異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

危険な約束



 触手魔法を得意とする悠斗の力を以てすれば、穴にハマった人間を助けるための『ローション』を作り出すことは造作もないことである。

 ローションを使って、首尾よくシルフィアを助け出した悠斗は、リズベルが滞在している可能性のある屋敷の庭に侵入していた。


「よし。ここまでは計画通りだな……!」


 屋敷の前に到着をしたシルフィアは満足気な表情を浮かべる。

 着ている服がヌルヌルになってしまったことだけは想定外であったが、それ以外の部分に関しては順調に計画が進んでいた。

 後はリズベルと1対1の状況を作ることができれば、シルフィアの作戦は達成されることになる。


「主君。カギに関しては任せられるか?」

「ああ。なんとかやってみるよ」


 水魔法で生み出した液体を鍵穴の形に合わせる固形化して《施錠魔法》は、水属性魔法の応用としては広く知られている技術である。

 悠斗がカギを開くために屋敷の扉に近づこうとした直後であった。


 ギギギギギギギギッ!


 金属が軋んでいくかのような音と共に屋敷の扉が開かれる。


 リズベル・ウッドロッド
 種族:ライカン
 職業:革命軍総帥
 固有能力:魔力精製 人形遊び

 魔力精製 レア度@☆☆☆☆☆☆
(体内の魔力の回復速度を上昇させるスキル)

 人形遊び(マリオネット) レア度@☆☆☆☆☆
(他人の精神を操作する魔法の糸を紡ぎ出すスキル)


 屋敷の中から現れたのは、見覚えのある1人の女性であった。
 170センチを超える長身を誇る犬耳の女性の名前は、リズベル・ウッドロッド。 

 ルーメル革命軍における総帥にして、今まさにシルフィアが探していた人物であった。


「先生!」


 大きく声を張り上げたシルフィアは、一目散にリズベルの元に駆け寄った。


「私です! シルフィアです! 子供の時、貴方に剣術を教わっていたシルフィアです! 私のことを覚えているでしょうか!?」

「…………」


 真剣な表情で詰め寄るシルフィアであったが、リズベルの反応は酷く冷めたものであった。


「……帰れ。貴様と話すことは何もない」

「せ、せめて家に上げて頂けませんか? 市場で先生の好きなリンゴを買って来たんです。良かった一緒に……」

「……くどいぞ。シルフィア」

「――――ッ!?」


 突き放すような言葉を口にしたリズベルは、そのままシルフィアが持っていた紙袋を払いのける。

 ゴロゴロゴロ!

 紙袋から零れたリンゴは、無常にも地面の上を転がった。
 赤くツタツヤとした光沢のあるリンゴは、みるみるうちに穢れを付着させて行くことになる。


「手伝うよ。シルフィア」

「……すまない。主君」
 

 落ちたリンゴの泥を払いながらも悠斗は言った。
 
 悠斗は怒っていた。
 いくらシルフィアの恩師と言っても、悠斗は目の前で仲間を傷つけられて黙っていられるほど温厚な性格をしていない。

 だがしかし。
 悠斗の中にはどうしてもリズベルに手出しをできない理由が存在していたのである。


 人形使い 脅威LV ???
(固有能力『拡散する人形遊び《マトリョーシカ・マリオネット》』によって生み出された幽体)


 先程からリズベルの背後を張り付いて離れないのは、邪悪な笑みを浮かべた気持ちの悪い人形の姿である。

 このモンスターの姿を確認できるのは、今のところ悠斗を除いて他にいない。


 霊感 レア度@☆☆☆
(目では見えないものを感じ取る力)


 それというのも『人形使い』のモンスターを肉眼で確認するためには、《霊感》のスキルが必要であるからだ。

 このスキルは先日、ナルビアの漁港に潜んでいたクラーケンを討伐することで入手したものである。

 もしもリズベルがスキルによって何者かに精神を操作されているのだとしたら?

 ここでリズベルを攻撃することは、罪のない人間を傷つけてしまう結果になりかねないのである。


「クカカカカ。いいじゃねーかよ。リズベル。話くらい聞いてやれば」


 突如として男の声。
 人の気配のする方向に視線を移すと、そこにいたのは金色のジャケットを羽織ったド派手な男だった。


 グレゴリー・スキャナー
 種族:ヒューマ
 職業:反逆者
 固有能力:隷属契約 読心


 隷属契約@レア度 ☆☆☆
(手の甲に血液を垂らすことで対象を『奴隷』にする能力。奴隷になった者は、主人の命令に逆らうことが出来なくなる。契約を結んだ者同士は、互いの位置を把握することが可能になる)


 読心@レア度 ☆☆☆☆☆☆
(対象の心の状態を視覚で捉えることを可能にするスキル)


 その男の姿を見るのは今回で二度目となる。
 黒船に乗った人間たちの中で唯一、『人形使い』のモンスターに取り憑かれていないその男は、否が応でも他人の視線を引き付ける圧倒的な『何か』を持っているように見えた。 
 

「……よろしいのですか。グレゴリー様」

「リズベル。お前は相変わらずに頭の固い女だな。こんなにキレイな女が時間を作って欲しいって言っているんだ。少しは融通を利かせることを覚えろよ」

「…………」


 2人のやり取りは、シルフィアの眼からは奇妙なものとして映っていた。
 
 反乱軍のリーダーは他ならないリズベルのはずである。

 一体何故?
 どうしてリズベルは目の前の男に対して下手に出ているのか?

 考えても、考えても、シルフィアは頭の中にその理由を見つけることができかった。

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