勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

プロローグ

 暗闇が永遠と続く空間の中、暗闇の底へ落ちていく。
 抗うことも出来ずにひたすら下に落ちていく。
 ボロボロになった体からは鮮血が大量に溢れ出し、全身が叫び声を上げるほどの痛みと
 死の恐怖に怯えつつも、高理《こうり》ソラは憎んだ。

 勝手に訳の分からないこの世界に呼び出し
 能力がないからと言って半殺しにして亜空間に放り出した女王を――。 
 命令だから仕方ないと言って無慈悲に槍で体を貫いた兵士を、
 お前の事が気に入らないと言って能力を渡さなかった神を憎んだ――


・・・・

 高校生活。
 楽しいと思う人もいれば、面倒くさいと思う人もいる。
 きっと大半の人は後者の面倒くさいと思っているだろう。
 永遠に土日が続けばいいのにと――

 それは俺、高理ソラも同じだった。
 ただ、俺の場合、学校が面倒くさいと言う事ではなく、
 朝起きるのがとても苦手で、起きたとしてもベッドの上でゴロゴロとしてしまうのだ。
 例えば、朝の六時に目覚ましの力で強制的に夢の中から叩き起こされたとしても
 そこから動くことはなく、無駄な時間を貪り続け気が付けば
 朝のHRの始まる時間になっていたなんてことは良くあることなのだ。

 そして今日も何時ものように朝のHRが始まる時間に登校して、
 先生に「遅刻だぞー」と言われ、「すいません」と軽く謝り
 駆け足で教室まで行き、勢い良くドアを開けた。

――ガラガラ、ドンッ!

 勢い良くドアが乱暴に開かれた瞬間教室にいる皆が驚きの表情を浮かべ視線が集まる。
 この光景は何時もの事で見慣れており、クラスメイト達も慣れているはずなのだが、
 やはり人間という生き物は突然の大きな音には弱いらしい。
 音の正体が俺だと分かったクラスメイト達はまたお前かといった顔を浮かべたり
 ニコニコと笑みを向けてくる者もいる。
 それらを無視しながらごく普通の様に自分の席に向かった。


「おい、ソラ。お前また遅刻したのにもかかわらず
 何も言わずに席に着こうとしてんじゃねえよ……」

 一番後ろで窓の横と言う最高の場所にある自分の席に着き、
 椅子を引いて座ろうとした瞬間、担任の声が飛んで来た。
 また、この担任は俺に文句を言ってくるのか……
 ここはいつも通りに答えるか。

「遅刻だと?……あぁ、そうか。
 この世界の時間はアチラ・・・の世界とは流れが違ったな」

「はあ、確かお前昨日は未来から来て……
 今日はアチラの世界か――後で反省文書いた紙五枚提出な」

「何だと!?貴様それでも教師かっ!この――」

「あー、それ以上言ったら十枚な」

「はい、すいません」

 今のやりとりで何となくわかる人はいるだろうが、俺は厨二を拗らせた痛い高校生だ。
 この先生は毎回同じやりとりをしてくれる意外と優しくノリの良い先生。
 ――名前は確か……田中さんだ。多分。
 担当教科は世界史でバスケ部の顧問をやっているらしい。

 朝のHRが終わるとこの席に必ずと言っていいほど二人の男女が寄ってくる。
 朝一に友達が駆け寄ってくるのは悪い物ではなく、非常にうれしいことだ。
 本当に友情関係には恵まれていると思う。
 こんな厨二を拗らせていても普通に接してくれるのだ。控えめに言って最高だ。

「ま~た、遅刻かい。さすが遅刻魔だな」

 ニコニコと笑みを浮かべながら肩に手を回してきた
 この少年は新羅《しらぎ》かおるという。
 見た目はイケメンで性格も良い奴だが、
 実はこいつ重度の幼女好きである。つまりロリコンだ。
 こんなさわやかなイケメンからは想像できないが、真実はいつも残酷だ。

