時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~
川中島の戦い (四) 甲斐の虎。
「...裕太殿」
勘助との別れに泣いていた晴信は、立ち上がりって俺の名前を呼ぶ。
即座に言葉を返した。
「...なんだ?」
彼女は、裾で涙を拭うと、此方を向いて唇を噛んでいた。
まだ少し、涙混じりな顔で居た。
「...実は」
何かを言い出そうと口走るが、一度躊躇うように口を止める。
「実は...ぐっ......次郎も...」
次郎?次郎とは、晴信の妹のことだ。その次郎が一体どうしたんだ?彼女が再び何かを言い出すまで俺は口出ししないようにしていた。
「こんなこと言っても、信じて貰えないだろうけど...」
焦らした彼女は次にこう言った。
「私は人の死が......分かる」
人の死、とは。死なんて言葉、誰でも使える。使えれば、人に発する事さえできる。死と言うのは、生の対義語であり、即ち生を絶つ。生命が途絶えることを指すだろう。人間には寿命と言うものがあり、その寿命と言う概念の中、生き続けている。寿命は誰にも分からない。ある日突然、無意識に赤の信号機から一歩を踏み出し、トラックに引かれる事さえ、決められていた寿命なのかもしれない。
その寿命が尽きる事を死、と考えた場合、晴信はいつ死ぬのかが分かるという結論に至るわけだが...。さて一体どういうことなのだ?
「...それって、俺が死ぬ時も分かるってこと?」
「...少なからずも、近い未来なら...分かるのさね。それも...本当に親しい仲なのならだけど」
となると、まだ3日並みの長さじゃ分からないのか?いづれにしても、能力なのは間違いない。
「...それが本当だなんて...限らないのさ...朝三暮四。ぐすっ...そんな......そんな目先の事ばっかり考えてたって...楽しみたくても...楽しめない...じゃない......でも、でもこれまで...その能力は全て...全て本当のことを指してた。みんな...みんな...親しい家族も友人も......みんな...」
「......もしそこに小鳥が二羽、川を泳いでいて、両方とも川の流れに飲まれていったとする。まだ二羽とも助かる。でも、どちらかしか助ける余裕がない。晴信だったらどうする?」
ふ、と頭に浮かんだ事をそのまま口に出してみる。泣いていた晴信は、再び裾で涙を拭う。
「......片方」
「五十点」
「...片方」
「五十点」
「...片方っ」
「五十点」
「だって片方しか... 助けられないだろう」
「五十点」
俺はこれまでに吐いた事の無い大きな溜め息を吐いた。それと同時に、少し強めに話していた晴信の瞳から涙が流れることは無くなっていた。
「.........例え自分が死んだとしても、助かる命が多いなら、その為に戦う。正直、孫子の兵法なんて全然わかんねぇ。でも、わかんねぇなりに、俺にだって自分のやり方がある。勘助は、武田の為に晴信の為に、自分の命を投げ出して戦おうとしてる。次郎も武田の為に晴信の為に命を投げ出して先手大将を引き受けた。なら俺は、彼奴らを死なせない。晴信の大事な家族......なんだろ?」
「裕太殿は織田の使者。戦にはだせ」
「なら今すぐ俺が死ぬときを悟ってみろ。悟って、死ぬときを言ってくれ。言ってくれるなら、俺は戦場に行かない」
彼女は黙って口を開かない。
「じゃあ俺らは仲良くないってか。少しの時も一緒に過ごしてないってか。
...勘助は間違ってない。それに答えてやれてねぇのは晴信、お前の方だ。甲斐の虎?最強の騎馬隊?武田の異名ってのは、出鱈目だったのか。こんなに弱っちい主君でよく皆たたか...ッ」
パチンッ!と、晴信は右手で一発俺の左頬をビンタする。感情的に本気でやったのか、結構痛かった。
....べっ、別に俺はドMって訳じゃないからな!叩かれて喜んだりしないし!
すると晴信は左手で俺の胸ぐらを掴み、下を向く。
「...武田、嘗めんな。武田、嘗めんな!武田家臣は皆家族。甲斐の虎、天下を狙う私の名前は武田晴信!これからは誰一人だって、絶対に見殺しなんか...!」
晴信が決意を述べた後、俺は一笑した。勿論、晴信も一笑する。
「...完全復活、だな」
「思いっきり泣いた。思いっきり怒った。もう絶対に挫けない。私は私の道を行くのさ」
と、彼女は言って掴んでいた俺の胸ぐらを離す。
晴信の進む道は、武田街道まっしぐら~なんつって!
「...本当に大丈夫か?」
完全復活と言っても、流石に気持ち的に無理があると思った俺は彼女に保険を掛けるように呟いた。
しかし、彼女は首を縦に振って「大丈夫」と言うと、戦場を見据えた。
「...裕太殿、本当に戦場に出ても大丈夫?」
すると、突然晴信がさっきの話を掘り返す様に問い掛けてくる。
「...あぁ、うん。なんで?」
と、どういうことか聞き返す。彼女は少し微笑むと、此方を向いて
「そろそろ大洲目と行こうじゃないかと、思ってね」
大洲目、晴信の秘策とは一体なんなのか......?
