時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~
大将の不在の織田家。
ーここ最近、聞いた言葉がスッと頭を横切る。
「今川公は、それまた偉大で今の天下で一番力を持っていると歌われている人なんだって~。」
何時の事だったか。そこまで遠い昔の話ではない。
そう、約数時間前。数時間前に信勝がそう口にしていたんだ・・・。
「天下人って事か?」
清州城へ向かう道中、信勝が今川家の話を始める。
今川義元と言えば、上京途中に桶狭間で信長の奇襲を受けて殺されたって聞いたけど、偉大なのかは俺の知る由も無いことだった。
「そ、そうなのです。駿河の家督相続より成り上がり、今川仮名目録っていう分国法を新しく制定したり、甲相駿三国同盟の締結者でもあって、政治面でもとても活躍している武将さんなのです・・・ですよ!」
藤吉郎が途中途中詰まって話すのは何かの補いかそれとも言いにくいことでもあるのかな?
信勝の始めた話に、藤吉郎が義元の説明をし始めた。
「今川仮名目録・・・?」
藤吉郎の言った今川仮名目録に疑問が生じたからか、思わず言葉に出てしまう。
それについては、信勝が補足してくれた。
「今川仮名目録っていうのは大雑把には分国法なんだよね。それぞれの国で決められた決まり事みたいなやつ。東国で今のところ一番新しい分国法だから、それを見本にして作っている分国法もあるらしいよ。とくに、今川家に関してはその分国法発案によって、守護大名っていう立場からを戦国大名って言う立場を明らかにしたっていう面で大きく影響してるかな。」
「今川家って守護大名だったのか!?」
と、俺はこれまで今川が守護大名だったのだと知らなかったので、跳んで驚く。
それを見て、信勝は面白がって笑った。
「ははは。たーくんったら、驚き方が男の子だね。そう。今川家は由緒正しい家柄なんだよ~。」
「太原雪斎。」
突然話し出す前田犬千代利家ちゃん。さっきまでずっと黙りっぱなしだったのに本当に、突然話し出されるとちょっとビックリする。ちょっと所じゃなかった。心臓が止まりそうだぁ~。
太原雪斎は聞いた事がある。確か、義元の教育係だったとか。
「太原雪斎は、義元の教育係の坊さんだろ?」
「あ、はい。その通りですが、他にも仮名目録にも大きく関わっていたり、甲相駿三国同盟の立案者でもあったり、時には戦場で才を使ったりなど、多才な方なのです。」
さっきから、藤吉郎→信勝→利家の順で話が進んでいっている気がする。
藤吉郎は俺の質問に回答すると、義元様義元様....と言っているのかなんだか聞こえないが一人でぶつぶつ何かを言い始める。
「藤吉郎、大丈夫か?」
心配なので声をかけると、突然ビクッと肩を上げてゆっくり此方を向いた。
少しホラー染みている。
「だーいーじょーうーぶーじゃーなーいーでーすー。」
いつもとは違い、余裕のない暗い表情で藤吉郎はそう答えた。
やっぱりホラー染みているじゃん!
