時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~
マムシを殺した嫡女と尾張の大うつけがどちらも俺を狙ってきました。
「ん……」
視界が突然真っ暗になり、辺りが見えなくなった。
と思ったら真っ白になり、反射して目を開けていられなくなる。
「うぅ……? なんだ?」
感覚はさっきと同じだ。
空間に居た時と同じように恐る恐る目を開ける。
―目の前には、木や草が沢山生えていた。
勿論、自然的な風景でありがたいのだが・・・。ここは一体何処なのだろう。
生憎だが、羽根の生えていた女の子に嫌々持たされた刀とバックは持っていた。畜生。
……風の音、鳥の鳴き声。
本当に、久々に聞いた気がする。やはり、都会に居るとこういった自然の音も全く楽しめない。そう改めて実感する。それに、さっきの空間との居心地に比べたら、泣きそうなぐらいに心地よかった。
と、言うのはほんの数秒のつかの間だった・・・。
「……敵」
「……!!」
声の発信源は後ろから。その方向を向くと、またしても女の子。
もしかすると、俺と同い年なんじゃないかと言うくらい、彼女の身長は長身だった。
これまでに感じた事の無い感覚……なんと言えばいい?
これが……殺気と言うやつなのだろうか。
女の子は此方に槍を向けていた。
「まっ、待ってくれ!! 俺は何もしてないだろ!!」
目の前の女の子は槍を構え、今にも俺を串刺しにしそうな勢いだ。ついに終わるか、この人生……あ、始まったばっかりだった!!
俺は一歩ずつ進んでくる彼女に対して、一歩ずつ後ろへ下がっていく。
「刀は敵……私は刀が嫌い……だから……」
「だから、死んでいただきます……」
こっちでも言ってることが理不尽すぎる!!!
もう追いつかれるのも時間の問題だ! 一体どうする……?
―その時だった。
「ヒヒィーン!!!!」
前方から勢いよく馬が走ってきた。とてつもなく速い。
俺に槍を向けていた彼女は後ろを向くと、殺意の行き先を変えたか馬の方へ全速力で走りだした。彼女も負けないぐらいに速い。
槍を構え、タイミングを見計らい走っている。
よく見ると、馬の上に女の子が乗っている。場上の女の子は、腰に提げていた刀を抜いて槍を構える彼女と相まみえようとしていた。
まさに王道の合戦!!
戦国時代を連想させる!!
馬に乗っている人の後ろからも兵士がついて来ており、戦力の差は途轍もなく酷かった。
ただ、巻き込まれたくない俺にとってはどうする事も出来ない……。
―ついに、二人は斬りあった。
シャキン!と、鉄同士がぶつかり合った後、どちらも駆け抜けて止まった。
馬に乗っていた女の子は、馬からジャンプをして飛び降り、刃を槍の彼女に向け、一方槍の彼女は右腕に槍を巻き付けるようにして、刃の抜きを地面の方へ向けさせていた。
さっきの斬り合いによる出血は、何方もない。
もう一度二人は同時に駆け出してぶつかり合った。今度は両方とも受け抑えて両者一歩とも譲らない展開。
そのまま弾き飛ばす様に二人は一歩下がるが、何度も何度も攻撃を仕掛け、受け止め、弾き返し、攻撃をし、受け止め、を繰り返していた。
まさに大陸と大陸がぶつかり、大地震を起こす一歩手前!衝撃波や影響力のあまり、周りも手が出せない。
だが、同じことを繰り返しているうちに、刀持ちの女の子が槍の女に語り掛けていたのが分かった。
「どうじゃ、お主! 儂の家臣になる気にはなったか!」
聞かれた槍の彼女は、それに反応する。
「信長様、誘いは嬉しいですが……私も気ままな身。今の私には誰かに仕える、そんなことは到底できません。誰も私を受け入れては……」
「何を言っておる! 私が受け入れているではないか!
そこまでして、御主が仕えないのは何か望みがあるのか!?」
槍の彼女は、そのまま一歩離れると槍を地面に突き刺して言い放った。
「運命………です!」
周りにいた人全員が沈黙した。一気に黙った。誰も話す事無く静まっていた。
それは、その言葉が馬鹿馬鹿しいという事ではなく、立派すぎるから。
勿論、第一声は槍女自身であり、それがあるまで沈黙状態が続いた。
「第一、私の能力は制御できる人でなくては、必ず御家を滅ぼしてしまいます」
信長、という人物は腰に掛けていた鞘に刀をしまった。
何も言えないのだろう。
―織田信長、と言えば最初は尾張の大うつけ。朝から晩まで好きなことして楽しんで……。
本気モードになったのは、お父さんの織田信秀が死んでから。桶狭間では今川義元を倒し、天下に名を轟かせた。天下統一の目前で明智光秀に謀反を起こされ、本能寺で自害したと言われているらしいけど……。
あ、1582年という年号の覚え方はイチゴパンツと覚えると良いらしいですよ!
