時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~

芒菫

第一回清州評定[前編]


右列の一番奥に座っている扇子持ちのお姉さん。
そう、俺も何度か会話をしている「丹羽長秀」だ。
座布団の上に正座をして、その隣に座っている鬼柴田こと「柴田勝家」と話をしていた。

「あの前に居るのが織田家の重臣達か?」

俺は藤吉郎の耳の近くに手をやり、小声でそう囁いた。
やがて藤吉郎も俺と同じ行動を取り、話をする。

「そうですよ。右手の奥に見えます方が、先程の丹羽長秀様です。その手前が、勝家さんですね。」

「そうだよな。じゃあ、勝家の手前に居る人は?」

「あの人も織田家家老です。滝川一益たきがわかずます様です。事実上、信長様を抜いて数えると種子島の名手の方なのですよ~。」

「え?恵美よりも強い人なの?」

「あ、いえ。恵美さんは飽くまでも織田家家臣としては認められてはいませんし、まだあの方は貴方の家来になった訳でもありませんからね。ただ、あの方が家臣となれば織田家の種子島使いでは一番強い方になると思います!一益様は、鉄砲を使う事もお上手ですが、やはり鉄砲筆頭が向いてますのでね。」

藤吉郎の評価はそのようであった。滝川一益といえば、織田四天王と言われる、織田家重臣の一人なのだが、それと同時に鉄砲の名手でもあったらしい。織田家って何でもいる感じがする。
因みに彼女、一益はそこまで派手な格好はしておらず、髪は縛っておらず、下ろしたままで着物も水色の柄無しで逆に一番目立ちそうな感じ。
正座しながら腕を組み、目を瞑っている姿からすると、少しおっかないイメージがある。

滝川一益たきがわかずます。織田家家臣であり、長い間織田家の重臣として仕えた。
戦に不得意が無く、駆け引きにとても優れており、その強さから「退くも滝川、進むも滝川」という二つ名を持っている。
織田家の大戦の数々に、余ることなく参加してその実力を発揮する。織田四天王の一人であり、関東の取り次ぎ役にもなる。
ここより、とても頭の優れた武将で勇猛果敢だった事が分かる。

「さて、また重臣の方がやってきましたよ。」

藤吉郎はそう言うと、後ろからやって来た人の方を見ながら言った。
見れば、周りの人達は、偉い人が通ると頭を下げている気がする。
これも、上司と部下の関係か・・・。

「あれは、誰なんだ?」

「あれはですね。またまた織田家家老の方です。名前は佐久間信盛さくまのぶもり様です。あの方は織田家家老の筆頭ですよ。信長様の次に偉い方です。」

「ほぇ・・・。凄いな。なんだろ、本当に偉そうな格好をしている女性なんですね」

信盛は、左側にある一番奥の座布団に座った。
ちょっと恐怖の威圧感もありますが、長秀みたいなお姉さんオーラ醸し出してるよこれ。

佐久間信盛さくまのぶもり。織田家家老筆頭であり、信長の父である織田信秀の頃から仕えていた武将。信秀死後は、信長に対して積極的に味方して戦った。彼も一益と同じで、織田家の大戦の数々に余ることなく戦い、功績をあげた。対本願寺戦の総大将に任命される程の人物であり、信長に次ぐ領地を持っていたが、金を一切使わず、身動きを取る事が少なかったことから、信長に「謀反の疑いあり」と見なされ、息子の信栄共々追放、高野山へ隠棲することとなる。
高野山と言えば、後に武田の策士としても活躍し後に上田において、2度も徳川軍を撃退した真田昌幸と真田信繁(幸村)が九度山へ蟄居となる紀伊山地でもある。しかしそれは先の話。

「織田家・・・個性強いなぁ・・・。」

「え?何か言いました?」

「いや、何でもない・・・。」

デジャヴ。前にもこんな会話があった気がする。まぁそれはよしとして、もう一枠だけ席が空いているようにも見えたが、やっぱりそれは空いていた。
途中より、平手殿が入室してきたのだ。

「決まって、平手殿が来ると言うのが毎度始まりの合図だったりするので、覚えておくと良いですよ。」

「へぇ...。利家は来ないのか?」

「きっと犬千代ちゃんもそろそろ......」

藤吉郎の言葉は的中。すぐに利家は入室して、俺の隣へ座った。

「遅れてて申し訳ないでごじゃる」

「はぁ....やっときたのか。一時はどうなるかと」

「そうですよ犬千代ちゃん。でも、ちゃんと信長様と仲直り出来たのですよね?」

藤吉郎がそう問うと、利家は頷いた。
それを見た俺は、心を落ち着かせる為に、溜め息を一つつく。

「ふふ。相良殿にも心配が掛かってるんですよ?」

「この不便者はどうでもいい。」

「不便とか言うな!」

犬千代が目を細めてそう言うと、流石にその言葉は聞き捨てならないので、俺が怒っていった。
藤吉郎が「まぁまぁ」と言いながら、苦笑いをする。 
まだ周りは静まりかえっていなかったので、ジロジロ見られる心配はなかったが、もし沈黙状態だったら凄い目で皆に見つめられていただろう。
と言うか、それ以前に周りからひそひそと何か言われている気がするのだが。