「うるせ、何が遅刻魔だよ。
 せめて遅刻魔にかっこいいルビを付けてくれ。かおるロリコンさん」

 遅刻魔と言われ、少しだけ言い返したくなり意地悪な言葉を発すると、
 みるみるうちにかおるの額に汗が垂れ始める。

「おい、お前!誰かに聞かれたどうするんだよっ!!」

「かおるは、ロリコンだったのか」

 真顔でそう言いながら此方に来たのは佐山《さやま》凛《りん》だ。
 こいつも見た目はイケメンだが女だ。口調も男みたいだが、実は女だ。
 女子からも人気があるが、女だ。男子の制服を着ているが、それでも女だ。
 何故か学校側が彼女が男の恰好をすることを許しているのだが、女だ。

 俺も最初の頃は男だと思っていたが、一度不慮の事故で着替えを見てしまい、
 その時に女だと分かったのだが、着替えを見てしまったという罪悪感に押しつぶされ、
 その後、着替えを見てしまった事を正直に話すと別に構わないと言って許してくれた。
 心も広くて男みたいだが天使だ。

「そうだぞ。こいつはRORIKONだっ!」

「おお、そうか!では、かおるの事はロリコンと呼ぼう」

「何でだよ!!」

「うるせえぞっソラ!!」

 突然、怒鳴られてしまった……これも何時もながらの事だ。
 怒鳴り声を出したのはこのクラスのヤンキー的な存在、
 石田《いしだ》奈央《なお》と言う。凶暴な女だ。
 スカートを他の生徒よりも短くしており、何がとは言わないが非常に危ない。

「本当にあいつソラの事嫌ってるよな」

 かおるが奈央には聞こえない様に小声で俺達にそう言ってきた。

 確かにそう思われても不思議ではない。
 奈央は何かあった時何時も俺のせいにしてくる。これは事実なのだが、
 あいつが俺の事嫌っている訳ではないのだ。
 奈央は昔からの友達であって今では親友だ。
 恐らく、このクラスの中で一番俺の事を知っているのはあいつだろう。

 あんな性格になってしまい、当然ながら友達は少なく、言葉を掛ける相手が存在せず、
 ああやって俺に当たってくるのだ。根はものすごく良い奴だという事は信じて欲しい。
 昔からの付き合いの奴はもう一人いるのだが、そいつちょっとアレだ。

「うるさいだと?じゃあ、貴様の怒鳴り声はどうなんだ!」

 言われっ放しというのも嫌だから俺はクラスに一人はいる奴みたいな返しをした。
 実際は此処で何も言わず無視してしまったら彼女に放課後や昼休みに連れ去られ
 人気のない場所で泣きながら何故無視したのか問い詰められてしまうのだ。
 そう、これは彼女なりのコミュニケーション、言葉のキャッチボールなのだ。
 周りからすると一方的な殺人級のドッジボールなのだが、俺はそのボールを見事に返す。

「ああ!?そういうお前だって――」

「喧嘩は良くないですよ」

 そのキャッチボールに審判さんが登場だ。
 満面な笑みを浮かべて会話を遮って来たのはこのクラスの委員長。
 名を高梨《たかなし》結《ゆい》と言う。
 彼女はこの学校の美女ランキング一位で、
 女神と呼ばれ誰にでも優しく接して何でも自分から率先してやる優等生だ。

 ちなみにランキングは一部の男子が勝手につくったものだ。

 だが、こんな優等生にも裏の顔がある。
 実は彼女は俺と同じ重度の厨二病なのだ。
 彼女と二人きりになった時は何時も厨二トークで盛り上がる。
 女子なのになかなか話の分かる。良い友だ。

「ふっ!我が友よ。これは喧嘩ではないぞ!
 これは――そう、世界の終末ラグナロクを懸けた戦争だっ!」

「な、世界の終末ラグナロクですって?
 あっ、――コホン、意味のわからない事を言わないでください。
 それよりもそろそろチャイムが鳴ります席に着いてください。
 あとシャツを出しているとだらしないですよ」

