異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~

柑橘ゆすら

新しい仲間



「な、なんじゃ。貴様は……? 先程の冒険者ではないか」

 幼女にセクハラしているところを邪魔されて機嫌を損ねたのだろう。

 メタボなオッサンの表情は、怒りで歪んだものになっていた。

「冒険者風情が。ワシに何か文句があるのか? ええ?」

「お、お兄さん……」

 見ているぞ。
 幼女が怯えた眼差しでこちらを見ている。

 文句ならある!

 幼女をペロペロして許されるのは2次元だけだ!
 お前みたいなやつがいるから、日本のマンガは規制されるんだよ!

 悲しみは、悲しみの連鎖を生み出してしまうのだ……。


「文句があるのかと聞いているのだ! ワシの言葉を無視する気かっ!」


 何を血迷ったのかオッサンは腰に差した剣を抜く。
 そして一切の躊躇なく、俺の方に斬りかかってきた。

 瞬間、俺は反射的にゴブリンナイトを召喚していた。
 ゴブリンナイトはその全身を使って、オッサンの剣から俺を庇ってくれた。


「なんじゃ。貴様……魔物使いだったかっ!」


 ご明察。
 どうやら魔物使いという職業は、アーテルハイドにおいてそれなりに知名度のあるものらしい。

 しかし、このオッサンは体型の割にはなかなか動けるんだな。

 現時点における俺の最高戦力であるゴブリンナイトは、オッサンの剣撃によって深刻なダメージを負ってしまうことになる。

「恐れることはない。者ども! そこにいる冒険者をひっ捕らえよ! 魔物使い風情がワシに逆らったことを後悔させてやるわ!」


「「「ハッ……!」」」


 オッサンの命令を聞いた部下の男たちは、一斉に剣を抜き俺の方に向かって突進する。


「ゴブリンたち! 俺のことを守ってくれ!」


 俺は2匹、3匹、4匹と徐々に召喚していき命令を下す。
 総勢15匹のゴブリンナイトは、みるみる内に露店通りを占拠していくことになる。


「「「なにィ!?」」」


 そのあまりの敵数に恐れをなしたのだろう。
 男たちは足を止めて急ブレーキをかける。

 その隙を見逃さない。
 一転攻勢に転じた俺はゴブリン軍団に命令を下す。

 多勢に無勢とは、まさにこういう状況のことを言うのだろう。
 大量のゴブリン軍団たちからの襲撃を男たちは、途端に地面に這いつくばることになった。

「そこまでだ! 今すぐに魔物を引いてワシの指示に従え! でなければこの小娘の首を掻き切るぞ!」

「お、お兄さん……」

 迂闊だった。
 部下の男たちに気を取られて一瞬だけ判断が遅れてしまった。

 メタボなオッサンは、リンゴ売りの少女を盾に取り得意顔になっていた。

「分かった。言うことを聞く。ただしそれには1つだけ条件がある」

「はぁ……? 条件……?」

 メタボなオッサンは怪訝な表情を浮かべる。

「その代わりにこいつを受け取ってくれ」

「ん。なんじゃこれは……?」

 大きく山なりに投げたことで上手く油断させることができたのだろう。

 メタボなオッサンは俺の投げたカプセルボールを空中でキャッチする。


「かかったな!」


 しかし、それこそが俺の仕掛けた罠であった!


「な、なんじゃ!? この光は!?」


 オッサンが声を荒げた直後。
 俺の投げたカプセルボールは突如として眩いばかりに発光して、その体を吸い込んでい行く。

 結果。
 何時の間にやらオッサンの体はすっかりと小さなカプセルボールの中に入ることになる。

「コ、コラ! なんじゃ此処は!? 出せ! 早くワシのことを出すのじゃ! どうなっても知らんぞ!」

 メタボなオッサンは顔を真っ赤にしながらも、ボールの内側からドンドンと壁を叩いていた。

 ふぅ……。 
 どうやら今回は上手く窮地を切り抜けることができたらしい。

 メタボなオッサン! ゲットだぜ!


●使役魔物データ

 バクラジャ・アッカーマン

 職業 奴隷商人
 レベル 18
 生命力 45
 筋力値 52
 魔力値 32 
 精神力 25

 スキル
 殺戮者の凶刃 火属性魔法(初級) 水属性魔法(初級)


「異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「コメディー」の人気作品

コメント

  • キャベツ太郎

    メタボナおっさん需要無さスギィ

    1
  • エルス・ギルバート

    メタボナおっさん弱スギィ

    2
コメントを書く