異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~
VS アクアドラゴン
(状態……テイミングだと……!?)
アクアドラゴンが何者かによって使役された存在であることは、その場にいた人間たちの中で魔眼のスキルを持った悠斗だけが気付いていた。
懐柔@レア度 ☆☆☆☆☆☆
(魔物と心を通わし、使い魔にすることを可能にする力。懐柔に成功した魔物は『状態 (テイミング)』と表示される)
懐柔によって使役したモンスターは名前の横に状態 (テイミング)という文章が表示されるのである。
相手が使役されたモンスターだからと言って油断はできない。
命の危機を知らせる《警鐘》のスキルが発動したことから、目の前のドラゴンが敵意を持った存在だということは明らかであった。
「バカな……!? どうしてここにドラゴンが……!?」
ラッセンは戦慄していた。
野生のドラゴンは現存する魔物たちの中でも《最強種》としてその名を知られていた。
一般的にドラゴンは人里離れた山奥に生息していると言われている。
ローナス平原のような中級冒険者が集まるエリアでドラゴンに遭遇することなど通常では考えられないことであった。
「逃げるぞ! ユートくん!」
ドラゴンに襲われた冒険者に与えられる選択肢は2つ。
諦めて食われるのを待つか、命が尽きるまで逃げ回るかである。
近くにエアバイクを停めていたことが幸いした。
いかにドラゴンが素早くともエアバイクに乗れば逃げ切ることができるかもしれない。
「あっ。俺は戦って行きますので。ラッセンさんは2人を連れて安全なところに避難してください」
「バカなことを言うな! 死にたいのか!」
怒りの感情が滲んだラッセンの言葉が飛んでくる。
悠斗には昔からこういった兆候があった。
自らの力を信じるがあまり『危機感知能力』に欠け、避けられるはずのトラブルに自ら進んで当たっていこうとする。
『冒険者の仕事はどんなに強くても……いや、強くあるが故に命を落とすことがあるのだよ』
何時の日かラッセンは悠斗にそんな忠告をしたことがあった。
冒険者としてのキャリアが長いラッセンは、今まで悠斗のようなタイプが死んでいく場面を何度も目にしてきたのである。
「大丈夫です。俺は死にませんから」
不思議と心が落ち着く声音で悠斗は答える。
どこまでも真っ直ぐに先を見据えている悠斗の眼差しを目の当たりにしたラッセンは、自らの考えを改めていた。
(そうか……。ユートくん……。アタシの知らない間にキミは……更なる進化を遂げていたのだな)
決して己の『強さ』に溺れているわけではない。
悠斗が戦闘を望んだのは、今回の経験が後々に出会うであろう強敵たちとの戦いで役に立つものだと確信していたからである。
「スピカくん! シルフィアくん! 急いでアタシのバイクへ!」
決意を固めたラッセンはスピカ&シルフィアを安全なエアバイクに乗せて、安全な位置から悠斗の戦闘を見守ることにした。
「さぁ。何処からでもかかってこいよ」
まずはエルフの里で培った技術がドラゴン相手にどの程度通用するのか検証したい。
そう考えた悠斗は相手の攻撃を正面から受け止める構えを見せていた。
「フゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
間髪入れずにアクアドラゴンは大きな顎を開いて、ブレス攻撃を射出した。
大小様々なサイズの氷の礫が悠斗の目前に迫っていた。
(クッ……。よりにもよって水属性の攻撃かよ……)
特性 : 火耐性 LV6(9/60) 水耐性 LV3(0/30)
            風耐性 LV7(56/70)
能力略奪によって取得した属性耐性スキルの中で水耐性のレベルは最も低いものであった。
(それならっ!)
そこで悠斗が使用したのは、《幻鋼流》の技術を応用して編み出したオリジナル武術である。
螺旋状に編み込んだ魔力の糸を全身に張り巡らせて己の身体能力を最大限に引き出した《ダブルグリップ・アクセル》は、エルフの里の修行における集大成とも呼べる技であった。
「ご主人さま!?」「主君!?」
激しいブレス攻撃に飲み込まれた悠斗の耳にはスピカ&シルフィアの声は届かない。
だがしかし。
幻鋼流の技術によって肉体の強度を飛躍的に向上させた悠斗は、ブレス攻撃を受けても尚、余裕があった。
(……なるほどな。このレベルの攻撃ならギリギリで耐えられそうだ)
検証作業が済んだ後は反撃開始である。
悠斗がブレス攻撃を受けたのは、エルフの里で培った幻鋼流の技術を試すだけが目的ではない。
この方法がドラゴンを逃がさずに仕留めるのに最も適していると考えたからである。
(――よし。道が繋がった)
影縫@レア度 ☆☆☆☆☆☆
(影の中限定で高速移動を可能にする力)
反撃するには絶好のタイミングであった。
氷の礫によって出現する『影』が空中にいるドラゴンまでの道のりに作り出していた。
「そらよっ!」
影縫のスキルを使用した悠斗は一瞬でドラゴンまでの距離を詰めると、一気にその首を絞め落としにかかる。
「ギョギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
呼吸の手段を絶たれたアクアドラゴンは断末魔の叫びを上げる。
「め、滅茶苦茶だ……。ドラゴンの首を絞め落とすなんて……」
ラッセンは戦慄していた。
高度な飛行能力を有するドラゴンを討伐するためには、上級魔法を取得した複数の魔術師を用意するのが定石とされていた。
古今東西、様々なモンスターに関する情報に精通するラッセンであったが、ドラゴンの首を絞め落とす人間など噂にも聞いたことがない。
それ以前に何故?
一体どうしてドラゴンのブレス攻撃を受けていたはずの悠斗が攻撃に転じることが出来たのか?
影縫のスキルの効果を知らないラッセンには理解ができなかった。
「ふぅ……。ようやく倒せたか」
首を絞められたアクアドアゴンはゆっくりと高度を落とし、最終的には口から泡を吹いて動かなくなっていた。
悠斗はそこでステータスを確認する。
近衛悠斗
固有能力: 能力略奪 隷属契約 魔眼 透過 警鐘 成長促進 魔力精製 魂創造 魔力圧縮 影縫
魔法 : 火魔法 LV4(12/40) 水魔法 LV7(0/70)
風魔法 LV6(0/60) 聖魔法 LV6(37/60)
呪魔法 LV6(6/60)
特性 : 火耐性 LV6(9/60) 水耐性 LV3(0/30)
風耐性 LV7(56/70)
水魔法の項目が大きく上昇していた。
どうやらアクアドラゴンから取得できるスキルは水魔法プラス50らしい。
(それにしてもこのドラゴン……誰が使役していたんだろうな……)
改めて周囲を見回してみるが、花畑の中にはパーティーメンバーである3人の女の子たち以外には誰もいない。
不可解な出来事に遭遇した悠斗は首を傾げるのであった。
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