 厨二ワードに反応してしまった結であったが、
 直ぐに誤魔化し、風紀委員みたいに服装の事を指摘してきた。

「おっと、俺とした事が見っとも無い姿を見せてしまったな」

「なーにが、俺とした事がだよ。お前何時もシャツ出てるだろ」

「ああ、確かにソラは何時もシャツ出てるな」

「だろ?なのに此奴誰かに指摘されるとしっかりと直すんだよな。
 だったら初めからシャツ出すなっての……」

 いや、俺も出したくて出してる訳では無いんだが……
 何時も急いでる感を出すため、教室まで走って行くからその時に出ちゃうんだよな。

「ちょっと、貴方達!チャイム鳴りますよ!!」

「おっと、委員長がお怒りだ。ほらほら、お前等早く席に戻れ」

「あいよ」

「じゃあ、また」

・・・・


――カチッ、カチッ、カチッ

 最初は喋り声が聞こえていた教室は今では誰も言葉を発しておらず、
 時計の針が動く音だけが響いていた。
 おかしい、とっくに時間は過ぎているのにチャイムが鳴らない。
 それに先生も一向に来ない。みんなもこの異変に気が付いているようだ。

 そして、誰かが異変のことにを口にすると、クラスメイト達が一斉にざわつきだした。
 何か起こったのだろうか、そんな疑問を浮かべて視線をずらすと
 不安そうな顔で此方を見ていた奈央と目があった。目で何かを訴えてきている。
 怯えているようにも見える彼女に大丈夫だと微笑み向ける。

「ちょっと、先生の事呼びに行ってきますね」 

 流石委員長だ。だれも動こうとしない中、率先して動いてくれる。
 ゆっくりと歩き教室のドアを開けようとした――が、ドアが開くことはなかった。
 ガタンガタンと揺れるだけであり開くことはなかった。

「あれ?開かない……」

 傍から見れば何やってんだあいつ。新手のボケか?
 と思ってしまうのだが、彼女が人前でふざけたりはしない性格なのだ。
 戸惑っている結を見た一人の男子生徒が立ち上がり、結の隣に行き、声を掛けだした。
 
「ちょっと貸してみな」

 ちなみに彼の名前は前谷《まえたに》トモと言う。
 野球部のムキムキ野郎だ。何かあるごとに上半身の服をはだけさせる変態だ。
 残念なことにこいつがもう一人の親友なのだ。

 筋肉だけが取り柄のトモがドアを開けようとしたが、それでもビクともしなかった。

「おい、トモ。お前までなにをしてるんだよ」

 俺はその光景をみて思わずつっこんでしまった。
 筋肉ムキムキ野郎がドアに苦戦している光景はとてもシュールだ。

「いやいや、ボケて無いぞ!本当に開かないんだ」

「はぁ?」

「ソラもやってみろよ」

「ふっ、良いのか?俺が力を使えばその様なドアなど木っ端――」

「木っ端みじんにするのは良くありませんよ!」

「はい」

 結にセリフを遮られてしまい、若干不快な思いをしつつ、
 俺はドアの前に移動して手を掛け、ふん!と開けてみた。

 トモにセリフを遮られてしまい、
 若干不快な思いをしつつ、
 俺は扉の前に移動して開けてみた。

「――っ!?」

「なっ?」

「本当だ……でも、まぁ良いんじゃね?」

「確かにな……」

 先生が来なかったら授業もしなくて済む。
 なんて良い事なんだろ。

「良いって……本当にそう思ってるんですか?」

 クラスの大半が嬉しそうな顔をしながら、
 スマホを弄ったり本を読みだしたり寝始めたりし始め、
 そんな光景を見て委員長の結がそんな事を言った。

「え?」

「この扉が開かないって事はずっと此処から出られないんですよ?
 お腹が痛くなったらどうするんですか?
 お腹が空いたらどうするんですか?」

「お、おう……」

「おう、じゃありません!」

「分かったよ。どうにかするから。
 頑張ろうな、トモ。」

「ああ。」

 あまりにもガツガツと言ってくる結に負け、
 俺とトモはクラスの皆と協力して扉を開ける方法を考える事にした。

 それから暫くどうにか扉を開けようと努力した。
 窓を割ってみようともしたが、
 まるで見えない壁でもあるかの様に阻まれた。
 他にもスマホで電話を掛けようともしたが何故か圏外になっていて
 どこにもつながらなかった。 

