勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

大規模な戦いに乗じて大賢者田中を救い出そうぜ作戦の伝え忘れ

「あっ、そういえば忘れてた……」

 夢の世界から帰還し俺はいつも通りの朝食を送っていた。
 ヘリム達に夢の内容を伝えるか伝えないかで迷いながら
 モグモグと豪華な料理を頬張っている時にふと
 とある事を思い出した。

「どうしたのじゃ?トイレ行き忘れたのかのう?」

「やだな~ソラ君はそんなドジっ子じゃないよ
 きっと僕との約束を思い出したんだよ」

 二人が食事の手を止める事無くそう言ってくるが、
 答えは全く違っており、俺が忘れていたことは
 エクスマキナのロウォイさんに昨日の件、
 大規模な戦いに乗じて大賢者田中を救い出そうぜ作戦
 を骸骨さん経由で伝え忘れていた事だ。

『なんだそのセンスのない作戦名は』

 えぇ、可笑しいなこれでも結構考えたんだぞ?

 ちなみにポチとの接続は切っていないので
 今も尚考えている事などが互いに伝わっている。

『そのままの様な気がするが……気にしないでおこう』

「ね~ね~ソラ君!結局なにを忘れてたの?」

 ポチと心で通じ合っていると
 先程の発言が気になっていた様子のヘリムが
 少し不満そうに頬を膨らまして聞いて来た。

「んとね、大規模な戦いに乗じて大賢者田中を救い出そうぜ作戦を
 俺の能力を取り戻してくれたあのエクスマキナさんに
 伝え忘れてたって事だよ」

「何じゃその作戦名は、何のひねりもないのう」

「僕は分かりやすくて好きだけどな~。
 そんな事だったんだ~あっ、確かそいつってアルデンに住んでるんだよね?」

 やはり俺のネーミングセンスは分かる人には分かるのだ。
 流石はヘリムだ。

「そうだよ」

「あ、じゃあ丁度良いね!」

「ん?」

 ヘリムが何やら嬉しそうにしながらそう発言し
 一体何が丁度良いのかと疑問を浮かべる。

「うむ、妾とヘリムで昨日話していたのじゃが、
 今日はアルデンに買い物に行こうと思っていてのう」

「おお、良いね」

 確かに丁度良いかもしれないが、
 骸骨さん経由でも十分なんだよなぁ……

『おい、ソラが行かないと我も行けないではないか!
 あそこは良い物が沢山あるんだ行くぞソラ!!』

 うぅ、分かったよ。

 ポチにそこまで言わせるとはアルデンは
 相当良い品揃えをしているのだろう。
 ポチの熱意を感じ俺は行くことを決意した。

 それよりも、
 エキサラが買い物なんて珍しい!
 そもそも自分から家を出て行くのを始めて見る気がする。

「じゃあ買い物のついでに家に寄っていく、
 それにしても買い物なんて珍しい気がするけど
 何を買うつもりなんだ?」

 エキサラと言えば何もない所から
 ポンポンと食材を出して来る食糧庫的な存在にもなっているため、
 食材関係ではないのだろうと予想。

 武器などはエキサラに必要ない物だし、
 後考えられるのは服とかおしゃれ関係かな?
 意外にもポチもおしゃれしたがっていたし可能性はあるよな。

『意外で悪かったな』

 あはは、でもすっごく似合ってたよポチ。

『ふん……』

 似合っていると言われて嬉しかったのだろうか
 少し上機嫌の鼻笑いをした。

「下着じゃ」

「あー下着ね……意外」

「む?どういう事じゃ?」

 そう言えばご主人様も女だという事を
 忘れかけていた為、下着を買いに行くという事を聞き
 少し意外に思ってしまった。

 下着って一応おしゃれなのかな?
 勝負下着とかあるらしいしおしゃれっていえばおしゃれなのかな?

「いや、気にするな、何でもない」

 いやー、ご主人様が下着付けているなんて意外だな!
 なんて事を言ってしまったら俺の命が
 幾つあっても足りない目にあわされるだろう。
 そもそも命があるのかどうかすら分からないけど。

 急ではあるが出掛ける事が決まり、
 朝食を済まして早速準備に取り掛かった。
 何時もは準備なの内に等しいのだが、今回は特別だ。

「骸骨さんいるか?」

 場所は何処でも良いのだが何となく寝室に行き、
 ベッドに腰を下ろして骸骨さんを呼び出した。
 骸骨さん達は姿を消しているが俺の周りに常にいてくれているため、
 いるか?と聞くのは少しおかしいのかもしれない。

 ……常に居るってことはもしかしたら
 あの夢の中でも呼んだら応えてくれるのかな?
 今度行ったときに試してみるとするか。

 ゾンビVS骸骨さん

 中々面白い事になりそうだ。

「呼びました~?」

「お、おう、呼んだぞ」

 目の前に現れたのは姿は変わらないが、
 何時もの骸骨さん達とは全く違い少し軽い口調の骸骨さんが現れ驚いた。
 堅苦しい口調も嫌いではないが、
 たまにはこういった軽いコミュニケーションも良いのかもしれない。

「どうしたんですか?」

「えっとな、ロウォイに伝言を頼みたい。
 詳しい時間は分からないがこれからそっちに行く
 と、伝えてくれるか?」

「はーい!分かりました!
 では失礼しますね」

 骸骨さんの姿が消えるのを見届け、
 準備が終わった俺は皆の下へと向かう。

「勇者になれなかった俺は異世界で」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く