が、しかし……何故こんなところに織田信長が居るのか?何故、生きている?
てか、信長って女の子だったっけ?
すると、信長は此方に気付いたのか、俺の方を向いてキョトンとしていた。
人殺しと言われているが、彼女の顔を見ても全くそんな気はしなかった。
……いやいやいや!人は見かけに寄らないって言うだろ!!
無駄口叩いたら殺される気がする。
女の子だったかは知らないが、その姿でも十分威圧感があった。
「お主……何者じゃ。何故このような場に居合わせている?」
それはこっちが聞きたい。俺は一体なんなんだ!?何故俺は此処にいるんだ!?
「…それはこっちが聞きたいわあ!!何で此処に……」
バン!!!
とてつもなく大きな音が響く。少し進んだ先の方で音がした。
何事か、と言うように周りにいた兵士たちは騒然としている。
「信長様!」
と、一人の兵士が信長の方へ向かい、跪く。
「なんじゃ。どうした?」
信長が聞き返した。
すると、次に兵士はあらぬ事を口にする。
「斉藤道三様が……嫡女の義龍様に追放されたとのこと!
直ちに助けを!とのことです!!」
「なに……? マムシがか!?
…此処まで来ていたのが運だった!! 直ちに兵たちと稲葉山へ向かうぞ!」
「そ、そ、それが……目の前にまで迫ってきており、さっきの大きな音が……」
バン!と、今度は先程よりも近くで音が響いた。
槍やら刀やら弓やらをもって押し寄せている。
その中でも一際目立っている、と言うようよりは馬を飾らせて乗馬している女の子が居た。
「くくく……信長よ、母の首は戴いたぞ。これで美濃は私のものだ!」
馬に乗っている女の子はそう言い、道三と思われる女の生首を投げる。
血が飛び散り、道三の首は転がっていった。
「ど……美濃のマムシを……!!
何故じゃ何故じゃ!! 親愛なる母上を……!!! 何故殺した!! 義龍!!!
どうあろうと許せぬ!!」
感動しながら話を聞いて一つ疑問が生じた。
確か……さっきも言ったけど織田信長って人殺しだったんだよね??
あれ?こんなに人に同情してくれる熱い人だったっけ?もしかして、女の子だから?あれ?えー、歴史ってのは事実が分からなくて怖いなぁ……
「潔い事を言って、貴方だって人を傷つけていないとは言えないんじゃない?さっきまで強引に戦っていたみたいだけれど、そこにいる子の気持ちも考えているのかしら……?」
「……確かに…確かにそうかも知れぬ」
信長は下を向き、黙って義龍の言葉を受け入れていた。
「なら、黙って私に首を取られなさい。そうすれば、貴方は楽になれるわ」
……!!
気付いてしまったのは俺だけかもしれない。さっきまで、何も出来なかったけど……!
今度こそ。
「おい、信長!惑わされるな。お前は催眠を掛けられているんだ!!」
そう俺が言うと、義龍が俺を睨みつけている。何だろう。とても石造の様に動けなくなった気分だ。まるで、メデューサの睨みだな・・・。怖い。
「貴様……!!まさか、私の能力を見抜けると!?
……しかし、無駄な事。終には邪魔者は消すだけ。第一に貴様のような若造に何が出来ると言うのだ!!」
「信長だって、お前を気にかけて言ってくれてた!!まだ名前聞いてないけど、槍の彼女にだってそうだ!!!だから、分かってあげて欲しいんだ!」
信長自身、やっと気づいたような顔でこちらを見ていた。
槍の女の子は、さっき槍を向けた事に対して謝罪しているように思えた。
「信長様に仕えないのは、刀を強制的に使いさせられそうだったからだったけど……」
なにか、小声で言っているようだったが、そんなこと意識している暇はなかった。
義龍は、怒鳴った。
「そんなことは聞いていないわあ!
お前みたいな雑魚の馬鹿に何が出来るのか聞いているのだ!!!」
「義龍、お前を倒せる」
「……」
彼女はそういうと、腰に掛けてあった刀を抜き・・・。
「全軍、あの馬鹿を殺せ!!!」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!
兵士たちは全速で織田軍へ、と言うよりも俺の方へ攻めてきたあああ!!!?
「お主、良く言った!
見直したぞ! 儂の後ろで控えていろ!」
「……ここまで言われてしまっては、恩どころでは済みませんね……!!」
「い、一体どうなって……ああああ!!! やっぱりすいませんでしたああああ!!!」
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