 全て無意味だった。

「んーどうしたものか……」

 皆が戸惑っていると、何の前触れもなく唐突に放送が流れ始めた。
 全ての教室でも同じような事が起こっているのだろうか。
 それともこの教室だけ異常な状態に陥ってしまっているのだろうか。 

「あーあーあー」

 その声は少年ぽい声だった。
 皆その声を聞き、なんだなんだ?とさらに戸惑い始めた。
 教員の声ではない聞き覚えがない声だ。

「やっと繋がった!――おっと、喜んでいる場合じゃなかった。
 えっと、今この声が聞こえている君達。
 君達は勇者に選ばれました!おめでとう。喜びなよ」

「は?何いってんだ?」「いきなりなんだ?」「餓鬼っぽい声だな」
「ここから出しやがれ餓鬼!」

 クラスの男子達がそう言い放った。
 教室から出られ無くてイライラが積もり、
 口が悪くなり暴言を言って八つ当たりをする奴もいた。

「はあ、口が悪いなー。黙ってよ」

――ッ!?

 謎の少年が黙ってよと言った瞬間、本当に喋れなくなった。
 声を出そうとしても喉が動かない。
 それ以前に体そのものが動かなかった。

 何だよ、これっ!
 どうなっていやがる!

「ふぅ、静かになった。じゃあ、説明するよ~
 君達にはこれから勇者として世界を救ってもらうよ。
 そして、なんと!君達には僕からスキルを一つ授けるよ!
 これから一人一人面談をするからね~。じゃあっ!」

 はぁ?こいつは何を言っているんだ?勇者?世界を救う?
 俺が言うのもアレなんだが、こいつはあれだ。
 現実との区別が付かなくなった可哀そうな子なのか――なっ!?

 少年の雑な説明が終わると、突然クラスメイトの竹山が消えた。
 それから数秒おきに次々とクラスメイトが消えていった。
 そして、皆が消えて俺は一人ぼっちになり、
 それから数秒後真っ白な空間に移動した。

「――っ!?」

 どこを見ても、真っ白な空間だった。
 目の前には白い翼を生やした青髪の少年が立っていた。
 見た目的に年齢は12歳位だろう。

 何だこいつ。

 まず最初に出てきた感想がそれだった。
 厨二病を長年やっている身からしてみれば少年の恰好は余りに不釣り合いだった。
 小柄にその倍程ある巨大な翼を生やしている。
 バランスが取れておらず非常にダサく見えてしまう。
 正直に言うと恰好悪すぎるのだ。

 そんなことを思っているのみるみる内に少年の顔が歪んで行った。
 
「お前、気に入らないからスキルあげないわ。じゃあね」

「え?」

 たった一言。それだけだった。
 こいつ心を読んだのか!?と思うよりも先に少年の姿が消えた。

――突然目の前が真っ黒になった。

 気がつくと、周りにはザワザワと騒いでいるクラスメイト達がいた。
 周りを見渡し、全員いる事を確認した。
 そして、ここはどこだ?と思いさらに周りを見渡した。

 まず目に入ってきたのは、奥にある巨大な天使らしき像だ。
 かなり大きい、おそらく縦に15mはあるだろう。
 そしてその像の周りの壁には色々な絵が描かれていた。
 草原、川、海、火山、山など他にも沢山描かれていた。

