異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

水魔法を応用してみよう



 その夜。
 悠斗は屋敷の庭で魔法の訓練を行うことにした。

 周囲に塀が建てられたこの敷地であれば、外の目を気にせずに思う存分と魔法の訓練に打ち込むことが出来る。

 悠斗がこの屋敷を即決で購入したのにはそのような理由も存在していた。


(……ウォーター!)


 心の中で呪文を唱えると、悠斗の右手には氷の球体が握られていた。

 最初の内は水の温度を下げることしかできなかったが、今では自在に氷を生成することができる。

 水魔法の固体化――。
 それは連日の魔法の訓練により取得した新たなる技術であった。

 悠斗は《野球のピッチング技術》を応用して氷の球を勢い良く投げる。
 狙った先は庭で一番の大木の幹である。

 瞬間。
 バリンと、氷の砕ける音。

 大木の幹は悠斗の投げた氷塊の衝撃により大きく窪んでいた。


(これくらいの威力なら……十分実戦で使って行けそうだな……)


 これまで悠斗は、遠距離攻撃の手段として拾った石を投げるという原始的な方法を取っていた。

 だがしかし。
 今回の検証を鑑みると今後は氷塊を代用して行くことが出来そうである。

 鞄から石を取り出すというモーションを必要としないところは、水魔法特有のメリットだろう。

 そして更に――。
 水魔法の利点はそれだけではない。


(今度は形を変えて……)


 悠斗は心の中で呪文を唱えると――。
 先端の尖った氷柱の形状をした氷塊を具現化する。

 悠斗は棒手裏剣の要領でそれを投擲。
 手元から放たれた氷柱は、大木の幹に深く突き刺さる。

 水魔法は様々な投擲武器に姿を変えることが可能であった。
 この汎用性の高さは、他のどんな種類の武器にもない利点だろう。


(よし。次……)


 結果に満足した悠斗は次なる投擲武器を具現化させる。
 外側を鋭利に尖らせた円形の氷塊は、チャクラムをイメージして作ったものである。

 悠斗は氷のチャクラムを大木に向かって投擲。
 狙った先は大木から生えた枝の1本である。

 手元から放たれたチャクラムは木の枝を斬り裂く。

 バサバサという葉音を立てながらも、斬られた枝葉は地面に落ちる。


(どれも実用性は高そうだな……)


 状況に応じて、打撃。刺撃。斬撃。
 という3種類の遠距離攻撃手段を得たのは大きな収穫だろう。

 何よりも『戦況に左右されない柔軟性』を重視する近衛流體術にとって、水魔法による投擲武器の具現化には、代えの利かない利点があった。

 遠距離攻撃の検証を一通り済ませた悠斗は、《触手魔法》の訓練に移る。

 合成魔法という難易度の高い魔法に挑戦しているからだろう。

 こちらはまだまだ課題が多い。

 触手の本数・長さ・持続時間などに改善の余地がありそうであった。


「待っていろよ。スピカ。シルフィア……」


 悠斗は持前の武術で鍛えた集中力とエロに対する執着により――。
 驚異的なスピードで触手魔法をマスターして行くのであった。


 ~~~~~~~~~~~~


 修行が終わった後は入浴の時間である。
 屋敷の探索を行ってからというもの悠斗はこの一時を心待ちにしていた。

 これまで悠斗が寝泊まりしていた宿屋には、シャワーはあっても浴槽がなかった。

 そのため。
 トライワイドに召喚されてから風呂に入るのは悠斗にとって初めての経験であった。

 この屋敷には大浴場・中浴場・小浴場の3種類が存在していた。
 お湯を沸かす方法は《水の魔石》と《炎の魔石》を消費することで可能になっている。

 スピカ曰く。
 各種魔石はギルド公認雑貨店を始めとして街の様々な場所で購入することが出来るが、それなりに値段が張るものであるらしい。

 大浴場を使ってリッチな気分に浸りたい気持ちはあったものの、多くのお湯を沸かせばそれだけ早く魔石を消費することになってしまう。

 悠斗は小浴場に入ると疲弊した体を休めるのであった。


 ~~~~~~~~~~~~


 入浴が終わった後は就寝の時間である。

 魔法の訓練が思っていた以上に長くなってしまったからだろう。
 すっかり夜が更けていた。

 スピカとシルフィアには事情を話し、先に風呂を済ませて各自の部屋で寝るように言っていた。

 久しぶりに体を温めた悠斗は、寝間着のまま自室に戻る。


「あれ……? どうしたんだ。二人とも?」


 スピカとシルフィアは何故かネグリジェを身に付けた状態で悠斗の部屋にいた。

「申し訳ございません。ご主人さま。広い部屋に1人でいるのは……どうしても落ち着かなくて」

「こ、これには別に深い意味はない。主君の身を守るのが騎士である私の役目だと思ったからだ!」

「そうか。それじゃあ、せっかくだし今日は3人で一緒に寝るか」

 悠斗が提案すると、二人の美少女は眩しい笑顔を見せる。

 結局。
 どんなに広い家に引っ越したところで、3人同じベッドで寝るのは変わらなかったらしい。


 

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