人違いで異世界に召喚されたが、その後美少女ハーレム状態になった件

あまたつ

第34話 波乱の予感がする件

 それは一瞬の出来事だった。

「ザストローマー!!」

 リーナの元に迫り来る巨大な魔法、「ザストローマー」。
 その魔法は、平均的である俺の身長ほどの半径を持つ巨大な球状の魔法だ。
 その大きな見た目からは想像がつかないほどの速度で、標的の元へ向かう。

 アリサがザストローマーを放った瞬間、リーナが少しだけ体制を低くしたのが見えた。
 そして、何故か顔に不敵な笑みを浮かべていた。

 ……その笑みの真意を、俺は数秒もしないうちに目の当たりにすることになるとは。

「死ねええええ!!!」

 声のした方へとっさに目を向ける。
 視線の先では、アリサが狂気に満ちた顔で叫んでいた。怒りで顔が真っ赤になっている。

 そして、俺は放たれたザストローマーの行方を追うようにして、視線をリーナの元へ戻す。

 その時には、既にザストローマーはリーナの目の前まで迫っていた。
 ザストローマーの淡い青の光に、リーナが照らされる。手を伸ばせば届く距離。

 その瞬間、リーナはザストローマーをかざすようにして、手のひらを向けた。

「スプラッシュ!!」

 あっという間の出来事だった。
 リーナがかざした手のひらから、白い光が放たれたかと思ったら、ザストローマーが一瞬にして軌道を変えたのだ。

 それは、軌道を変えたと言うより……

「……跳ね返した?」

 リーナがニヤリと口元を歪ませる。垂れた髪の毛で目元が見えないが、それがまた、彼女の狂気さをさらに醸し出していた。

「……死ぬのはあんたよ、金髪頭」

「な!?」

 リーナ目掛けて飛んでいったはずのザストローマーの急激な急旋回。
 さすがのアリサも、これには反応しきれなかった。
 気づいた時にはもう遅い。ザストローマーは、スピードを緩めることなく、アリサに激突した。

『ズドーン!!!』

 とてつもない轟音。ザストローマーの直撃の影響で、身構えなければ飛ばされてしまいそうな突風が吹き、砂ぼこりが舞う。

 俺は風に飛ばされないよう、前傾姿勢をとった。
 片目だけで、直撃した方向を見る。

 だんだんと風がやんでいき、それと同時に砂ぼこりも無くなっていく。
 視界がだんだんと鮮明になっていく。

「…………は?」

 ゆっくりと現れた目の前の光景に、俺は間抜けな声が漏れた。

「……こ、これ、どういう事ですか...?」

 この対戦中、ずっと岩陰に隠れていたルイが、大きな目をさらに見開いていた。

 ……てか、お前久しぶりに見た気がするな。

 って、そんな事言ってる場合じゃねえぞ。

 俺たちの前に現れた光景、それは……

「おい!誰なんだよお前は!?」

 一人の少女が、ボロボロになったアリサを抱き抱えていた。
 少女の腕の中で力なく垂れているアリサの腕。そこから生気は感じられなかった。

 そして、その少女の背後には、空間を割くようにして開かれたゲートのようなものがあった。
 そのゲートの周りは淡い紫色で照らされていて、晴れているはずの青空を、曇った夜空のように見せてしまう程に異様な雰囲気を放っていた。

「…………」

 リーナがその光景を前に、ゴクリと唾を飲み込む。

 よく見れば、その少女はアリサに蘇生魔法をかけているようだった。
 その少女は、見たところ小学生低学年くらいの身長で、ふわふわと空中に浮いている。

 長い沈黙。誰一人として口を開こうとしない状況だ。

 そんな中、少女が口を開いた。

「……弱い。弱すぎるのじゃ」

 低い声で言う。

「我に仕える者がこれ程までに軟弱だとは……。不覚じゃ……」

 綺麗に整えられた少女のおかっぱが、ゆらゆらと揺れる。

「まあいい。じきに貴様らの元へ我の手下が来るじゃろう……。その時には……」

 揺れる前髪の隙間から、赤々と光る瞳が見えた。
 そして、不敵に笑みを浮かべながら、少女は告げた。


「貴様らを…………殺す」

 憎悪が混じったような、低い声だった。

コメント

  • かオース⤴︎

    ヤッタゼイエ介さんの投稿だ
    ワッホイ\(・ω・\)(ノ・ω・)ノワッホイ
    更新頑張って下さいそして(~^∀^~)オモロイ

    2
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