異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

女子高生



「キャッ❤ ユートさまったら。ホッペにクリームが付いていますよ」

「……あれ。何処だろう?」

「ここです。ここ! 今、取ってあげますね!」

 それから30分後。
 すったもんだの末にベルゼバブは、すっかりと悠斗に懐いている様子であった。


(どうして俺は……魔族の女の子と、2人でクレープを食べているのだろう?)


 ベンチに腰をかけながらも悠斗は、ぼんやりとそんなことを考えていた。

「ス、スピカ殿。あの女は一体何処の誰なのだ!?」

「知りませんよ。そんなこと! まったく……ご主人さまは次から次へと女の子を誑かして! まったくもう!」

 ポケットの中から取り出したハンカチを噛みしめながらもスピカは、涙目で訴える。

 冒険者ギルドの前で主人の帰りを待っていたスピカとシルフィアは、木陰から悠斗の様子を窺っていた。

「ユートさま❤ さっきの続きなんですけど、アタシの恋人になって欲しいという話、考えてくれましたか?」

「えーっと。ベルゼバブさん」

「水臭いですね。ベルでいいですよ」 

「なら、ベル。悪いけど、キミの話は受け入れられないよ」

「……? どうしてですか?」

 不思議そうに小首を傾げながらもベルゼバブは尋ねる。
 その様子は、自分が振られる可能性を頭の片隅にも置いていなかったようであった。

「あ! 分かりました! 既に恋人がいるんですね? もしかするとお相手は、あそこの木の陰でコソコソとしている2人ですか?」

「……いや。あの2人は恋人ではなくて奴隷だから」

 悠斗が正直に答えると、ベルゼバブはポンと手を叩いて。


「なるほど! 奴隷とかよく分からないけど、アタシは3人目でも全然OKですよ❤」


「…………」

 これ以上、彼女のペースに乗せられてはダメだ。
 そう判断した悠斗は、思い切って話題の転換を図ることにした。

「ところで、ベルは魔族なんだろ?」 

「はい? どうしたんですか突然?」

「隠さなくても良いよ。俺は魔眼のスキルホルダーだから、ベルの素性について最初から知っていたんだ」

「……ふーん。なるほど。そうだったんですか」

 ベルは人差し指で唇に触れながらも、小悪魔的な笑みを浮かべる。

「それでユート様はアタシのことをどうするつもりなんですかー? 王国の騎士団に突き出しますか? それとも秘密を盾に脅迫して、エロいことを強要するつもりですか?」

「いや。そんなことはしない、ただ1つだけ聞きたいことがあるんだ」

「……聞きたいこと、ですか」

 悠斗の提案を受けたベルゼバブは、不思議そうに首を傾げる。

「ああ。もしかしたらベルなら異世界から召喚された人間が、元の世界に戻る方法を知っているんじゃないかなって思ってさ。何か知っていることがあるなら教えて欲しい」

「…………」

 ここまで聞いたところでベルゼバブは、悠斗が異世界から召喚された人間であることに察しを付けていた。

 異世界から人間を召喚する方法ならともかく、召喚された人間が元に帰る方法に対して興味を持つ人間など限られる。

 また、異世界からトライワイドに召喚された人間は、1人の例外もなくレアリティの高い固有能力を授かることで知られていた。

 目の前の少年が魔眼のスキルホルダーであると打ち明けたことも、ベルゼバブの推理に説得力を持たせていた。


「ふ~ん。なるほど。そういうことですかぁー」


 ベルゼバブは意味深な言葉を吐くと、不敵な笑みを浮かべる。

「え~っとー。たとえばの話なんですけど、その情報をユート様に教えてアタシに何かメリットってあるんですかぁー?」

「…………」

 この子はドSだ。
 たぶんウチの子にはなれない。

 悠斗はなんとなく直感的にそんなことを悟った。

「分かった。じゃあ、こういうのはどうだろう。ベルが教えてくれた情報が確かなものだったら、俺は1日だけ何でもキミの言うことを聞いてあげるよ」

「ふーん。それはなかなか魅力的な条件ですね。何でもって言いますと、たとえばアタシがユート様に性的な御奉仕をさせる、なんていうことも可能なのでしょうか?」

「……ああ。まあ、それくらいなら構わないぞ」

「ふふ。約束ですよ」 

 制服姿の美少女に性的な御奉仕は、むしろ御褒美と考えるべきだろう。

「そうですねー。心当たりはあるんですが、この情報を漏らすと、アタシの立場も危うくなるので簡単に言うわけにはいかないんです。そういうわけでユート様、アタシと取引しませんか?」

「……取引?」

「はい! ユート様は今回のダンジョン攻略クエストに参加するんですよね? でしたら、そのクエストをクリアーできた方のみ、それぞれの願いを叶えられるというのはどうでしょう」

「うーん」

 悠斗は悩んでいた。
 本来であれば、直接、情報を聞き出せれば手っ取り速いのだろうが、彼女も彼女で安易にそれが出来ない理由があるようだ。

 強引に聞き出して、偽の情報を掴まされたりしたら眼も当てられない。

「分かった。その条件を受け入れよう」

 悠斗が首肯すると、ベルゼバブはパチリとウィンクを飛ばして笑顔を見せる。

「その言葉……覚えていて下さいね!」 

「ああ。約束するよ」

「それではユート様。たった今からアタシたちは、敵同士です! また近い内に、何処かで会いましょう❤」

 ベルゼバブはそれだけ言うと、踵を返して、悠斗の元を後にする。

 刹那。
 一陣の風が舞い込み、ベルゼバブのスカートをフワリと捲り上げる。

 これが凡人であれば、スカートが捲りあがったことにすら気付けないでいただろう。

 だがしかし。
 1000年に1人の武術の天才と称される卓越した悠斗の動体視力は、ベルゼバブの履いているライトグリーンの下着を的確に捉えていた。


(異世界の美少女が最高であることに異論はないけど……日本の女子高生にも捨てがたい魅力があったよなぁ……)


 思い掛けない幸運イベントに遭遇した悠斗は、ふと、日本を懐かしむのであった。





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