異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~

柑橘ゆすら

ハーレム軍団結成!



 ここは何処だろう?
 目を開けると、そこにあったのは何処までも非現実的な光景であった。

 俺が立っているここは……雲の上なのだろうか?
 足元を見ると白くて、モコモコとした物体が素足にまとわりついていた。

 微かにひんやりとした雲の感触は、俺の立っているこの世界が夢の中でないことを実感させた。

 ついさっきまで俺は自宅で日曜朝のアニメ観賞に興じていたはずなのに――。
 どうしてこんな場所にいるのだろうか。


「ようこそ。天界へ」


 一種の神々しさすら感じられる凛とした女性の声。

 声のした方に目を向けると、そこにいたのは神話の世界に出てくる女神さまと見紛うほどの美しい金髪碧眼の少女であった。

 何かのアニメキャタクターのコスプレをしているのだろうか?
 その少女は、浮世離れしたヒラヒラの衣装を身に纏っていた。

「すいません。ここは何処なのでしょうか? というか貴方はどなたでしょうか?」

「え~っと。キミキミ、アタシの話を聞いていなかったかしら? さっきも言った通りここは天界よ。厳選なる審査の結果キミには、これから異世界に行って生活してもらうことになったの」

 大きな胸を張って少女は続ける。


「そして……よくぞ聞いてくれました! アタシの名前は、美の女神アフロディーテ! キミという存在を異世界に送り出すナビゲーター的な存在よ!」

「……何処までが本気なんですか?」


 ちょっと何を言っているのか分からない。

 女神? 異世界?
 この人は何を言っているのだろう?

「……ま。無理もない反応ね。キミのようなポンコツが異世界に送り出されて混乱のまま野垂れ死にしないようにアタシという存在があるのだもの!
 こういうのは口で説明をするより実際に目で見てもらった方が早いわ。心の中でステータスオープンと念じてみなさい!」

「…………」

 俺は心の中で釈然としない思いを抱えたまま、アフロディーテの言うことに従うことにした。
 すると、どうだろう。


 カゼハヤ・ソータ

 職業 魔物使い
 レベル 1
 生命力 10
 筋力値 5
 魔力値 10 
 精神力 55

 加護
 絶対支配

 スキル
 カプセルボール


 突如として、俺の意識の中にハッキリと浮かび上がってくる文言があった。
 よくよく文章を読んでみると、それはゲームの世界で使われるようなステータス画面のように見えた。

「何なんだよ。これは……」

 スタータス画面は、俺の脳裏にピッタリと張り付いて離れようとしない。
 現実世界では味わうことができないような奇妙な感覚である。

 最初は胡散臭いと思っていた、自称女神の言う『異世界』という言葉が真実味を帯びてきたような気がする。

「フフフ。魔物使いですって? 自力ではスライム1匹すら倒せるか怪しいハズレ職業じゃない。ご愁傷さま~!」

「……なんだって?」

「いいこと。特別に教えてあげるわ! これからキミが送り出される異世界、《アーテルハイド》では生まれたときに自分の適性に合った天職が与えられる仕組みになっているの! 
 ちなみにキミの魔物使いという職業は、全く役に立たないお荷物的な存在よ! 地球では自宅に籠ってアニメばかり見ていたニートのキミに御似合いのゴミ職業ね!」

「…………」

 ウ、ウゼェ……。
 このアフロディーテとかいう女、口さえ閉じればいれば絶世の美少女であることは間違いないのだが色々と言動は残念なやつらしい。

 それに俺はニートではない。
 毎日ゲームばかりやっているのは事実だが、こう見えて都内の公立高校に通う現役バリバリの学生である。

 さてさて。
 気を取り直して現状を整理してみよう。

 ここに来てハッキリと実感が湧いてきた。

 どうやら俺が立っている場所は本当に『天界』で、アフロディーテはこれから俺のことを異世界に送り出すつもりでいるらしい。

 一体どうしてこんなことになっているのかは分からないが、ここまで非現実的な展開に遭遇したらドッキリの可能性の方が低そうである。

 ところでこのステータス画面に書かれている、カプセルボールというのは何だろう?


 カプセルボール 等級 G アクティブ
(投げ当てることで《基本種族》の魔物を一定の確率で使役するスキル。使役した魔物は主人に危害を加えることができなくなる)


 取得条件

 ●魔物使いのLV1以上


 俺が疑問を抱いた次の瞬間。
 ステータス画面に新たなる文章が浮かび上がる。

 どうやら疑問を抱くことがステータス画面のスキルの効果を確認するためのトリガーとなっているようだ。 

 ものは試しに心の中で《カプセルボール》と念じると、掌から野球ボールサイズの半透明の球体が具現化された。

 そのデザインは、子供のころに夢中になったガチャガチャのカプセルを彷彿とさせるものである。

「カプセルボールは魔物使いの基本スキルね。そのボールを投げて当てると、一定確率で魔物を捕まえて、使役することができるわ」

「ふーん。なるほどなぁ……」

 そうと分かれば、色々と実験したくもなる。

 ちょうど訳の分からない場所に連れてこられた挙句に、口汚く罵られてイライラしていたところだ。
 俺は腹いせも兼ねてアフロディーテに向かってカプセルボールを投げてみることにした。

「……はい?」

 アフロディーテは俺がカプセルボールを投げると間の抜けた声を漏らす。

 かなりゆっくり投げたつもりだったのだが、カプセルボールはアフロディーテの体に見事命中することになった。

「いたっ! ちょっと貴方……何をするのよ!? 言っておくけど、魔物使いが使役できるのは魔物だけでアタシにカプセルボールを投げても意味がないんだから……」

 異変が起きたのは、その直後であった。

「ふぎゃああああぁぁぁ!? いやいや! 待ちなさいよ! 嘘でしょ!? なんで!? どうして!?」

 俺の投げたカプセルボールは突如として眩いばかりに発光して、アフロディーテを吸い込んでい行く。

 結果。
 何時の間にやらアフロディーテの体はすっかりと小さなカプセルボールの中に入ることになる。


「コラッ! 出しなさい! これは神に対する冒涜よッ!」


 アフロディーテは何処からともなく取り出した枕を使ってカプセルボールの内側からドンドンと壁を叩いていた。
 ちなみにボールの中に入ったアフロディーテは、消しゴムサイズまで小さくなっている。

「……そうしてやりたいのは山々なんだが」

 出してやろうにも方法が分からない。


「うううぅぅぅ。お願い! お願いだから出しなさいよぉ……」


 アフロディーテは涙目であった。

 正直に言って1から10まで状況は全く飲み込めない。
 いきなり天界とやらに呼び出されたらと思ったら、異世界に行けと言われて、気が付いた時には魔物使いにされていた。

 けれども。
 かくはともあれ、この台詞だけは言うことが出来るだろう。


 神様! ゲットだぜ!


 ●使役魔物データ

 アフロディーテ
 図鑑NO ???
 種族  神族
 等級  ???
 レベル 3620
 生命力 29778
 筋力値 19822
 魔力値 68810  
 精神力 38240

 スキル
 UNKNOWN
 


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コメント

  • ノベルバユーザー602526

    表紙のキャラクターが可愛くてストーリーも面白かった!

    0
  • ノベルバユーザー

    色々な作品をオマージュしていて面白かったです笑
    ちゃんと育てる要素もあるのか、楽しみです笑

    0
  • イズミ   泉   ミ  ズイ

    アフロディーテってエ○いんじゃなかったっけ?

    0
  • 柴衛門

    ヒャッハー下克上だぜ

    0
  • 椎名ななせ

    結果笑ったから許すわw

    1
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