「甲相駿?」
質問攻めになってしまって申し訳ないのだが、疑問に思ったことを次々と俺は投げかけていく。
その都度、黙り込んで話を聞き、知識を蓄えるのが俺のやり方でもあったりする。
「そう。甲相駿三国同盟は武田と北条と今川の同盟なんだよ。甲相駿の甲は甲斐国から取られて、相は相模国、駿は駿河国からなの。甲の意味は武田が甲斐国の国主だから。相の意味も、北条家が相模国の国主だから。駿の意味も、今川家が駿河国の国主だからだね。3つの国の国主が結んだ同盟だから、甲相駿三国同盟って言うんだよ。」
信勝が、指で国の形を教えてくれた。甲斐は山中、今の山梨県で相模は今の神奈川県、駿河は今の静岡県の東部に該当するそうだ。
三人からの貴重な知識を得ることが出来てとても良かったのだが、話はそこまでだった。
・・・今の状況と前の話。比べてみれば参考になりそうな話でもある。
例えば、一つの案として思い付いたのは、武田に仲介役になってもらって、停戦状態にしてもらうとか。
ただ、甲斐の本拠地である躑躅ヶ崎館という城は尾張からも遠く、山中を進まないといけない為に、攻めてくるまでに間に合いそうもない。
と、浅野長吉の今川軍についての報告を聞いた信長の動きが止まった。
よく見ると、あまり顔色がよろしく無い様だったが・・・。
「た、竹千代・・・がか?」
信長はかすれた声で長吉に話した。長吉は頷くと、信長は正気を失ったように、座っていた座布団から後ろに倒れる。
「の、信長様!!!」
信盛が大声で信長に寄り添うと、他の家臣達も急いで駆け寄っていく。
「そんな・・・。竹千代が・・・。今川の人質だとは聞いたが・・・。」
と、何度も竹千代竹千代と誰かの名前を呼んでいる。
その後、信長の様態が悪くなってしまったので、信盛が負ぶって部屋まで運んでいく様子が見れた。
相当深刻な状態らしい。どうやら、熱が出てしまっているため、すぐに行動を起こすことは出来ない状態だった。
軍議が行われたのも、ちょうど夕日の暮れる辺りの話。
信長が居ない今、指揮を取るのは家老筆頭の佐久間信盛。
藤吉郎や利家も、さっきよりも言葉数が少なくなっていた。大将不在の状態で、全員が突然倒れて指揮の取れない信長が居ない事から指揮は無造作に下がっているのが捉えられた。
信盛等の重臣達は勝手に話を進めて行ってしまっている為、俺も口の出しようが無かった。
ただ、そこの中で一人、颯爽と戦場から帰還した女の子が居た。
「ふぅー。結構、敵陣を搔き乱せた気がするに。」
滝川一益、この女は一体何者なんだ・・・。
何百人しか居ない兵士を連れて敵陣に乗り込んでは痛手を与えてくると言う、奇跡的な事を何度も繰り返しているそうだ。おまけに、敵の情報さえも入手してくる所も天才的だった。
「丸根砦、鷲津砦は共に攻撃されてたで。向こうの人達も、何とか抑えてくれてるみたいやけど、心配だに。」
彼女はそう話していて、兵士を連れて本丸に戻ってきていた。
鉄砲を腰に二丁装備し「根性」と書かれている少し血が付着しているハチマキを頭に巻き、信長、利家とは違う傾奇者がもう一人居る感じだった。
「もし暇な奴が居たら、わっちと一緒に敵陣に乗り込んで気持ちをスッキリさせないにー?誰でも構わないで!」
また、本丸で特攻募集の勧誘をしている所からも、稀に見る天然さんなのかそれとも本気でやっているのか・・・。全く分からない。
ただ、そこで首の袖を掴まれた時には考えが甘すぎたと確信した。
「よし兄さん。一緒に大海原へ風を感じに旅しに行くよね!?よしよし、じゃあ出発だに!」
「ちょっと待って!俺何も言ってないし何も感じてないよ!?」
突然首の裾を掴まれて、引っ張られていくこの理不尽さ!デジャヴじゃないけどなんか同じこと無かったっけ!?
「藤吉郎!利家!助け~」
また、もがき合がいても全く通用しないと来た。助けを求めようとすると、口を押えられて呼吸できなくされた。
うぅ・・・死ぬ。
俺の死も近い、と感じた次の瞬間。
「ちょっと待ちなんし。」
一人、重そうな甲冑を着た女の子が俺の目の前に現れた。
「むむ?確か・・・。」
一益が目を細くして、俺の目の前に居る女の子を見つめるが、名前が出る前に、本人が自己紹介を始めた。
「私は毛利新助。私も、その旅に混ぜてはくれまいか?」
ななななな、、、ななな!!俺を助けてくれるんじゃねぇのかよぉ!!?
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