勘助との別れに泣いていた晴信は、立ち上がりって俺の名前を呼ぶ。
即座に言葉を返した。
「...なんだ?」
彼女は、裾で涙を拭うと、此方を向いて唇を噛んでいた。
まだ少し、涙混じりな顔で居た。
「...実は」
何かを言い出そうと口走るが、一度躊躇うように口を止める。
「実は...ぐっ......次郎も...」
次郎?次郎とは、晴信の妹のことだ。その次郎が一体どうしたんだ?彼女が再び何かを言い出すまで俺は口出ししないようにしていた。
「こんなこと言っても、信じて貰えないだろうけど...」
焦らした彼女は次にこう言った。
「私は人の死が......分かる」
人の死、とは。死なんて言葉、誰でも使える。使えれば、人に発する事さえできる。死と言うのは、生の対義語であり、即ち生を絶つ。生命が途絶えることを指すだろう。人間には寿命と言うものがあり、その寿命と言う概念の中、生き続けている。寿命は誰にも分からない。ある日突然、無意識に赤の信号機から一歩を踏み出し、トラックに引かれる事さえ、決められていた寿命なのかもしれない。
その寿命が尽きる事を死、と考えた場合、晴信はいつ死ぬのかが分かるという結論に至るわけだが...。さて一体どういうことなのだ?
「...それって、俺が死ぬ時も分かるってこと?」
「...少なからずも、近い未来なら...分かるのさね。それも...本当に親しい仲なのならだけど」
となると、まだ3日並みの長さじゃ分からないのか?いづれにしても、能力なのは間違いない。
「...それが本当だなんて...限らないのさ...朝三暮四。ぐすっ...そんな......そんな目先の事ばっかり考えてたって...楽しみたくても...楽しめない...じゃない......でも、でもこれまで...その能力は全て...全て本当のことを指してた。みんな...みんな...親しい家族も友人も......みんな...」
「......もしそこに小鳥が二羽、川を泳いでいて、両方とも川の流れに飲まれていったとする。まだ二羽とも助かる。でも、どちらかしか助ける余裕がない。晴信だったらどうする?」
ふ、と頭に浮かんだ事をそのまま口に出してみる。泣いていた晴信は、再び裾で涙を拭う。
「......片方」
「五十点」
「...片方」
「五十点」
「...片方っ」
「五十点」
「だって片方しか... 助けられないだろう」
「五十点」
俺はこれまでに吐いた事の無い大きな溜め息を吐いた。それと同時に、少し強めに話していた晴信の瞳から涙が流れることは無くなっていた。
「.........例え自分が死んだとしても、助かる命が多いなら、その為に戦う。正直、孫子の兵法なんて全然わかんねぇ。でも、わかんねぇなりに、俺にだって自分のやり方がある。勘助は、武田の為に晴信の為に、自分の命を投げ出して戦おうとしてる。次郎も武田の為に晴信の為に命を投げ出して先手大将を引き受けた。なら俺は、彼奴らを死なせない。晴信の大事な家族......なんだろ?」
「裕太殿は織田の使者。戦にはだせ」
「なら今すぐ俺が死ぬときを悟ってみろ。悟って、死ぬときを言ってくれ。言ってくれるなら、俺は戦場に行かない」
彼女は黙って口を開かない。
「じゃあ俺らは仲良くないってか。少しの時も一緒に過ごしてないってか。
...勘助は間違ってない。それに答えてやれてねぇのは晴信、お前の方だ。甲斐の虎?最強の騎馬隊?武田の異名ってのは、出鱈目だったのか。こんなに弱っちい主君でよく皆たたか...ッ」
パチンッ!と、晴信は右手で一発俺の左頬をビンタする。感情的に本気でやったのか、結構痛かった。
....べっ、別に俺はドMって訳じゃないからな!叩かれて喜んだりしないし!
すると晴信は左手で俺の胸ぐらを掴み、下を向く。
「...武田、嘗めんな。武田、嘗めんな!武田家臣は皆家族。甲斐の虎、天下を狙う私の名前は武田晴信!これからは誰一人だって、絶対に見殺しなんか...!」
晴信が決意を述べた後、俺は一笑した。勿論、晴信も一笑する。
「...完全復活、だな」
「思いっきり泣いた。思いっきり怒った。もう絶対に挫けない。私は私の道を行くのさ」
と、彼女は言って掴んでいた俺の胸ぐらを離す。
晴信の進む道は、武田街道まっしぐら~なんつって!
「...本当に大丈夫か?」
完全復活と言っても、流石に気持ち的に無理があると思った俺は彼女に保険を掛けるように呟いた。
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