召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜
第4話 余計な一言
時は少し遡る。
俺たち四人はメイドの案内で応接室へと通された。
並んで席へと座り、メイドか各自の前に紅茶を置いていき、礼をして退出していった。
カップを手に取り紅茶を一口飲みホッとため息をつく。
……アルもこんないいとこの令嬢だったとはな。それにしてもシャルは皇女だし、ナタリーは元筆頭宮廷魔術師、アルも領主の孫で近衛騎士団長の娘。
――なんで俺がこの場所にいるんだろう。どう考えてみてもおかしい。
そんな事を考えていると、扉が開かれアルの祖父と兄が入ってきた。
席を立とうとしたら手で制され、そのまま二人は対面に座った。
「まず、敵を退却させた件は聞かせてもらった。心より感謝する。わしはこの街を治めているガウロス・フォン・ミルダじゃ。隣のはわしの孫で
アルトリアの兄でもある、ラウルじゃ」
「ラウル・フォン・ミルダです」
「トーヤです。冒険者をしています」
俺は二人に軽く頭を下げる。
少し緊張しながらの俺を横目に、皿に盛り付けられた菓子をムシャムシャと摘まむナタリ-。
「ガウロス、懐かしいのぉ。まだ生きておったのか」
「そのままそっくり言葉を返しますぞ、賢者殿。昔と全くお変わりなく……」
やはり目の前にいる壮年のガウロスよりナタリーは年上らしい。
どこから見ても幼女にしか見えないが。
「皇女殿下もご無事で何よりです。皇都はすでに抑えられ、詳しい情報は入ってきておりません。よろしければ今までの経緯教えていただけますか?」
シャルは頷くと、皇都を脱出した理由から説明を始めた。
近衛騎士団長であるガレットが討ち取られたと聞いた時は、さすがのガウロスは顔を顰める。
そして、お供とともに皇都を脱出し、森を彷徨い、オークの集落で俺と出会い、サランディール王国のフェンディーへと避難したこと。
そこでナタリーと出会い、俺の屋敷で共に生活をしていたこと。
そして、ジェネレート王国とフェンディーの街の兵士に追われ、撃退してから森を抜けルネット帝国に戻ってきたこと。
丘を越えた時に、ジェネレート王国の兵士を見て手薄な指揮陣営を襲ったことを伝えていく。
「――そうであったか。トーヤ殿には感謝の言葉しか浮かばん。皇女殿下を始め、うちの孫までお世話になった。恩に着る」
軽く頭を下げるガウロスに合わせてラウルも頭を下げた。
「いえ、放ってはおけませんでしたから……」
「それでもじゃ。たった一人で安寧の土地を捨て皇女殿下たちを助けていただいたのだ。我が領地内で良ければ空いている家を渡そう。それで少しでもゆっくりとしてくれ」
「ありがとうございます。しかしできればーー」
正直、普通の家を貰うよりフェンディーで住んでいた屋敷の方が快適だと思う。
「空いている土地を貸していただけませんか……。そちらの方がありがたいです。厩舎を建てられるスペースがあるとありがたいです」
「スペースで構わないのか……? それならいくらでも余っている場所はある。あとでそこに案内させよう。それにしても黒曜馬まで従属させるとは、相当高位の冒険者であったか」
「いや、普通のBランクの冒険者で――」
「お爺様っ! トーヤさんは凄い強いんですよっ。こんな魔法職の様で剣を使いこなし、一瞬のうちにジェネレート王国の兵士十人相手にも勝つくらいに。私たちが束になっても敵わないと思います」
アルの言葉にガウロスは少しだけ目を見開く。
「それほどまでにか……。アルトリアも若輩とはいえ、それなりのレベル。そうでないと近衛は務まらんからのぉ」
「それに……魔法の威力はわしよりも多分上じゃろ。無詠唱でも上級魔法まで放ち威力も壮絶じゃ……。わしが信じられないくらいにな……」
「なんとっ!? 賢者殿よりっ!?」
先ほど以上にガウロスは驚きの表情をする。何十年とルネット帝国の筆頭宮廷魔術師としてトップに君臨していたナタリーが、自分より上だと言うのだ。驚くのも無理はないが……持ち上げられ過ぎるのも少し辛い。
「いえ、一人でできることなど限られていますから……」
俺は謙遜して言うが、誰一人耳を傾けてくれない。
ガウロスは驚き、その隣で兄のラウルは目を輝かせている。
「――――そして、将来、私の旦那様になる予定です」
シャルの一言に全員の表情が固まる。
そして、先ほどまでの優しい表情が嘘のように厳しくなったガウロスの視線が俺に向かう。
「……トーヤ殿。どういう事かわかっているのか……? 皇女殿下と一緒になるという事が」
「いやいや。そんな事決まっていませんよっ! シャル“たち”がそう言っているだけで……」
「――うん? “たち”だと……?」
「あ、お爺様、私もトーヤさんに嫁ぎますから」
「な、なんだ……と……。アルトリアまで……もだと……?」
次第に厳しかった視線に殺気がこもってくる。
いや、本当に勘弁してください。
このお爺さん、視線で人が殺せそうです。
そして、最後の爆弾が待っていた。
「わしもトーヤと婚姻を結ぶことにしたからの。もうみんなで一緒に同衾した仲じゃしの!」
ナタリーが最後にとどめをさした。
「……ど、同衾だと……。しかも三人とも……一緒にだと……。トーヤ!!! 表にでろっ!!!!!」
顔を真っ赤にしたガウロスがテーブルを叩き立ち上がり叫んだ。
