召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜
第17話 家を買う
気持ちのいい朝日を浴び次第に意識が浮かび上がってきて俺は目を覚ました。
ふと目を開けると、そこにはフェリスが顔があった。俺の顔を覗き込んでいたらしい。
俺が急に目を覚ましたのに驚いたのか、スススっと部屋の隅までフェリスは逃げるように移動した。
「フェリス、おはよう」
「……お…は…よう、と…や」
無表情といわれる家精霊の中で、フェリスは少しだけ表情を緩ましたように見える。いや、もしかしたら俺がそう感じるだけかもしれないが。
俺が身体を起こしずっとフェリスを見ているのが照れ臭いのか嫌なのかわからないが、そのままフェリスは姿を消していく。
「挨拶できるようになっただけマシか……」
着替えをし、寝室を出るとキッチンへと向かう。昨日市場で買った食材で朝食を作るために。さすがにいつまでもゲーム時代のアイテムに頼ってはいられない。
卵とベーコンらしき肉を取り出し、フライパンで焼いていく。
この世界では魔道コンロが主流となっており、この屋敷にももちろんある。魔力を蓄える鉱石を組み込み魔力を込めることで使用ができる。繰り返し使えるのである意味エコかもしれない。
そんな事を考えながらも準備をしていき、出来上がった料理をダイニングへと運んだ。
一人だけのテーブルで料理を前に手を合わせてから食べていく。
冒険者ギルドの換金もまだ終わっていない。少しの間はこの街のこと、国の事などを調べたかった。
「フェリスいるか?」
俺一人の部屋で声を掛けると、自然とフェリスが姿を現す。
「今日出かけてくるけど、当分は調べものをしていくつもりだ。数日空けることはないからな」
俺の言葉に少しだけ頬を緩ませたフェリスは頷いた。
朝食を済ませたあと、次元収納の中身を確認して時間を潰していく。
名前だけはわかるが、その効力については実際に見てみないとわかららない物もあったし、不要倉庫の中身など全て覚えているものではない。
……狂戦士装備以外も持っていて正解だったな……。その前に俺、戦士職につけるのかよ……。
そんな事を考えながら中身について把握していった。
昼前になり、商業ギルドへと向かう。フェリスには夕方には戻ってくるからと伝え、コクヨウの世話も頼んだ。
商業ギルドの中へと入ると、すでによ幼女賢者はサミィと打ち合わせをしていた。
俺の事を見つけると、笑顔になる。
「トーヤ! こっちじゃ」
「トーヤさんおはようございます」
「ナタリー、サミィおはよう」
空いている席につくと、サミィが説明を始めた。
「では、あの屋敷はトーヤさんに譲るということですね……。わかりました。それでは名義変更の書類をお持ちしますので、少々お待ちください」
サミィは一度席を外すと、ナタリーが本を4冊テーブルの上に置いた。
「これが約束の物じゃ。1冊は……まだ使えぬと思うがのぉ……」
「ありがたくいただくよ。これで――」
「お待たせしました!」
お礼の最中で、サミィが書類を持って戻ってきた。
「それではこれに二人ともサインをいただけますか。あと、名義変更の手数料として、商業ギルドとして5万ギルを手数料として頂いております」
日本にいた時の仲介手数料みたいなものかと思いながら、俺は銀貨を5枚テーブルに置く。
そして、ナタリーと共に3枚の契約書にサインを書いた。
「これで屋敷はお主の物じゃな。たまには屋敷でご馳走せい」
「……たまにならな……”アレ”は出さないぞ?」
「むぐぅ……そんな……」
ナタリーは昨日の味を忘れらないようで、一人落ち込む。
二人だけにしかわからないやり取りに首を傾げながらも、サミィは説明を続けていく。
「では、手数料をいただきます。この書類の1枚は商業ギルドに保管させていただきます。建物の管理上必要になりますので」
3枚のうち1枚を商業ギルドが預かり、各自に1枚ずつ渡された。サミィはその書類を持ってまたカウンターの中へと入っていく。
そしてすぐに戻ってきた。
「これで、名義変更の手続きは終了となります」
「それじゃ、俺はこれで失礼するよ」
俺は一人席を立つがサミィによって止められた。
「トーヤさん、トーヤさんはまだ手続きがあります……」
すでに名義変更も終わったし、他に頼んだものはなかったはずだが……。
俺は元に席にまたつく。
「家を購入したことになりますので、屋敷の税金を納めてもらわないといけません。土地資産税ということになります」
……税金……。日本では賃貸に住んでいたから、払ったことはないが、確か同僚が家を買った時にそんなこと言っていたな。
それも仕方ないと思い、俺は頷いた。
「それでは今年の分で、――200万ギルお願いいたします」
「?! ……200万ギル!? そんなに高いのか……」
その金額に驚き思わず立ち上がる。
払えないといったらウソになる。それにしても高すぎる気がする。いや……相場はわからないがあの屋敷だとしたら仕方ないことなのか……。
「普通は驚きますよね。でも、あの規模の屋敷を維持している人にとっては大したことない金額となっておりますので……。今まではナタリーさんが払っておりました」
「そうじゃ。誰も住むこともできずにいたから、家賃も入らんしのぉ……。赤字を垂れ流しておったのじゃ。そこでお主が家精霊に認められたからのぉ。丁度よかった」
ナタリーは笑みを浮かべる。
借りていた場合なら月に15万ギル。1年借りたとしても180万ギルだ。それが買った場合は年に200万ギルの税金を納める必要がある。
考えた末に一つの結論が出た。
「――――騙された……」
がっくりと肩を落とす俺にサミィはさらに追い打ちをかけた。
「もし、売買を希望する場合でも、家精霊が住む家ですと、家精霊に認められない限り売買契約は結べません。ナタリーさんの場合は……あの、その……かなり昔に契約したので、その頃はそのような規約がなかったものと思われます……」
数十年間、家主が認められなかった家がやっと家精霊に認められ、決まったのだ。
次の家主が簡単に見つかるとは到底思えない。
しかもフェリスの事は俺も気に入っている。
俺は諦めて金貨2枚をテーブルに置くのだった。
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コメント
ノベルバユーザー295751
カード払いになっていたのでは?