異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

シルフィアへの手紙



 階段を降りて、1階の居間に脚を運ぶと、見覚えのある猫耳の奴隷姉妹がいた。


「お! ユート。やっと起きたのか」


 キッチンの中から声をかける少女の名前は、リリナ・フォレスティ。
 赤茶色の髪の毛でポニーテールを作った活発な少女である。

 男勝りな性格をしているにもかかわらず、家事万能という特技を持ったリリナは朝食の準備をしている最中であった。


「アハハハ! お兄ちゃんってば、お寝坊さんなのです~」


 料理の入った食器をテーブルに運びながら、笑い声を上げる少女のサーニャ・フォレスティ。

 あどけない顔立ちをしたツインテールの少女である。
 魔物と自在に心を通わせる能力を持ったサーニャは屋敷の警備係を担当する一方で、手の空いている時は食事の準備を手伝うことが多かった。


「……どうしたのだ。主君。今朝は妙にゲッソリしているぞ」


 その場にいた誰よりも早く悠斗の身に起こった異変に気付いたのは、テーブルに着いてコーヒーカップを手にした少女だった。

 彼女の名前はシルフィア・ルーゲンベルク。
 卓越した剣の技術を持った金髪碧眼&スタイル抜群の女騎士である。

 もともとは高名な騎士家庭で生まれ育ってシルフィアは、色々と訳あって悠斗の奴隷として生活するようになっていた。


「何でもないよ。昨夜はなかなか寝付けなくってさ」


 それらしい言い訳を取り繕った悠斗であったが、言葉の端から動揺の色を隠しきれていない。

 言えない。
 朝っぱらかスピカとイチャイチャしていたなんてことは言えるわけがない。

 もしも他メンバーに今朝の秘密がバレてしまうと、何かしらの非難を受けることは必須である。


(ふふっ。それにしてもこの状況……。スピカのやつも相当焦っているんじゃないか……?)


 嗜虐心を煽られた悠斗は、すかさずスピカの方に視線を移す。

 けれども、スピカのリアクションは、悠斗の期待していたものとは完全に真逆のものであった。
 視線に気付いたスピカは、悠斗の動揺を見抜いてパチリと余裕のウィンクをして見せたのである。


(お、俺のスピカが……大人の階段を上っている……だと!?)


 図太さにかけては男性よりも女性の方が上を行きやすいということなのだろうか?
 スピカの小悪魔なウィンクを受けた悠斗は、敗北感のあまりガックリと膝を折るのだった。


 ~~~~~~~~~~~~


 空気の美味しい爽やかな朝であった。
 本日の朝食は、トースト、カボチャのサラダ、ゆで卵、リリナお手製のフルーツジュース。

 中でも収穫したばかりの果物をふんだんに使用したフルーツジュースは、女性メンバーに大好評であった。


「ふにゅ~。今日のジュースは一段とパナいのです! おかわり、なのです!」


 唇の周りにジュースをつけたサーニャは、リリナに向かって空っぽになったグラスを突き渡す。

 悠斗が自宅で栽培している果物は、リンゴ、モモ、キウイフルーツ、洋ナシ、カキ、ブドウ、オレンジ、スイカ、メロン、イチゴ、その他トライワイド固有種など、その数は20種類近くにも及んでいる。


 成長促進@レア度 ☆☆☆☆☆☆☆
(植物の生長を加速させる能力。1つの植物に対して使えるのは1度まで)


 植物の生長を自由に操ることのできる《成長促進》を使えば、自宅で果物を育てることも思いのままである。 

 植物の水やり、栄養の管理などは庭を警備するスケルトンたちの仕事になっていた。


 トントン
 トントンッ。トントンッ。


 サーニャが二杯目のドリンクを飲み干そうとした直後だった。
 突如としてリビングの中に窓ガラスを叩く音が響く。


「あ! 私が取りに行きますね!」


 ピチピジョン 脅威LV 1


 窓を叩いていたのは、ピチピジョンという特殊なモンスターであった。

 その体長は20センチくらい。
 懐柔のスキルがなくとも手懐けることが容易なピチピジョンは、この世界において伝書鳩のような役割を果たしていた。


「はい。どうぞ。今日もシルフィアさん宛のお手紙でした」

「……すまない。スピカ殿。恩に着る」


 スピカから手紙を受け取ったシルフィアは、複雑そうな面持ちで浮かべていた。

 ここ最近はシルフィアに宛てあてられた手紙が届く頻度が増していた。
 もともと悠斗の家には手紙が届くことが少なかっただけに、悠斗としては気掛かりなところであった。


「――シルフィア。何かあったのか?」

「いや。何でもない。私に構わず、食事を続けて欲しい」


 視線を反らしたシルフィアはクシャリと手紙を握り潰して、2階に続く階段を上っていく。


(……きっと何か、他人に踏み込まれたくない事情があるのだろうな)


 主人という立場を使えば情報を聞き出すことはできそうであったが、可能な限り女の子たちのプライバシーは尊重したい。

 そう考えた悠斗は、ひとまず目の前の朝食を平らげることに集中するのだった。

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