時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~

芒菫

斬撃と衝撃の甲州越え。 (二)

「え~?それじゃあ私たちは相良殿の御供に行けないの~?」

鉄砲の手入れをしていた恵美が、俺の言葉を聞くとまるで弾丸が飛ぶような速さで心内を明かしてくる。

「信長様がお願いだなんて・・・一体何を・・・?」

当然、仕方ないと立ち直らなければいけないことを知っている彼女、智慶。恵美の次に友義は顎に手をあてて呟く。落ち着いた表情でそう言っているが、考えている姿を見ると、少し悲しそうな顔をしているのが分かった。やっぱり、智慶も一緒に行きたかったのだろう。

「信長のことだから、雑用かなんかじゃない?はぁ・・・俺もう本当に嫌だわぁ・・・」

「まぁ、相良殿は信長様にボロ雑巾扱いされるくらい好かれてると言うことだよ~。さ、気にしないで行ってください」

え、恵美ちゃん!?立ち直り早くない!?そしてフォローが少し酷いんだけど!?・・・思うけど、恵美も智慶も、最初の頃とは違ってキャラが変わって来たよね。生活をしていてもう一ヶ月も経ったのか・・・。色々あったな。それでも、日々を大切にしていくことが、自分にとって今できること。だから、一緒に行きたい。そういう思いが強かったんだけど・・・信長に心情なんて通用しないのは最初から承知済みである。

「泰能は一緒に来るか?信長は泰能のこと言ってなかったけど・・・」

何時ものように家事をこなしている泰能の姿が目に留まったので、俺は彼女に話しかけた。振り向いた彼女は、いつものように日常で目にする美しい泰能。

「さ、さが・・・。い、いや。私も残る」

彼女は最初、何かを言おうとしたようだが、口ごもると、自分の意志を簡潔に述べていった。ちょっと赤面していた様だが、気にせず家事を続ける。どうしたんだろうか?

「そーそうですかぃ。はぁ・・・結局ボッチだなぁ・・・それで、ころくだけど」

ちゃぶ台の方で頭を乗せて目をつぶりながら・・・寝ているのか?

「私は川並衆の筆頭だぜ?お前らみてぇなちっぽけで安売りで馬鹿みたいな奴等に付き合ってる暇があったら、溝掃除してた方がマシだね。しかも、私はぁ藤吉郎組だ。お前の下にもつかねぇし、ここに居座りもしねぇ」

なんだ、起きていたのか。とりあえずボロクソ言われたがホッとして彼女を見た。そう言えば、川並衆の頭って言ってたの忘れてたな。確かに、藤吉郎組なのは分かる気がする。体からしてそうだもん。一人頷いていた俺に、前後ろから痛い視線が送られてきた。

ー山地を突っ走りながら、出発前の出来事を思い返した。三日も経っちゃったけど、皆ちゃんと生きてるかな?俺が居ないからって死んでないと良いんだけど・・・あ、変な意味でじゃなくて生活リズムが狂っていないかって話だよ!

「・・・!」

勝三郎は、手を横に翳すと俺と信勝に止まるように合図した。

「また山賊か?」

茂みになんとか隠れて息を絶つ。覗ける場所を探して、覗いてみると山賊の群れがそこら中をうろついていた。群れって言うのは、なんだか人じゃないみたいな言い方になってるけど・・・勿論、言葉の通りにもはや人ではなく腐れ豚と化している。

「・・・男の下半身など興味が無い。し、しかし」

勝三郎の額から汗が滲み出ていた。俺は唾を飲んでその状況を観察し続ける。

「・・・ぷっ。あの器の小ささと来たら笑いが込み上げてきてぇっ・・・ぷっ、はっはっはっは」

「おいおいおいおい、いくら何でもそれはいぃすぎだろぉがぁ!?」

勝三郎の渾身の笑い声が、辺りに広く響き渡った。器の話をされ笑われればれば、当然男が怒り出すのも必然的だ。女にはそう言ったところのデリカシーが無いのか!?いや、逆に下ネタばっかり口ずさんでる今時思春期の男共に言わせてもらう!!どれだけ女子が迷惑してるか考えてみやがれ!!お前もだぞ!!作者ァァ!!

「ん、笑うなよメス豚!」

一人お腹のぷっくりしている男が、もはや放送禁止用語と化した言葉を勝三郎に向かって言い放った。その時点で、勝三郎は茂みに隠れる、ではなく立ち上がっていて、俺達の居場所は特定されてしまっている。

「あ?誰がメス豚だと・・・?第一、メス豚とは何処の方言だ。少なくとも、お主等の様に礼儀を疎かにして人前では胡麻を擦っては上司の機嫌しかとれない、ましてはとる事も出来ない馬鹿とは違う。私は織田家家臣、池田勝三郎恒興なのだからな!!」

おい勝三郎!?お前何身元を人にばらしてやがるんだよ!?あーもうめちゃくちゃだ!!

「因みに、私は織田勘重郎信勝だよ~皆よろしくね~」

信勝は茂みから跳び上がってはい出ると、自分の名前を名乗っては楽しそうに媚びっていた。ここはアイドルの握手会場かなんかかよ!?
しかし、俺の甘さは逆に勝三郎の罠に嵌められたと言える。

「く、くそ可愛い!!お前ら、この子達を持って帰るぞ!!そして・・・」

そういった一人の山賊の首が、無造作に空中にひらりと舞って飛んでいく。一体何が起きたのかと言わんばかりの速さだった。誰がそんなことを・・・?と、思った瞬間、勝三郎が居なくなっている事に気付いた。

「か、かしr」

また、次に喋った男の首も一瞬にして空中に飛んでいく。目にも留まらない速さで次々に血を吹いていった。

「相良殿、先を急ぐことは通りに叶っている。急いで武田のもとまで行くぞ!」

平然とそう言っては、太刀を両手で握り山賊に一人刀を向ける彼女。言われた通り、俺は信勝を御姫様抱っこしてその戦場から突っ走って行く。

「おぉっ」

信勝は驚いていたのだろうか。しかし気にせず走る。その後を追うように勝三郎も必死こいてついて来ていた。
山道と言うのは、過酷さを感じるにはピッタリだ。富士山には、俺も登山に行ったことがある。山を登りながらそんなことを考えていた。山を頂上を見ていると、何故か達成感と不安が両方込み上げてくる気がするんだ。富士山の様に道の整備や指定が無く、ただ勝三郎の背中を追いかけていく形になっているが、勝佐ビロウに関しては、アスレチックを楽しむ感覚で登っている。

「はぁはぁ・・・」

日差しが俺の体力を奪っていった。

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