異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~
シルフィア・ルーゲンベルク
「こちらが最後の商品になります」
シルフィア・ルーゲンベルク
種族:ヒューマ
職業:奴隷
固有能力:なし
悠斗は思う。
入札価格70万リアと聞いたときは少し驚いたが、これほどの美貌を持った少女であれば、むしろ安いくらいなのではないだろうか。
歳の頃は悠斗とそう変わらない16歳くらいだろう。
金髪のストレートヘアーは、日本人なら誰もが一度は憧れるような欧州貴族のような雰囲気を醸し出している。
着ている服が他の奴隷のものよりも目に見えて質が高いのは、商品としての彼女の価値を底上げるするためだろう。
そして何より目を惹いたのは、今にも零れ落ちそうなサイズの彼女の胸である。
スピカの胸も決して小さいという訳ではないのだが、両者を比べるとエベレストと高尾山くらいには明確な差があった。
けれども、何故だろう。
彼女の表情からは人間らしい何かがスッポリと落ちてしまったかのようであり――。
人形のように無感情であった。
「こちらのシルフィアはかつて王家に仕えていた高名な騎士の家系で生まれ育っておりまして、幼少期よりその教育を受けてきました。故に剣の腕には覚えがあるものと存じます。
そして何より彼女の希少性を高めているのはこの美貌です。私はかれこれ20年は奴隷商人という職業を営んでおりますが、これほどの美貌を持った女性を奴隷として扱うのは初めての経験になります」
「……!?」
ジルの言葉を聞いた悠斗はハタと気付く。
(王家に仕えていた騎士だと……!? もしかしたら彼女なら元の世界に戻る方法について何か知っているのではないか?)
以前にスピカに話を聞いたところ。
元の世界に戻る方法を知る人間がいるとすれば……それは王族とのコネクションを所持する人間しかいないだろうとの話であった。
現状。
QRをコツコツと貯めていくしか方法がなかった元の世界に戻る手がかりを入手するための道のりが、グッと近づいたような気がした
「ところで彼女はどうして奴隷に?」
「はい。彼女は半年ほど前、我々ロードランドに戦争で破れ、属国となったルーメルという小国の生まれなのでございます。
ルーメルの人間は敗戦後、その大半が殺されるか奴隷として売られることになったのですが、彼女は運良く逃げ延びて、山奥に身を潜めていたのです。そこで我が国の兵士に捕えられて、奴隷として売られることになったという経緯になります」
「なるほど。それは彼女にとっては気の毒なことだな。しかし、彼女が70万リアというのは少々安いのではないか?」
「とんでもございません! いくら美しくても性奴隷としての価値が大半を占める商品に50万リアを超える値段が付くことは滅多にございませんよ。
それに彼女はその……性格にも多少の難がありまして。これまで沢山のお客様に失礼を働き、なかなか買い手を見つけられずにいたのです」
「……なるほど。だから彼女は『感情を表に出すこと』を隷属契約によって禁止されているのか」
悠斗の察しの良さを受けてジルは驚きで目を見開く。
「はい。ユウト様の御察しの通りで御座います。シルフィアには他の奴隷に与えている命令とは別に、喋ること。感情を表情に出すこと。
この2点を現在、禁じております。さもなければ彼女は酷い暴れ方をしてしまうので」
「そうだったのか」
感情を表に出すことですら禁止に出来ることを聞き、悠斗は隷属契約の能力の恐ろしさを思い知る。
「彼女と二人きりで話をしてみたい。暫くの間、彼女を自由にしてやってくれないか?」
「……いえ。しかし」
「おいおい。まさかこの店では彼女がどんな人格の持ち主なのかを隠したまま客から金を取ろうと考えていた訳ではないだろうな?」
悠斗の追及を受けてジルは一瞬、言葉に詰まる。
「……分かりました。しかし、1つだけ忠告させて下さい。彼女がお客様にどのような無礼を働いたとしても私共は一切の責任を負いかねます故にご了承下さい」
「元よりそれは了承の上だ」
「……10分ほど席を外します。ユウト様は心置きなく彼女との対談に臨んでください」
隷属契約による命令内容の上書きを行うためだろう。
ジルはシルフィアの耳元で何か言葉を耳打ちすると、足早に悠斗の元から立ち去った。
(……さて。ここからが正念場だな)
果たしてシルフィアは元の世界に戻る手掛かりを知っているのだろうか?
知っているとした場合。
どうすればその情報を引き出すことが出来るのだろうか?
ジルが部屋から出るまでの一瞬の間に――。
悠斗は頭の中で様々な策略を巡らせるのであった。
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