来たがっていたようだが今日は家に家族全員揃っているし、俺は莉央ちゃんの家に行きたかったので説得してなんとか納得してもらった。

「じゃあ莉央ちゃんの家に遊びに行ってくるね〜」

鏡で何時もよりも入念に髪型を確認した俺はリビングで思い思いに寛ぐ家族にそう言う。

「は〜い気をつけるんだよ?」

「莉央ちゃんだからって気を許し過ぎたらダメだからね?女は獣!」

「行ってらっしゃいお兄ちゃん!」

上から母さん、姉さん、心愛の順だ。
この3人は以前の俺の弓道大会で莉央ちゃんとの面識があるため、女の子の家へ遊びに行くと言っても何とか許してくれた。
まあそれでも不安はあるのか姉さんは注意を促してくるけどね。

「ふふっ、わかったよ。じゃあ行ってきま〜す」

過保護な姉に少し笑みを漏らしつつ家を出る。

「...あっつ」

これはもう夏だな。
外の空気へ体を触れさせた瞬間確信した。
家の中はクーラーをガンガンにつけていたからとても快適だったが、流石に外はそうはいかないようだ。

「急ぐか」

あまり高い気温の下長く居たくない俺はそう呟き少し歩くスピードを速める。
向かうは莉央ちゃん家だ。

いつも通りならば駅で待ち合わせして合流してから家へと一緒に向かうといった形をとるのだが、今日に関しては事前に住所を教えて貰いそれに従って俺が1人で向かう事になっている。
特に理由はないが単に俺が、可愛い女の子の家へ訪ね、玄関から「いらっしゃい」と素敵な笑顔で迎えて欲しかっただけだ。この思想は恐らく世界で俺にしか理解出来ないに違いない。とても崇高なものなのだ。

スマホで地図を見ながら移動する。
全く便利な世の中になったもんだ。スマホさえあれば迷子になる事はないな。

その地図によると、俺の家から莉央ちゃんの家までは徒歩30分ほどらしい。まあすぐに着くだろう。のんびり行こう。


と、俺は楽観的に考えていたのだが、なんと俺が莉央ちゃん宅へと到着したのはそれから1時間半経った時だった。予定時間の3倍だ。
何故かって?そりゃあ....

「....えっ!?うっそ前原君!?」「カッコいい....」「仁様仁様仁様ぁ!」「生命の神秘」「大ファンです!抱いて下さい!」「2次元の世界から来たという噂は本当ですか?」「『葉月ちゃん愛してるよ』って10回耳元で囁いてくれませんか!?」「髪の毛一房下さい」

...言わなくても分かるよね?
つまりそう言う事だ。
1つだけ述べさせて貰うとすれば、有名人も大変だという事。まあ嬉しいし楽しいからいいんだけどね。

先程までのパニックを思い起こすのを止め、改めて莉央ちゃんの家を眺めてみる。

一般的な二階建ての一軒家だ。しかし何処か先鋭的なデザインも所々に見られ全体的な印象としてはオシャレだな。色合いも淡い水色が主であり、とても可愛らしい。莉央ちゃんにピッタリの家だと思う。

『ピンポーン』

インターホンの呼び出しボタンを押す。

『はい』

それから間髪入れずに返事が返ってきた。
...いくらなんでも早すぎないか?
これは多分室内インターホンの前で待機していたな。

『前原仁と申します。莉央ちゃんの....将来の旦那さんです』

まずは自己紹介から。インターホン越しの声って知り合いであっても誰か判断出来ない時があるから、ご家族の方の可能性も考えてとりあえず名乗ってしまうよね。
あと莉央ちゃんとの関係性を言おうと思ったんだけど、友人というのもちょっと違うので少し遊び心を取り入れて『将来の旦那さん』と称させていただきました。

『....。....は、はい。私は仁くんの将来の、お、お嫁さんです。今玄関の扉を開けるのでちょっと待って下さいね、あ、あなた』

少し間をおいてそんな返答が返ってきた。

....なんだこれ、無茶苦茶恥ずかしい。予想外の返しに少し動揺してしまう。
こ、これが青春!?なんて甘酸っぱいんだ...。くっ、胸がキュンキュンするぜ!
高校生とはかくも、素晴らしきかな。

「ガチャ...」

俺が胸を抑えて苦しんでいると、控えめにドアが開かれた。

「い、いらっしゃい仁くん」

そしてそこから顔を出すは、恥ずかしそうに頬を染めてはにかむ莉央ちゃん。
少し口が緩んでいるのは、さっきのやり取りが嬉しかったのだろうと思いたい。

「こんにちは莉央ちゃん」

「は、はい...。どうぞ上がって下さい」

「お邪魔します」

お互いに少し気恥ずかしい雰囲気になりつつも言葉を交わし、敷地内へと足を踏み入れる。庭の中を通り過ぎて玄関に向かうような構造みたいだ。庭に植えられた木々も家のデザインと合いとても映えている。



では、家へとお邪魔しますか。


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