 部屋を見渡していると突然木の扉が開き、
 明らかに偉そうな女が入ってきてその後に沢山の兵士が入ってきた。

 女の頭にはティアラらしきものがあった。恐らく女王か何かだろう。
 兵士達は槍などを装備していて、それを見たクラスメイトの一部が脅えていた。

 ……本当に異世界にきたのか。

 と心の中で思いながら、近くにいた結に話しかけた。
 理由は簡単だ。
 結はこういうファンタジー系が大好きだから良く異世界物の話をしていたからだ。

「おい、我が友よ。これはアレだよな?」

「そうですね、我が友よ。これはアレで間違いなさそうですね」

 アレ、つまり異世界、ファンタジーの世界の事だ。
 俺と結は二人っきりの時に一々ファンタジーだの言うのが面倒だから
 アレ、と言う事にしている。

「やはりそうか。じゃああの女王見たいな奴は……」

「恐らく、テンプレに近い事を言いますね」

――コホン。

 女王らしき人物が咳払いをすると先ほどまで騒いでいたクラスメイト達が静かになった。

「勇者の皆様、こんにちは。
 私はここリザリル王国の女王、カーラ=リザリルと申します。
 この度は、この世界を救うためにわざわざ召還に応じてくれてありがとうございます」

「応じてだと?強制的に連れてこられたぞ!」「ふざけるな!」「さっさと返しやがれ!」

 一部のクラスメイト達は困惑し、一部が言葉を発した。
 それを聞いていた女王は涙を流した。

 うわぁ、本当に結の言った通りの事いいやがった。
 それにしても……あの泣き方は無いだろ……
 明らかに泣き方が不自然なモノだった。
 俺にはそれが嘘泣きだと直ぐにわかった。
 何故って?そりゃ、恋愛ゲームを沢山やってるからだよ。

 だが、嘘泣きだと分からない連中は申し訳なさそうにしていた。中には謝っている奴もいた。
 
 おいおい、嘘泣きに騙されるなよ!
 あー、見てるこっちが恥ずかしい……此処は、ガツンと言ってやるか。

 流石に、見てられなかった俺は女王に向かって言った。

「おいおい、今時の女王様はこんなに 嘘泣き・・・が下手糞なのか?」

 俺は、あえて嘘泣きの部分を強調して言った。
 その言葉を聞いた女王は顔を真っ赤にし、嘘泣きをしながら睨み付けてきた。
 普通ならこんな事は言わないだろう。俺自身、言いながら物凄い羞恥心と後悔を覚えていた。

 周りのクラスメイトから謝れだの色々と言われたが、
 俺は気にしなかった。気にしたら色々と弾けてしまうし、
 どうせ女王は俺の事を無視して話を続けると予想していたからだ。

