召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜

夜州

第8話 ステータス


「――――馬車だ」

 振り返った俺は当たり前の返事をする。
 いや、自分で見てもどうみても普通の馬車ではないとわかる。
 アブソーバ、タイヤそして中の仕上げ状況を見ても、現代日本風の仕上げの良さを感じる。
 でもそこを認める訳にもいかない。

「……こんな立派な馬車をお持ちとか、も、もしかして王国の貴族の方では……」

 戸惑うシャルに首を横に振り否定をする。

「……ただの冒険者だ。だから他言無用で頼むと言ったはずだ」
「あ、はい……そうですね。深くは詮索はいたしません」
「それでいい。朝食の準備をしよう。って言っても、またスープとパンで申し訳ないが」
「暖かい料理をいただけるだけで感謝です」

 言葉を切り、テーブルに料理を出していく。

 しかし、シャル以上にアルは何かを聞きたそうにウズウズしている。

「どうかした……か?」

 俺が聞くとアルは目を輝かせながら口を開く。

「あのぉ……あの馬って黒曜馬バトルホースですよね……」
「確かにそうだな……俺の相棒だよ……」
「やっぱり!? 騎士にとって黒曜馬バトルホースに乗るのが夢なんで――、あ、わ、私たちの国の騎士の……一般的な夢なのです」

 正直、誤魔化しているつもりだろうが、バレバレだろう。今は鎧を脱いでラフな格好をしているが、どう見ても騎士であり、昨日も”近衛”と自分で言っていた。
 俺は苦笑しながらも聞き流し、相槌をうつ。
 席に着き、食事を始めてからも、二人からの質問は止まらなかった。

「それにしてもトーヤ様、同じ年くらいに見えるのに随分落ち着いていらっしゃいます」
「私もそれは思いました。でも、オークとの戦いを見てもーー」

 アルは昨日の戦いを思い出したのか、また頬を染めた。
 自分の事を話すわけにもいかない。三十をとっくに過ぎていると説明しても納得できるはずもない。

「一人で冒険者として暮らしているからもしれない。今まで色々あったから……」

 俺の言葉で察してか、アルが話題を変えてきた。

「それにしてもトーヤ様はかなりの高レベルだと。あの数のオークや兵士を相手でも問題ありませんでしたし、きっと高名な戦士なんでしょうね」
「アル、トーヤさんは魔法使いでしょう。アルを助けた時に使ったのは風魔法でしたし」

 二人の食い違う意見に、アルとシャルは見合わせる。

「いや、回復術師プリーストだ」

「「えっ!?」」

 俺の言葉に二人は信じられないような顔をする。俺は懐から出したカードをテーブルに置いた。
 手にとって見た二人はさらに驚きの表情をする。

「本当に回復術師プリーストだ……、しかもまだレベル17!?」

 あ、昨日の戦いでレベルが上がっていた。

「信じられない……私よりも低いなんて……。それで昨日の戦いを……」
「そのレベルで私達を守るために、あれだけのオークを相手に立ち向かって……、トーヤ様感謝のしようがございません」

 想像以上にレベルが低いと思ったのであろう。アルは唖然とし、シャルは恐縮している。
 返してもらったカードを懐にしまうと、俺は首を横に振る。

「問題ない、いつも一人で戦っていたからな……。対人戦殺し合いは初めてだったが……」

 初めての殺しにもっと引きずるかと思っていたら、一晩寝たら受け入れられていた。
 これから先、冒険者をしていたらいつか同じような状況になるかもしれない。
 今のうちに受け入れられた事は大きかった。

 食事を済ませ、荷物を収容すると、出発の準備をする。
 アルにはそのままの格好でいてもらった。帝国の紋章が入った白銀の鎧など着ていたら、街に入る時に問題が起きる可能性もある。
 納得したアルの鎧を受け取り、次元収納ストレージに仕舞い込み、馬車に乗るように伝えた。

「街までは半日で着くと思う。それまでは中で我慢してくれ」

 二人は馬車に乗るとその乗り心地に感銘を受けていた。

「この馬車の乗り心地、貴族、いや王家の馬車より良いかもしれません……」
「本当にそうですね……」

 その言葉に安心した俺は、コクヨウに馬車を繋ぐ。

「コクヨウ、街まで頼んだよ」

 首を撫でるとヒヒーンと鳴き、納得してくれた様子であった。
 俺は御者台に乗り、コクヨウに合図を送ると、ゆっくりと馬車は進み出す。
 馬車を引いているか、人を乗せているからか、その進みは普通の馬車より早い程度であった。
 御者台で俺は自分のステータスを開く。

 ◇ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー◇
 【名前】トウヤ・キサラギ 
 【種族】人間族 【性別】男
 【年齢】16歳 
 【職業】賢者(回復術師プリースト 魔法術師マジシャン
 【称号】召喚されし者
 【レベル】17 
 【特殊スキル】神眼 全属性魔法使用可 全スキル取得可 次元収納ストレージ
 【スキル】属性魔法 特殊魔法 剣術 体術 無詠唱 
 ◇ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー◇

 自分のステータスを見てため息を吐く。
 魔法術師マジシャンをレベル100まで上げ、極めた時に、同じように転職の画面が出た。
 これで“戦士系”になれると思っていたが、表示された職業はゲームでは三次職であり、凶戦士バーサーカーと並び立つ魔法職の最上位の職業であった。
 選択肢のない俺は素直に賢者を選んだ。しかし賢者になってからは、次元収納ストレージに入っていた経験値100倍アイテムは使えなくなり、次元収納ストレージの肥やしになっていた。
 冒険者カードはレベルは自分の魔力を感知し、レベル表示されるが、職業については登録時のままであった。
 転職を出来るという事を誰も知らないのであろう。
 その前にレベル100まで上げられる人がいるのかもわからない。
 改めて自分のステータスを人に見せられないと思う。

 ……俺、戦士になれるのかな。
 そんな思いをしながら馬車は進んでいく。

 そして三時間ほどでフェンディーの街が見えてきた。





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コメント

  • 椎名ななせ

    全スキル取得可とは別にストレージを書く意味は何があるんですか?

    1
  • ノベルバユーザー309271

    主人公目立ちたいの?目立ちたく無いの? 作者ももう少し考えて書いて欲しい。

    1
  • ノベルバユーザー30469

    (´☆ω☆`)ナルホドネ!でもサイコパス化してない?主人公

    2
  • 豆大福16724

    なるほど、ギルドカードのレベルの謎が解けました!

    5
  • 伊予二名

    ああ、魔法使いと僧侶で賢者。ドラクエスタイルの賢者なんですね。タイトル回収ですね(*´∇`*)

    2
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