「皆さん相良殿に興味津々何ですよ。男なんてこの家に仕えている人はそうそう居ませんからね。」

藤吉郎が小声で話す。

「え、そんなに少ないの?」

「実はですね、これにも深い訳があるのですよね...」

「応仁元年の話。」

応仁元年?と言えば、応仁の乱が始まった年じゃないのか?

「継承室町幕府、八代将軍様である征夷大将軍足利義政公の後継ぎ問題により、起きた大戦である応仁の乱と言われる戦いが主な原因です。まさに十一年も続いているという、とてつもなく長い間行われた戦いですね。」

「主に山城国で起こる。京都の町は、次第に焼け野原。多数の死傷者。大災害でごじゃる。」

話を聞いていくにつれて、応仁の乱の内容についての話が始まった。
が、守護大名の代理戦争のように始まった応仁の乱の始まり方や、その終わり方等も、聞かされたが何をいっていたのかさっぱりわからない。
ただ一つ言えるのは、それとこれとの関係性。何故男が少なくなったか説明されていなかった。

「それで、なんで男の出生率が下がったんだ?」

「そこなんですよね。」

「え?」

俺が疑問を浮かべながら言い返すと、次第に利家から説明が帰ってきた。
なんか珍しいな。利家からなんて。

「不明」

「え?」

なんか怖いこと言われた気がするのだが。

「だから、不明。」

「それってどういう....」
 
「つまり、突然前触れもなく起こったのですよ。」

「え...」

「応仁の乱が終わってからいきなりでごじゃる。」

詳しく聞くと、なんでも突然起こったらしい。前触れもなく、何故か女の子ばかり産まれるようになり、男の数は激減。それからは女でも家を継ぐのが当たり前のようになり、信長もその一人。
女侍おんなざむらいとでも言ったところだろう。

「....何れにせよ、そうなのか。」

「...まぁ、全く検討がつきませんからね。世の中には不思議なことが多々起こりますからね。そのような物を見つけていくのも楽しいと思いますよ。ということで、気を取り直しましょう。そろそろ信長様が登場しますから。」

そういうと、藤吉郎は背筋をピーンと伸ばして前を向いた。
俺もそれを真似して前を向く。
この部屋に来てどれだけの時間が流れただろうか。俺の体内時計、気付けば今も作動している。
時間は11:35.48だ。この部屋に来て数十分は確実に経っていた。
すると、外の廊下より、足音が聞こえ始める。
ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ。次第に近くへ。近くへ向かってくる。
すると、前にある、俺達の座っている床よりも少し高い畳に置いてある座布団の上へ、一人の女が座り込んだ。
愛用の刀を二本、腰から外して畳の上に置く。
二本とも長さが違う。最初に外した方が長いな。あれが世に伝わっている信長の刀である、へし切長谷部だ。
俺はこの時、まだ知らなかったが、そういう刀名だったとか。
前に座り込んだ女は、一旦目を瞑り、数秒後開いた。

「これより、第一回目の大規模な清洲評定を行う。」

信長の透き通る良い声が、家臣に頭を下げさせた。

「さて、早速じゃが一人の新たな家臣を紹介しなければならないのだ。」

信長はそういうと、周りはざわめき始める。

「静かに。」

長秀が言うと、全員静まり返る。

「裕太よ、此方に参るのじゃ。」

え、俺....?.....俺!?

「は、はい」

慌てた顔をしていた俺だが、すぐ切り替えに移る。

「この者は、昨日の戦いにおいて、なんと父親である美濃のマムシの斎藤道三を討ち取った嫡男の義龍を瀕死にまで追い込み、手柄を与えた。」

「誠にございますか!?」

一人の女の子が言う。信長は頷く。

「じゃから、家臣に迎え入れようと思う。それでよろしいな?」

一同、数秒間だけざわついていたが、次第に落ち着くと、全員可決で俺の採用が決まった。

「くかか、そうか。ならばお主、自己紹介からじゃな。」

「はいはい。昨日より、織田家家臣になりました、相良裕太です!よろしく!」

よろしくお願いしますぞ、等と全員から言葉が帰ってきて嬉しかった。
俺は席に戻ると、藤吉郎にグットマークをされた。親指を立てるやつのことだ。
そんなこんなで、第二関門が始まりを告げようとしている。これは始まりであり、終わりではない。

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