異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

ネームドモンスター



 エクスペインの街から徒歩で50分ほどの距離に《岩山の洞窟》はあった。

「岩山の洞窟はかつて人間たちが開拓した『洞穴式住居』に魔物たちが住み着いたエリアらしいですね。
 洞窟の中は陽の明かりが入るようになっていますが、視界が悪いので注意が必用だとギルドから貰った冊子には書いてあります」

「なるほど」

 岩山の表面には穴の開いたチーズのように無数の洞窟が存在していた。 

 悠斗は近くにあった洞窟の中でも一際大きなそれに足を踏み入れる。
 洞窟の中はアリの巣のように入り組んでいた。

「コボルトは知能が高く、集団戦を得意とする魔物です。ナイフによる接近戦はもちろん。遠距離からの投石による攻撃にも注意する必要があるそうです」

「ふーん。どうやらマジみたいだな」

「……え?」


 コボルト 脅威度 LV5


 その数は優に50体を超えているだろう。
 岩場の影から次々に現れたのは体長60センチほどの土色の肌をした小人であった。

 洞窟の中に入ってから1分と経っていないにもかかわらず――。
 コボルトの集団に囲まれていた。

 その事実は、相手が周到に冒険者を迎え撃つ準備を行っていたことを意味するものであった。

「人間よ。我々は無益な殺生を好まない。今すぐに手持ちの武器とアイテムの全てを置いて行けば、命まで奪うつもりはない」


 リケルト・ローディアス
 種族:コボルト
 職業:族長
 固有能力:透過


 透過@レア度 ☆☆☆
(自身とその周囲の物体を透明に変えるスキル。使用中は行動速度が激減する)


 一際大柄な彼らのボスと思しきコボルトは、悠斗たちを見下ろしながらも宣言する。

「へぇ。驚いた。コボルトっていうのは魔物の癖に人間の言葉を扱えるんだな」

「……ご、ご主人さま。それは違います」

 スピカの顔色は青白いものであった。


「あのコボルトは《ネームドモンスター》と呼ばれる特別な魔物です!」


「ネームドモンスター?」

「ええ。ネームドモンスターは突然変異により生まれた魔物です。人間と同じように知能を持ち、加えて強力な《固有能力》を所持しているものさえいると言われています。
 その戦闘能力は……強力無比の一言で、王国の騎士団が1個小隊掛かりで相手にしても手に負えないことさえあるとされています」

「ふーん。なるほどね」

 悠斗はそこで自身が召喚された時のことを思い起こす。
 その場にいたオークたちの中には、2匹だけ喋ることの出来るものがいた。

 1人はオークのボス、ギルティア・メサイエティ。
 もう1人は《魔眼》のスキルを持ったメガネをかけたインテリオーク。

 今思えば彼らも《ネームドモンスター》と言われる存在だったのだろう。

 戦闘そのものが一瞬で終わってしまったが故に。 
 彼らの戦闘能力まで思い出すことが出来ないのが残念であった。


「ご主人さま。ここは一旦引きましょう。流石のご主人さまでも《ネームドモンスター》が相手では分が悪すぎます!」


 スピカは悠斗の服の袖を引っ張り警告する。

「おいおい。スピカ。なに寝言を言っているんだ? この状況はまさに……夢にまで見た一攫千金のチャンスじゃねーか!」

 緊急クエストによりコボルトの討伐報酬は5倍にまで膨れ上がっている。
 周囲にいるコボルトたちの数は優に50体を超えていた。

 仮にこの場にいる全てのコボルトを討伐すれば、合計で2万リアの収入になる。
 悠斗の視界には周囲の魔物たちは、金の山にしか映っていなかった。


「ふん。強欲な人間め! そんなに死にたいのであれば望み通りに殺してくれる!」


 リケルトがそう告げると、周囲にいる50人を超えるコボルトたちは一斉に投石による攻撃を開始する。

 直後。
 流星群の如き無数の岩石が降りかかる。

 誰の目から見ても戦況は絶望的に映っただろう。

 けれども。
 その中にいても只一人。

 悠斗だけは不敵な笑みを零していた。





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