俺たち四人はメイドの案内で応接室へと通された。
並んで席へと座り、メイドか各自の前に紅茶を置いていき、礼をして退出していった。
カップを手に取り紅茶を一口飲みホッとため息をつく。
……アルもこんないいとこの令嬢だったとはな。それにしてもシャルは皇女だし、ナタリーは元筆頭宮廷魔術師、アルも領主の孫で近衛騎士団長の娘。
――なんで俺がこの場所にいるんだろう。どう考えてみてもおかしい。
そんな事を考えていると、扉が開かれアルの祖父と兄が入ってきた。
席を立とうとしたら手で制され、そのまま二人は対面に座った。
「まず、敵を退却させた件は聞かせてもらった。心より感謝する。わしはこの街を治めているガウロス・フォン・ミルダじゃ。隣のはわしの孫で
アルトリアの兄でもある、ラウルじゃ」
「ラウル・フォン・ミルダです」
「トーヤです。冒険者をしています」
俺は二人に軽く頭を下げる。
少し緊張しながらの俺を横目に、皿に盛り付けられた菓子をムシャムシャと摘まむナタリ-。
「ガウロス、懐かしいのぉ。まだ生きておったのか」
「そのままそっくり言葉を返しますぞ、賢者殿。昔と全くお変わりなく……」
やはり目の前にいる壮年のガウロスよりナタリーは年上らしい。
どこから見ても幼女にしか見えないが。
「皇女殿下もご無事で何よりです。皇都はすでに抑えられ、詳しい情報は入ってきておりません。よろしければ今までの経緯教えていただけますか?」
シャルは頷くと、皇都を脱出した理由から説明を始めた。
近衛騎士団長であるガレットが討ち取られたと聞いた時は、さすがのガウロスは顔を顰める。
そして、お供とともに皇都を脱出し、森を彷徨い、オークの集落で俺と出会い、サランディール王国のフェンディーへと避難したこと。
そこでナタリーと出会い、俺の屋敷で共に生活をしていたこと。
そして、ジェネレート王国とフェンディーの街の兵士に追われ、撃退してから森を抜けルネット帝国に戻ってきたこと。
丘を越えた時に、ジェネレート王国の兵士を見て手薄な指揮陣営を襲ったことを伝えていく。
「――そうであったか。トーヤ殿には感謝の言葉しか浮かばん。皇女殿下を始め、うちの孫までお世話になった。恩に着る」
軽く頭を下げるガウロスに合わせてラウルも頭を下げた。
「いえ、放ってはおけませんでしたから……」
「それでもじゃ。たった一人で安寧の土地を捨て皇女殿下たちを助けていただいたのだ。我が領地内で良ければ空いている家を渡そう。それで少しでもゆっくりとしてくれ」
「ありがとうございます。しかしできればーー」
正直、普通の家を貰うよりフェンディーで住んでいた屋敷の方が快適だと思う。
「空いている土地を貸していただけませんか……。そちらの方がありがたいです。厩舎を建てられるスペースがあるとありがたいです」
「スペースで構わないのか……? それならいくらでも余っている場所はある。あとでそこに案内させよう。それにしても黒曜馬まで従属させるとは、相当高位の冒険者であったか」
「いや、普通のBランクの冒険者で――」
「お爺様っ! トーヤさんは凄い強いんですよっ。こんな魔法職の様で剣を使いこなし、一瞬のうちにジェネレート王国の兵士十人相手にも勝つくらいに。私たちが束になっても敵わないと思います」
アルの言葉にガウロスは少しだけ目を見開く。
「それほどまでにか……。アルトリアも若輩とはいえ、それなりのレベル。そうでないと近衛は務まらんからのぉ」
「それに……魔法の威力はわしよりも多分上じゃろ。無詠唱でも上級魔法まで放ち威力も壮絶じゃ……。わしが信じられないくらいにな……」
「なんとっ!? 賢者殿よりっ!?」
先ほど以上にガウロスは驚きの表情をする。何十年とルネット帝国の筆頭宮廷魔術師としてトップに君臨していたナタリーが、自分より上だと言うのだ。驚くのも無理はないが……持ち上げられ過ぎるのも少し辛い。
「いえ、一人でできることなど限られていますから……」
俺は謙遜して言うが、誰一人耳を傾けてくれない。
ガウロスは驚き、その隣で兄のラウルは目を輝かせている。
「――――そして、将来、私の旦那様になる予定です」
シャルの一言に全員の表情が固まる。
そして、先ほどまでの優しい表情が嘘のように厳しくなったガウロスの視線が俺に向かう。
「……トーヤ殿。どういう事かわかっているのか……? 皇女殿下と一緒になるという事が」
「いやいや。そんな事決まっていませんよっ! シャル“たち”がそう言っているだけで……」
「――うん? “たち”だと……?」
「あ、お爺様、私もトーヤさんに嫁ぎますから」
「な、なんだ……と……。アルトリアまで……もだと……?」
次第に厳しかった視線に殺気がこもってくる。
いや、本当に勘弁してください。
このお爺さん、視線で人が殺せそうです。
そして、最後の爆弾が待っていた。
「わしもトーヤと婚姻を結ぶことにしたからの。もうみんなで一緒に同衾した仲じゃしの!」
ナタリーが最後にとどめをさした。
「……ど、同衾だと……。しかも三人とも……一緒にだと……。トーヤ!!! 表にでろっ!!!!!」
顔を真っ赤にしたガウロスがテーブルを叩き立ち上がり叫んだ。
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コメント
ノベルバユーザー128919
ほんと最高です!