 これは結からよく借りて読んでたラノベで良く見る流れだな。
 まさか、自分がラノベの主人公見たいな事をする日が来るとはな……

 そして、女王は予想通りにソラの事を無視して話を続けた。

「此方の手違いで勇者様方には大変ご迷惑を掛けました。
 でもこの世界を救うまでは帰ることが出来ません……」

 それから女王は色々と説明をした。
 この世界から帰るには魔王を倒す事、この世界の状況など色々な事を説明していた。

「それでは、皆様にはステータスを表示していただきます。
 ステータスは今からお配りするプレートを持ってステータスと念じれば出てきます」

 全員にプレートが渡され、皆一斉にステータスと念じた。すると――

=============
名前:ソラ=コウリ
年齢:15
種族:人間
レベル:1

体力:100
魔力:60
攻撃力:20
防御力:50
素早さ:20
運:10

スキル

能力

称号


=============

 うぉっ!凄いな……
 流石異世界だ。

 ごく普通だと思われるステータスが表示された。他の人のステータスが気になったので隣にいる結のステータスを見せてもらった。

=============
名前:ユイ=タカナシ
年齢:15
種族:人間
レベル:1

体力:1000
魔力:2000
攻撃力:600
防御力:900
素早さ:200
運:20

スキル
大回復《ヒール》Lv1
火《ファイア》Lv1

能力
神の加護:LV1

称号
勇者
=============

「は?」

 俺は結のステータスを見て唖然とした。
 あまりに差がありすぎる。

「どうしました?我が友よ」

「あ、ああ。えっとな、俺のステータスを見てくれ」

 結は唖然とした。そりゃそうだろう。
 結から見るとソラのステータスは雑魚同然なのだから。

 結はスキルはもらわなかったの?
 など色々聞いてきたので、正直に全て答えた。

「あの、ショタ神がっ。我が友をよくも……くそったれ」

「おーい、キャラ崩壊してるよ」

「あっ――どうするんです?我が友よ。このステータスだと流石に……」

「ああ、わかっているさ――」

 これは非常に不味い状況だ。先ほど、調子に乗って女王の事を煽り、
 それでこのステータスの低さだ。間違いなく普通の対応はされないだろう。
 最悪の場合はひっそりと退場させられる可能性だってある。

「皆様、今からステータスを確認するので出したままにしておいてください」

 女王は一人一人のステータスを確認した。そして俺のステータスを見てニヤリとして、
 「あなたは、ここに残っていてください」
 と言って他の人のステータスを確認しにいった。

「はい、ステータスの確認が終わりました。
 流石勇者様ですね、皆さんとても強いです!一人を除いてですけど。
 では、これから部屋を移りますのでそこの兵士についていってください。
 勇者ソラは少しお話があるので残ってくださいね」

 この野郎。わざわざ皆の前で言う必要あるのかよ。
 さっきの仕返しか?器の小さい奴め。

 みんなが移動しているときにかおる達が心配そうに話しかけてきたが、
 俺からは説明しないで後から結に聞いてくれと言って別れた。
 そして部屋には数十人の兵士と女王と俺だけになった。

 沈黙が空気をより一層重くする。見知らぬ土地に味方がいないこの状況。
 冷や汗が止まらずにあふれ出す。そして女王が口を開けた。

「勇者ソラ。貴方のステータスは雑魚同然です。
 勇者としての最低ラインも超えていません。正直に言ってそんな雑魚を養うお金はありません。
 なので貴方には消えてもらいます」

「消えてもらうだと?」

「はい。文字通り、貴方にはこの世から消えてもらいます。
 雑魚を召喚したとなれば他国や国民から批判を受けることになります。
 なので、貴方は誰にも知られず一人で死んでもらいます――やれ」

「は?」

――グサッ!

「――っ!」
 
 突然背中に激痛が走った。
 何だ?と思い背中を見ると槍が突き刺されていた。

「!?」

 その槍は俺の体を貫通して床に突き刺さっていた。
 一瞬何が起きているのか全く理解が出来なかった。当然のことだ。
 いくら異世界もののラノベを読んでいようが、平和な国に住んでいた俺にとって
 これはあまりにも衝撃的な事で余りにも悲痛なものだった。
 そして、それに気づいた瞬間、数本の槍が俺の体中を貫いた。

――ッ!!

 痛みのあまり声が出なかった。そして刺さっている槍が抜かれ、
 血しぶきがあがり、周りを鮮血の絨毯へと変えていく。
 何も考える事が出来ない。只々痛みに支配され声にならばい悲痛な叫びが漏れる。
 
「よくやりました。……死体処理とか面倒なので後は亜空間に放り込みましょうか」

 女王はそう言って、魔法か何かで暗闇を出し、
 俺の事を亜空間に蹴り落とした――

コメント

  • カントリー

    どうやったら、こんな繊細な文章が書けるのか知りたい程、羨ましいです。陰ながら応援します。

    0
  • 爆益ファーウェイ

    表紙のイラストに物凄く惹かれました!

    0
  • そらの@

    登場人物がみんなクセが強くてキャラクターがたっている。ただ一気に紹介されると読みながら覚えるのが大変なので、主人公と絡みつつ徐々に登場人物が増えていくと自然に覚えられて読みやすいと思う。ただストーリー的には面白そうで続きが気になる作品。

    0
  • ノベルバユーザー602604

    面白かったです。

    0
  • ノベルバユーザー601490

    キャラがたくさん出てきて最初から楽しいです。いきなりクラスごと異世界召喚からの、異世界から抹消。まさかのこれから転生?!面白いです。

    0
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